BotW/TotK間におけるBGM・SEの差異の考察

概要

まずはじめに, もしあなたがBotWおよびTotKを未プレイであるならば今ここでブラウザバックしてください. ネタバレにはなるべく配慮するつもりではありますがどうしても避けられない部分もあり, このゲームの大きな魅力の一つである探索と発見を自分でするという貴重な体験を奪うようなことはしたくないためです. 未プレイなら今すぐ買って今すぐ始めましょう. 良いゲームなので.

この記事ではBotWとTotKとの間で共通する場所や状況でのBGMおよびSEについて調査していきます. TotKはBotWの完全な続編ということで, 開発の際には使いまわせるものは使いまわし, 新しく加わるあるいは変更する要素についてのみ新しいBGMなどを用意するという方針になるはずです. しかし実際にプレイしてみると, 一見して変える必要性がない部分にも変化が起こっていることがあちこちで聞き取れます. あのクソ高クオリティゲームのサウンドチームが意味のないことをするとは思えないので, こうした変化に込められた意味意図を考察しよう! というのが記事の目的となります. この素晴らしいゲームの素晴らしいサウンドをより楽しんでもらいたいというような目論みもあったりなかったりします.

この記事を書いている時点(2023/5/25)での筆者のクリア状況は神殿地上絵マップ碑文コンプ済み雷鳴の島途中コログの森未到達マスターソード未入手といった程度です(雷鳴の島コログの森クリアしてマスターソードはその気になれば入手できる状態になりましたが改めて色々と気づいたことがあったので追記します(2023/5/31)(マスターソードを入手してラスボスを倒しこの神ゲーをクリアしてしまいました… 記憶消してもう一回やりたいです(2023/6/4))). プレイ時間はちょうど100時間くらいらしい(クリア時間は140時間くらいらしい). ゲームの進行に応じて内容が変更される可能性が十分に大きいためそこはご了承ください. 記事に書いていないことで何か気づいた点などあればぜひ教えてほしいですが, ネタバレは厳禁でお願いします.

プレイ中はあくまで楽しむことを最大限に考えているため, 厳密な検証などはしていないことをご了承ください. サントラを待ちましょう. はよ. DLCもはよ.

変わっていないもの

全く変わっていないものとしては
・襲歩
・大妖精,馬神
・各種中ボス(イワ,ヒノ,モル)
・各集落(カカリコ,ハテノ,ゾーラ,リト,ゴロン,ゲルド,イチカラなど)(クリア後)
・馬宿(但しカッシーワの代わりとなる演出有り)
・特殊なフィールド(高地,水辺,溶岩地帯など)
・ハートの器出現
・一部のミニゲーム
・迷いの森(地上の迷宮も同じ)
・聖なる泉の使い
・赤き月の予兆
・各種ファンファーレ
・料理
などが挙げられます. 特にシーカーストーンのアイテム(リモコンバクダン,マグネキャッチ,ビタロック,アイスメーカーなど)の入手時ジングルとゾナウパワー入手時のそれが同じ(ように聴こえる)というのはなかなか面白いですね.

他にもTotKのメインテーマにはBotWのメインテーマがモリモリ活用されていることと, 神殿のBGMで進行度に合わせて旧英傑や神獣のテーマが現れてくること, ラスボス第二形態で前作のカースガノン戦が入ってくることなどは注目に値します. 続編って感じだ.

変わっているもの

ここからが本番です.

・シーカータワー/鳥望台,祠,戦闘(祠)
ゲーム内での役割が同じものであるとはいえシーカーとゾナウとで文明が異なるためBGMが違うのも当たり前なんですが, ここでの音楽的な関連性が見られないことから, 古代シーカーとゾナウとの繋がりがないことを暗示しているように思われます. BotWでのいくつかの祠がゾナウ文明の遺物と関係していたのに対しTotKでは古代シーカー文明の遺物の形跡がほとんど見られないことを考慮しておきたいところです. シーカーの方は作中でも独特の存在感を放つシンセサイザーが特徴的で, 個人的にはかなり冷たさを持った楽曲だったと思っているのですが, 眺望台はかなり温かみと親しみがあって祠もまあ平熱くらいの感じになっているのが面白いですね.
ほんっとうに個人的な感想なのですが, 鳥望台でのマップ入手時のBGMがシーカータワー開放時の作曲上の意図(cf. BotWサントラのブックレット)を踏襲しているように思えてとても感激しています.
祠に関しては戦闘に入ったときのシームレスな遷移が素晴らしいですよね. 前作でもインタラクティブな演出に対して相当に凝っていたのですが, それでも臨戦時および戦闘終了時にはBGMの流れがぶった切られていたように記憶しています. 今回はその反省を活かして? 敵に発見された時にごく自然に気持ちを昂らせ, 撒いた時にごく自然に落ち着かせる非常に巧みな演出がなされています. 一部の祠で全ての敵を倒したときは盛大なアウトロとごまだれで称えてくれるのも嬉しいです. 余談ですが追跡台車の祠でリンクが一切手を汚すことなくあの締めを迎えた時はめちゃくちゃ笑いました.

・ハイラル城
前作では始まりの台地を出る際にラストダンジョンがハイラル城であることが示唆されるのに対し, 今作では宙に浮いている理由もゼルダの影がちらつく理由もなかなか明かされないという違いがあります. 音楽的にもBotWは荘厳で勇ましく, さらに城の外ではゼルダの伝説のメインテーマ, 中ではゼルダの子守唄が流れるという激アツ演出がありますが, それとは打って変わってTotKでは静かなピアノだけの演奏だけとなっています. 取り残されたお堀を象徴しているかのようですね.
一方でハイラル城の浮いている部分ではBotWのような荘厳さが取り戻されますが, 高揚感のようなものが抑えられ, ガノンドロフのテーマや魔王のテーマ?(ミレラドシソみたいなやつ)が度々出現するというアレンジになっています. 内外でアレンジが変わるという演出がなくなった代わりに, 進行度合いに応じて子守唄が追加されるという神殿スタイルになっているようです(イベント中だけかもしれない, 確かではないです). イベント後の無音になった城もまたオツ.

・各集落(クリア前)
擬似的に集落をぶっ壊せるわけで, アレンジ作ってる時は楽しかっただろうなぁ… リトはつめた〜いしゴロンはおかしいし(funnyではなくweird)ゲルドはガビガビしてるしゾーラに至っては別の曲みたいになっているしコログはただただコワイし. 何も黒い任天堂が爆発してこうなっているというわけではなく, これらは全て通常バージョンに戻した時の感動を大きくするためなのです. 多分. すごいね.

・戦闘,フィールド
両者ともにこだわりを感じるところです.
戦闘に関しては印象的なトランペットのフレーズ(ソソッラッみたいなやつ)などは流用されているものの雰囲気が一掃されているように感じられます. 打楽器の存在がでかいのかな. BotWとTotKのどちらのバージョンも状況に応じてかなり複雑に変化するので掴みきれていないところはありますが, なんとなくTotKの方がコミカルなような気がします. 敵が強くてコワイからそれを和らげるためかな.
フィールドBGMはBotWではピアノ一本で行っていたのに対してTotKでは他の楽器が追加されていますね. 空中でのBGMは新規のものですが, そこで象徴的に用いられている楽器がサックス, それもジャズではなくクラシカルな音色なものでして, (僕の耳では弦楽器との識別が怪しいこともありますが)多分地上フィールドで鳴ってるのもサックスなんじゃないかなあ. そこかしこに空から落ちてきたゾナウ文明の遺跡があることと関連しているのだと思っています. この辺は要検証ですね.

・ハテノ古代研究所
プルアのいたハテノ古代研究所にアッカレ古代研究所にいたロベリーがいるということで前作の二箇所のBGMを合体させていると. 思いつくのは簡単でも実際に作るのはめちゃくちゃ難しいと思うのですが, 素晴らしい仕事をしてくれました.

・イーガ団のアジト
なんだこの. 前作では単調なフレーズのピアノと和風な打楽器の緊張感ととぼけたファゴットの対比が特徴的でしたが, 今作では緊張感とファゴットがオミットされています. BotWでの潜入時は見つかると仲間を呼ばれ一撃でも喰らうとゲームオーバーという緊迫感と, それを避けるためにバナナで幹部を釣ってウホウホ言ってる間に行動するというおかしさがありましたが, TotKでは一度潜入してしまえば自由に行動できるという違いからこのような差になっているのでしょうかね. ちなみにイーガ団 幹部詰所という場所を発見したのですが, そこはBotWでのイーガ団アジトと同じBGMでした. なぜだろう.

・コーガ様戦
地味〜に変わっています. わかりやすい部分だとイントロにエレキギターが追加されているはずです. 他にもホイホイホイの掛け声が若干違うかな. 前作でも今作でもコーガ様は敵であることに違いはないのですが, 戦う場所や戦い方やゲーム内での役割が違うことからアレンジを変えたのかな.

・時の神殿跡
これは何気に重要だと思います. BotWでは固有のBGMが設定されていたのに対し, TotKではBotWにおける「廃墟」というBGMで代用されています. 前作の開発時点でどこまで想定されていたのかはわかりませんが, ゼル伝シリーズにおける時の神殿のだいたいの位置とBotWでのそれが微妙に一致しないという話とも関係しそうです. 始まりの空島に時の神殿があることも見逃せません.

・忘れ去られた神殿
逆にBotWで「廃墟」だったこの神殿はTotKでは別の新しいBGMが設定されています. 前作とは比べ物にならないほど重要な役割が与えられているのでさもありなん. ただの廃墟ではないですよという主張を感じます. 3つの聖なる泉もこのBGMっぽい.

・赤い月
ピアノの重い和音がなくなっている… なぜだろう. 前作よりも魔物の存在はずっと脅威的なはずなのに… 瘴気魔との関わりなども含めて要調査ですね… 初回と二回目以降とでセリフが違うというのは知っていたんですけど, なんかいつの間にかセリフすらなくなってしまっていることに気がつきました. 基本的にスキップしていたのでどのタイミングからなのかわからないのが気がかりではあります. もしかしたらBGMも演出によって変わるのかな?

・キルトン/コルテン
金属を擦るような音が消えメロディの音色がファゴットからシロフォンやチェレスタかなんかになったことで不気味なBGMから何処か可愛らしいBGMへ. 彼が探し求めているものがマモノよりは可愛らしい存在だからなんですかね.

・ボックリンダンス
なぜ変えたし… ダンサーのコログが3匹くっついてボックリンの歌が追加されていますね. ウンチャウンチャ連呼するのはコログのミがウンチだからってコト!?

・暇つぶし,宿泊
BotWではメインテーマのソドドーシの部分を用いた楽曲になっていましたが, TotKでは同じくメインテーマのミドレララの部分を用いた楽曲になっています. ある意味で変わっていないものとも言えます. 焚き火にあたり終わった時の裏コード感すこすこ.

・朽ちたマスターソード入手時
シリーズでお馴染みのSE, 通称ごまだれは, 通常はララ#シドなのですがこの時は完全5度下のレレ#ミファになって使われていますね. 朽ちちゃってるからね…
朽ちてないマスターソード入手時のSEは前作と変わっていないような気がします. 一回しか聴けないので正しいと保証はできませんけども. ここはSEを変えてきても良さそうなところを敢えて変えなかった理由も考察の価値がありそうですな.

・ゲーム開始時SE
ティアキン2回目の起動時に聴いてびっくりしました. こういうところも変えてくるんだ〜! って. 意図はよくわからないです. 記憶があるかないかが関係してる…?

まとめ

前作BotWと今作TotKにおける最も大きな違いの一つとして, リンクが孤独でないことが挙げられると思います. (厳密にはリンクに向けられたものではないとはいえ)3rdPVにも出てきたセリフ「しかし其方は一人ではない」が象徴的です. BotWの厄災の影響が色濃く残る自然と廃墟の美の世界と, TotKの復興の希望と天変地異に対する探求の世界とを表現する音楽はやはり違ったものになって然るべきというわけで, こうした音楽的な変化にもその姿勢が反映されているということなのでしょう.

神殿や監視砦に代表されるように, 全体的に進行度に応じてアレンジが変化していく仕掛けが多いような印象があります. 馬宿でヴィオランさんの弓と音とが一致しているのを見て感嘆したりもしました. 聴き知った集落のBGMも井戸の中から聴くとこんなにも新鮮に感じられるんだと謎の感動を覚えもしました. イチカラ村と工務店との間のBGMの遷移がシームレスで震えたりもしました. インタビューでも音楽周りのシステムをだいぶいじったとおっしゃってましたし, ちょっと遊んだだけでも前作以上の工夫と熱意が感じられます. 本当にありがとう… ありがとう…

まだまだ遊び尽くせていないのでさらなる発見の後に追記や検証を行っていきたいと思います. 何か面白い事実等あれば直接伝えてもらわなくてもいいので僕が閲覧することのできる方法で発表・共有してください!

最後に, ゼルダの伝説 ティアーズオブザキングダムの開発に携わった全ての方々へ感謝の気持ちを述べたいと思います. 傑作をありがとう!!! 続編も楽しみに待ってます!


更新履歴
2023/5/25 投稿
2023/5/31 諸々修正. 主に
・変わっていないものに迷いの森を追加
・変わっているものに戦闘(祠), キルトン/コルテン, 赤い月を追加
2023/6/4 諸々修正. 主に赤い月, マスターソードについて追記. 他ネタバレ気味な記述や趣旨に合わない内容を若干削除. クリア後の感動冷めやらぬまま修正をしているのですが, 一言だけ演出についての感想を述べるとするならば, ラスボス戦からスタッフロールまでの一連の流れがBotWのセルフオマージュっぽくて最高でした. まだ聴いていない方は是非ラスボスまで辿り着いて, 余裕があれば前作に思いを馳せながら次々に現れるフレーズたちを味わってもらえればと思います.
2024/5/20 サントラ発売の決定によりDLCが出ないことが確定してしまいましたがまあしゃーない. サントラが出ることを素直に祝いましょう. やった〜!

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