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1.日曜の朝

いい加減、ちゃんとしようと思ったのだ。
毎朝ギリギリまで寝て、駅までダッシュするとか、休日は夕方まで爆睡しているとか。
ひどいときは、遊びにいった友達の家のベットで、爆睡していたこともあった。
なんのために毎日を過ごしてるのか、なんかもうよくわかんない。

なので、どうにかしようと思って、いつもより2時間早く起きたのだ。
休日だけど。
ひとまずアレだ、最初の一歩的な?

身支度を済ませて、見たかった映画をチェックする。
午前中の回で席を取れた。早起き万歳!

で、映画までまだ時間があったけど早めに家を出た。
前から気になっていたカフェに入りたかったのだ。
通勤時にいつも前を通る、バーっぽいカフェ。
夜の雰囲気が似合いそうなお店だけど、たしかモーニングメニューを提供していたはず。
朝から外食。
ああ、ますます今日は特別な感じ。

雲行きが怪しくなったのは、カフェに入ってからだった。
店内、まさかの激混み。
え、休日の朝なのになんでこんなに混んでるの?
耳を澄ませていると、どうやら今日は近所の公園で大きなイベントがあるらしい。
まさかの!今日に限って!!
それでも、なんとか席を確保して、カウンターに向かった。
意外だったけど、この店はオーダーを取りに来てくれないのだ。

ここでガッカリ第二弾。
フード系、まさかの30分待ち!
それじゃ、映画に間に合わない。
いや、10分で食べればなんと間に合うかもしれないけど、そんなの、さすがに嫌だ。
迷いに迷って、でも今さらお店を出る気にもなれなくて、デザートドリンク的なものを頼んだ。
写真で見た感じだと、エスプレッソに甘いクリームがのっているようだ。
ふつうのカフェラテにしなかったのは、ちょっとでも早起きしたことへの特別感を味わいたかったから。
だって、本当にめずらしいのだ。私が休日に早起きするなんて。
なのに…

15分が過ぎた。
20分が過ぎた。

こない。私のドリンクは?
もしかして忘れられてる?
カウンターを振り返ると、店員さんがひとり奮闘している。
どうやら、単純に手がまわっていないだけらしい。

これ、キャンセルしたほうがいい?
それとももうちょっと待ってみる?

ソワソワしつつも、席を立たなかった。
今、立てば、何かに負けてしまう気がした。

そして、気がつけば29分が経過。

ああ、これは…またやらかしたパターンだろうか。

いつもそうだ。
私は、決断が遅い。

「この人、ちょっとマズイな」って相手と、ズルズル2年も付きあった(最後はどうしようもない不愉快な流れで縁が切れた)。
今の勤め先も、2年ほど前からマズイ雰囲気があって、1年くらい前からポツポツ人が辞めていたのに、なんとなく腰が重いまま、ここまで来てしまった。

せっかくの楽しかった気分は、すっかり萎んでしまっていた。
どうして、10分前に動けなかったのか。
注文したものをキャンセルするか、せめてカウンターに様子を伺いにいけなかったのか。
せっかくの早起きが、これじゃ台無しだ。
こんなことなら、いっそ早起きなんてしなければ…

「お待たせしました」

テーブルの上に、カップが乗せられた。
甘い香りのするデザートドリンク。

遅いよ!
30分以上待ってるよ!
これじゃ、フード提供と変わらないじゃん!

なのに、不満は一口飲んで吹き飛んだ。

香ばしいエスプレッソ。
まったりとなめらかなクリーム。

甘い。おいしい。
幸せ。

早起きして家を出たときの妙な多幸感が、あっという間に甦ってきた。

ああ、私ってなんて単純。
でも、やっぱり早起きして良かった。

※この物語は8割の嘘と2割の本当でできています。
 以下は、物語の舞台(のモデル)となったお店について。


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見つけてくださって、ありがとうございます! 執筆時、飲み物必須なので、お茶代として活用させていただく予定です。