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【アイヒマン実験】人間は誰でも悪魔になり得るのか

(最終更新日:2022年1月20日)

皆さんこんにちは!まっきーです。今回は、以前読んでいた哲学本の中で、印象的であったアイヒマン実験(ミルグラム実験)について記事にしますね!

【アドルフ・アイヒマン】

アドルフ・アイヒマン」をご存じですか?彼は、東欧地域の数百万人のユダヤ人を絶滅収容所に輸送する責任者でした。

アイヒマンは、ドイツ敗戦後、南米アルゼンチンに逃亡して「リカルド・クレメント」の偽名を名乗り、自動車工場の主任としてひっそり暮らしていたのですが、その後、イスラエルの諜報機関により拘束されます。

イスラエルにおけるアイヒマン裁判の過程で描き出されたアイヒマンの人間像は「人格異常者」でも「冷酷な殺人者」でもなく、結婚記念日には妻に花束を贈り、真摯に「職務」に励む一介の平凡で小心な公務員の姿だったと言います。

このことから「アイヒマンはじめ多くの戦争犯罪を実行したナチス戦犯たちは、そもそも特殊な人物であったのか?」という疑問が生じます。

平凡な愛情を持つ普通の市民であっても、一定の条件下では、誰でもあのような残虐行為を犯すものなのか?それを実験としたのがアイヒマン実験(ミルグラム実験)です。

どの様な実験なのか

悪魔になれるか2

実験は、参加者を「生徒」役と「先生」役に分けて行います。各実験協力者は、くじ引きで「先生」と「生徒」の役割を決めるが、実際には先生役が真の被験者で、生徒役は役者が演じる役者(サクラ)であった。

被験者たちはあらかじめ「体験」として45ボルトの電気ショックを受け、「生徒」が受ける痛みを体験させられる。次に「先生」と「生徒」は別の部屋に分けられ、インターフォンを通じてお互いの声のみが聞こえる状況下に置かれる。

【実験開始】

先生(被験者)」はまず2つの対になる単語リストを読み上げる。その後、単語の一方のみを読み上げ、対応する単語を4択で質問する。「生徒(サクラ)」は4つのボタンのうち、答えの番号のボタンを押す。

実験図

「生徒」が正解すると「先生」は次の単語リストに移る。「生徒」が間違えると、「先生」は生徒に電気ショックを流すよう指示を受ける。また電圧は最初は45ボルトで、「生徒」が1問間違えるごとに15ボルトずつ電圧の強さを上げていくよう指示される。

【やがて悲鳴が聞こえ始める】

やがて、電圧は人間が耐えうる電圧を越えた数値に上がっていき、間違える度に「生徒(サクラ)」が苦痛を訴える声がインターフォンから流されるようになる。

被験者が実験の続行を拒否しようとする意思を示した場合、白衣を着た権威のある博士らしき男が感情を全く乱さない超然とした態度で次のように順次通告します。

1.続行してください。
2.この実験は、あなたに続行していただかなくてはいけません。
3.あなたに続行していただく事が絶対に必要なのです。
4.迷うことはありません、あなたは続けるべきです。

4度目の通告がなされた後も、依然として被験者が実験の中止を希望した場合、その時点で実験は中止された。そうでなければ、設定されていた最大電圧の450ボルトが3度続けて流されるまで実験は続けられた。

【実験の結果】

実際の実験結果は、被験者40人中26人(統計上65%)が用意されていた最大電圧である450ボルトまでスイッチを入れた、というものでした。全ての被験者は途中で実験に疑問を抱き、中には135ボルトで実験の意図自体を疑いだした者も現れる。

何人かの被験者は実験の中止を希望して管理者に申し出て、「この実験のために自分たちに支払われている金額を全額返金してもいい」という意思を表明した者もいました。

しかし、権威のある博士らしき男の強い進言によって「一切責任を負わない」ということを確認した上で実験を継続しており、300ボルトに達する前に実験を中止した者は一人もいなかった

【実験の結果から分かる事】

皆さんも実際に実験に参加している事を想像して欲しいのですが、生徒が絶叫して苦しんでいる状態で、上記のような「権威のある博士らしき男から強い進言」があったとき、毅然と実験の中止を申し入れられますか?

ましてや、アイヒマンのようにナチスという大きな組織に反発してまで、ユダヤ人に対する迫害にNOを突きつけられるでしょうか?全員とは言わないが、多くの人は組織に逆らう選択を出来ないのではないかと思います。

つまり、人間は組織の中に入ると、それが良くない事だと分かっていても、その組織やシステムに対し批判することは難しくなる、という事ですね。

また、組織が大きくなればなるほど作業自体も分業化され、ますます善悪の判断がつきにくくなるように思います。

こうやって、人類最悪のホロコーストであるナチスドイツによるユダヤ人迫害は実行されたのではないか、私はと思います。

【まとめ】

人間は組織化する生き物であり、そうする事でこれまで発展してきた側面もあります。しかし一方で、上記のホロコーストのように、組織化することで善悪の感覚が鈍くなり、大きな過ちを繰り返していることも事実。

なぜそのような事が起きるのか?と言う疑問の一つの答えが、このアイヒマン実験で提示されているように思います。

個人では善良な人間でも、集団になると人間は時に誰でも悪魔になり得る―この実験結果は、そう語りかけているように思います。

悪魔になれるか

以上、「アイヒマン実験」についてでした!

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