アンアンリorアンアンリタヌキ?
「ねえねえ、学年末テストの国語の漢字で、ひとつ難しい言葉が出ていたじゃない? あれ、なんだっけ?」
と、ヒナがみんなに聞く。今日は、教室で試験前の自主勉強会なのだ。
「ああ、ダイダイタヌキ、だっけ?」
とダイトが言うと、ユナがぷりぷりしながら言う。
「タヌキじゃないわよ! リ、って読むの! 獣ヘンじゃなくて衣ヘン。衣の裏側っていう意味があるの。」
「じゃあ、ダイダイタヌキに衣ヘンかあ。」
ダイトが言うと、ミウとサクラがぷっと笑った。
「ダイダイじゃなくて、アンアンよ。暗いって字がふたつ。」
とミウ。
「アンアンリ。秘密裏に、とか、人に知られないうちに、とかいう意味だって。」
サクラが一生懸命、スマホの辞書で調べ始めた。
納得しないような顔で、ダイトが言う。
「ふーん。でもそれなら、アンアンリじゃなくて、秘密裏にって言えば、よくね? それならオレも知ってるし。」
「しょうがないよ、テストなんだからさ。」
ユウトが言う。
「じゃ、『秘密裏にアンがアンリにアンアンリタヌキをあげた』って覚えよっと!これなら意味もわかるし!」
とダイトが言いだした。
「アンとアンリはいらないんじゃない?」
「アンアンリタヌキって覚えて、ちゃんと衣ヘンに直せるの?」
「アンアンリタヌキをあげるって意味不明!」
「じゃあ、コロモタヌキにする?」
「いちばん関係ないのはタヌキなんだけど!」
「安安って書いてアンアンって読む焼き肉屋もあるよねー。」
「ユウト、関係ないこと言わないで!」
――アンアンがー! リタヌキがー! と、話はヘンなほうに転がっていった。
そして、テスト当日。
みんなの答案は、こんな感じばかりだった。
「暗々理他抜」「暗々理狸」「安安狸」
「暗暗衣狸」
きちんと暗々裡と書けたのは、ユナだけだった。
「タヌキの印象が、強すぎたんだなあ……。裏って言う字でもいいんだって言えばよかった。」
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