見出し画像

CS is eating the world ? - CS HACK #34 に行ってきた!

青本の翻訳をされたバーチャレクス・コンサルティング社森田氏による、CSに立ちはだかる「壁」についてのセミナー!どんな壁があるのか?聞いてきました。

イベント概要

日時:2019/08/05(月)19:30 〜 21:30
場所:株式会社ヤプリ
   東京都港区六本木3丁目2−1六本木グランドタワー41階

カスタマーサクセスの実態調査結果+αからみえた日本におけるカスタマーサクセスの『壁』とは

登壇者
バーチャレクス・コンサルティング株式会社 森田 智史 氏

1.はじめに〜改めてCustomerSuccessとは〜
CustomerSuccessとは?
顧客に最適な体験と成功を提供することを通し、顧客とともに自社も成長すること。顧客と自社がともに成長し続けられる、絆・関係を構築し続けること。

画像1

CustomerSuccessの成熟度モデル
青本ではCMMの観点から、CSの成熟度が整理されている。本質的なゴールは顧客も自社もともに成長・成功していること(レベル5)

画像2

CustomerSuccessは古くて新しい。
顧客を個客として向き合い大切にして、LTVを最大化しようとする概念レベルではCRMとは余り変わらない。
何が違うのか?→企業中心から顧客中心に変わったことで、顧客の成功が企業の持続的成長の必須条件になったことが新しい。カスタマーサクセスを実現する打ち手が具体化・体系化された。CRMの一部であり新潮流とも言える。

画像3

2.CustomerSuccess実態調査結果+αの振り返り

CustomerSuccess実態調査結果
急速に広まっているように思われる反面、よく知っている、と回答した人は全体のごく一部(3%)。
カスタマーサクセスに着手する上で最初に直面するのは人材と組織の問題。そしてどこから着手して良いかわからない。
小さくともCustomerSuccessを何らか推進している企業は立ち上がりで悩むものの、一定自力で突破している傾向がある。
CustomerSuccessの効果・恩恵を体感し始めている企業においては、ヘルススコアを非常に重要視している。成果の体感→顧客理解→さらなる成果の創出、という好循環が生まれている。

まだまだこれからではあるが、やらない理由がない。隗より始めよ。

画像4

3.日本におけるCustomerSuccessの壁
①サブスクリプション化の壁
サブスクリプションとは?

簡単に言えば製品売り切りではなく、利用期間のサービス提供に対して対価を支払ってもらう、継続課金モデルの総称。単なる販売、課金形態の変更ではなく、顧客を中心に据えたビジネスモデルへの変革そのもの。
サブスクリプションビジネスの例
昨今、様々な業界においてサブスクリプションビジネスが立ち上がっている。いかに継続的・安定的に収益を生むサブスクリプションビジネスに切り替えていくのか、模索する流れ。
青本原本著者のお言葉
認知度3%の日本に対し、CS先進国アメリカではCSはどの様に広まったのか?→まずはSaaS、サブスクリプションが広まり、その後”CustomerSuccess”が広まった。サブスクリプションが盛り上がりつつある日本でも、遅かれ早かれCSの津波がやってくる。
米国では投資判断の基準としてCSにどれだけ取り組んでいるかが重視されている。日本でも徐々にその傾向が出てきている
CSまでのステップ
CustomerSuccessに向き合う前に、サブスクビジネスへの変革と向き合う必要がある企業が多いのでは無いか。
1st:売り切りモデルからの脱却の必要性が認識されないと話が始まらない。
2nd :受注がなければ始まらない(マーケ・セールス最優先)
まず取り組むべきは本当にCSなのか?自社方向性、現状とのギャップ把握等、前段の整理が重要。

画像5

②ハイタッチ至上主義の壁
前提認識
ロングテールが一般的なサブスクにおいて、全てのCustomerSuccessをハイタッチでやりきるのは人的観点からもコスト観点からも非現実的。
日本においては、ロータッチ・Techタッチのハードルが高い認識。BtoBビジネス、特に営業の現場では、足で稼ぐ・顧客とは直接合って膝突き合わせてなんぼ、という、”ハイタッチ至上主義”とでもいうべき商習慣があるため。
捕捉:Pulseでのメッセージ
アメリカではハイタッチだけでなく、ロー・Techタッチアプローチ=デジタルデータのフル活用は一定浸透。デジタルをやりきったからこそ、人間性を重視、というトレンドになっている。

画像6

③代理店モデルの壁
世界的な”Direct化”の潮流をふまえ、新興のSaaSベンダーは国内外を問わず直販体制を前提とし、意識的に顧客と強く繋がることに注力している。一方で、多くの日本企業はいわゆる代理店モデルを活用することで成長して来た。モデルの見直し、再検討が必要なのではないか?

画像7

スキームのパターン
代理店にCSも代行してもらうのか、はたまた代理店モデルから直販に切り替えるのか、など、まずは方向性を定めることが必要。いずれにせよCS人材は不足しているため、何らかの育成施策は必要。

画像8

Pulseの展示より
アメリカではG2CrowdやTrustRadiusなどのITレビューサイトの利活用が活発。顧客は製品選定の基準として活用し、ベンダは顧客の声を拾うために活用。日本でもITレビューサイトの利活用が徐々に浸透しそう。ベンダサイドは利活用に耐えられる体制の構築、代理店側はレビューサイトとの差別化が必要。

④おもてなし文化の壁
前提認識

ホテルのコンシェルジュサービスなどに見られるように、日本において顧客を満足させるには、欧米の顧客に”感動”を届けるレベルの企業努力が必要。

画像9

特性をふまえたアプローチ
日本だけではないがサービスレベルにうるさい日本に置いては特に以下のアプローチ、順番を間違えないようにすること。
1)日頃の不平不満を解消する体験(マイナスをゼロにする)
2)驚きや感動を与える体験(ゼロをプラスに)

画像10

4.おわりに
顧客が”セルフサクセス”できている状態こそがCustomerSuccessの理想形。

画像11


トークセッション

登壇者
弁護士ドットコム株式会社 岩熊 勇斗 氏
ベルフェイス株式会社 小林 泰己 氏
モデレーター 藤本大輔 氏

セールスとの違い、CSの価値をどう伝えていくべきか?
岩熊

セールスと同一視されているくらいのほうがありがたい。よく言われるのは、セールスが売りを作ってくる→CSはチャーンを防止する、という体制。売上を上げる存在として同一視してくれるのであればむしろありがたいくらいで、チャーンはCSだけでは負えない。マーケ・セールスがどうやって獲得してきたのか、そもそもプロダクトが顧客の成功に貢献できているのかによるため。施策としてアップセルはあまり意識しない様にしている。顧客が成功すればするほど売上が出来るようになっているか、プライシング、プロダクト設計の問題。
小林
CSとセールスとの違いは大きく以下の3つだと思っている。
①自社と自社のサービスの熟知、誰よりも知っている
②顧客の課題、ビジネスの熟知
③プロダクトフィードバック
自社のサービス×相手の理解によって顧客とともにサービスを育てていく存在といえる。

オンボーディングの定義、ゴールはあるのか?
小林
あるかないかで言うとあるとは思うが、プロダクト由来でかつ決めの問題。感覚値ではなく、一定のステップまで消化したら顧客が自走しだす、分岐点になるようなPOINTを見定める必要がある。
岩熊
Successマップを作った際に、ゴールは顧客の成功に置き、その2ステップ前くらいにオンボーディングのゴールを置いた。やはり、決めの問題。顧客の状況、プロダクトの状況に応じて、オンボーディングのゴールは細分化されていくはず。究極、エンタープライズの場合、個社ごとにオンボーディングのゴールは違うはず。

一番最初にターゲットとした顧客層、施策
岩熊

サービスのローンチからCSに取り組める場合、CSの責任者はひたすら自らの業務領域を拡大することに注力出来た。一方で、途中からCSを立ち上げる場合、1年後のメイン顧客になりそうな顧客層の定義を経営と握ったうえで、既存顧客の中でその層にしっかりアプローチすることから始めるべき。小林
目の前の1社に自分たちのサービスで大成功させること。SaaSのビジネスモデルとは相反するが、そこに辿り着く前の時点においては、目の前の会社にしっかりと向き合い、何が顧客に求められていて、何が求められていないのかを定義し、型化して行くことから始めるべき。

ヘルススコア、どういった数値を取るべき?
小林

ヘルススコアがわかった結果、具体的なアクションに結びつく指標であるべき。アクションには不作為も含まれる。結局、プロダクト由来。顧客とプロダクトとの関係によって変わる。
岩熊
何のためにヘルススコアを取るのか決めておくことが重要。オンボーディングのゴールと同じで、どういう状態が顧客の成功に繋がる状態として望ましいか、に応じて一旦置いてみて、定期的に見直している。

まとめ、感想

プロダクト由来、という話がパネルの中であったが、プロダクト・事業のフェーズ、PMFを達成しているのかどうか、どの様なマーケット、顧客をターゲットにしているのか、そこにプロダクトがフィットしているのか、顧客の成功にコミットしているのか、etcによって、具体的な施策や取るべきKPIは千差万別で、こういった場で登壇者から自らのプロダクトへの「正解」を得られることは期待しない方がよいと思う。

CRMが経営戦略/手法であるように、CSもまた経営手法でありプロダクト戦略であり、CSがCRMの一潮流であるなら、その事業やプロダクトがこれまで辿ってきた文脈の上にしか”あるべきCS”の答えは無く、CSに立ちはだかる最大の壁はその事業やプロダクト、ひいては経営そのものと言えるのでは無いか、と感じました。

Twitterでも情報発信しています!よければフォローお願いします! https://twitter.com/makoto_wada