種をまく / 木を植える

ソンタグ「マラ―/サド/アルトー」を読んで、「これは演劇の説得力、あるいは演技の説得力についての代表的なエッセイであり言葉が散りばめられてるな」とかおもってそのうちいくつかの演劇論と対照してみたいとかおもいつつとりあえず手元にエステティークの演劇における美の瞬間のテクストがあるので対照してみようかと想うに今日はMP切れ電池切れ。


帰ってから昼食したりネットクロールとか本を読んだりとかしつついくつかのきれいなテクストが印象に残った。

「手紙」 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/777617


「冒頭なんですけど、すみません。昨日から今日にかけて大きいニュースになってきた後藤健二さんなんですけど、
ちょっと、あえて、冒頭で、一言だけ・・・。
僕も後藤さんとはおつきあいがあったものですから、一番、いま、強く思っていることは、ニュースではテロ対策とか過激派対策とか、あるいは日本人をどうやって守ればいいか、が声高に議論され始めているんだけど、ここで一番、僕らが考えなきゃいけないことというのは、後藤健二さんが一体、何を伝えようとしていたのか、ということ。
戦争になったり、紛争が起きると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、つらい思いをするということを、彼は一生懸命に伝えようとしていたんじゃないか。
それを考えることが、ある意味で言うと、こういった事件を今後、繰り返さないための糸口が見えるかもしれない・・・。
われわれ一人ひとりにできることというのはものすごい限界があるんですけど、この機会にそういうことを真剣に考えてみてもいいのでは・・・。
それが後藤さんが一番、望んでいることじゃないか。そう思ったものですから、冒頭なんですけど、ちょっとお話をさせてもらいました。」

http://morutan.tumblr.com/post/109870323381


家族と私は夫の死の知らせに打ちのめされました。彼は私の愛する夫であり、2人のかわいい娘たちの父親であるだけではなく、親やきょうだいもいて、世界中に多くの友人がいました。
とても大きな喪失を感じる一方で、イラクやソマリア、シリアのような紛争地で人々の苦しみを伝えてきた夫を大変誇りに思っています。
夫は、特に子どもたちの目を通じ、普通の人々への影響に光を当て、戦争の悲劇を私たちに伝えることに情熱を傾けてきました。
この非常に厳しい数カ月間、私や家族をご支援いただいた皆さまに感謝したいと思います。
察していただけると思いますが、私たち家族にとっては極めて苦しい時です。メディアの皆さんには、私たちのプライバシーを尊重し、夫の死を受け入れる時間をいただければと思います。

http://morutan.tumblr.com/post/109870415096/2



欺瞞的な現実よりはよりシビアな白黒を、とおもったけど、白か黒かだけでもなくこういった色があって、そこに自分も思ったよりも救いを感じるのだな(ともすると自分はどうもこのへんで前のめりになってしまうな)とあらためて気付かされた。


そういった物語は当人からしたら真実ではないのかもしれない。

でも、残された人たちにとって、あるいはそれに触れて心の一部を持って行かれた人たちにとって救いになるのならそういうのも良いのかもしれない。

みょーに文脈を広げて利益誘導するのではなく、あくまで故人の尊厳を守り、それが自分たちの尊厳につながる範囲でなら。


「後藤さんの本を買うことはご家族の暮らしに役立てるのだろうか」


それは自分も少し思ったことで、これからあの家族には地味に寡婦の問題が付いてくる。

そこで地味に「父親が殺された」ということにも向き合わなければならなくなる。

「死んだ」のではなく「殺された」であり、全然知らない状態からその事実を知ったらショックは大きいだろう。

そして、そのショックに生活の不遇が加味されればすこしコンプレックスした反応になってしまうかもしれない。


そのとき、周りが生活を支えられるのか。また、そうすることで現時点で持って行かれた心の一部を贖うことができるのか。


まあそのうち読むかもしれないなとなんとなく思いつつ、自分の救いとしての妄想として木のはなしをおもった。


いつか、遺された子どもたちが自分の父親がなくなった地を訪れたとき、後藤さんの死を悼む人々の寄付や本の売上の一部から賄った学校、あるいは生活援助によって成長した子どもたちが木を紹介する。

「これは、わたしたちが後藤さんの寄付を受け始めた時に植えた木だ。この木は私たちとともに育ち、私たちを見守ってきた。ここまで育つのに10年かかった。

わたしたちもあなたたちも、後藤さんの木だ。

この木も、後藤さんも、そうやってわたしたちのなかに残っていく」


勝手な夢想だけど、そういうことを少しおもった






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