触れ合う背中が熱い
「寂しかった?」
無言でその子は僕を抱きしめる
少し僕より背の高い
年下の彼
「寂しかったんだな笑」
ごめん、とは言わない
僕のせいではない
近い距離にある顔
その肌は水をも弾きそうなくらい
みずみずしくて、美しい
そしてその造形も
惚れ惚れと見とれてしまうほど
しばらく見つめ合って
さらに少し顔が近くなる
そこで、僕は我に返る
そんな事をしている場合ではない
ここは職場だ
自分に言い聞かせる
しっかりしろ、と
絡んでくる腕を
笑いながら振りほどく
その時彼は何を思うのだろうか
できるならば寂しく思ってほしい
遠くから感じる視線
それに僕は時々気づいている
でも君はそれ以上に僕が君に視線を送っていることに
気づいているんだろうか
僕が君を見ているのと同じように
君にも僕を見ていてほしい
◇
「あのさ、ジュンはその子のこと
好きだよね?」
「いや?そんなことないと思うけど」
「いや、好きでしょ。
だってその子の事話すときのジュン
すごく楽しそうだよ」
「そうかな?
でも俺、付き合ってる人いるし」
「だからさ、どうすんの?」
「さぁ…?
そもそもその子が俺のこと
どう思ってんのか分からないし」
「もし、その子がジュンのこと好きで
そういうことになったとしたら?
彼氏がいるって言うの?」
「…言うしかないだろ」
「言いたくない?」
「…言い…たくない」
「それが答えだよ」
◇
毎日のように抱き合って話をして
休みの日にはその子の事を考えて
そして顔が見れると
胸の奥がぎゅっとなる
でも僕は
「好きじゃない。好きじゃない」
と駄々をこねる子供のように
毎日その子の事を頭の中から消すように
眠りにつく
そしてまたあの視線に出会う
本気になったら負けだ
君が何を思っているのか
僕には分からない
僕が思うように
君も思っているのだろうか
それとも僕の希望でしかないのか
他人の心なんて
そう簡単に覗けるものではない
だから、僕は好きじゃない
はっきりと分かるその日まで
僕の気持ちは全て
胸の奥へ
jun.
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