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触れ合う背中が熱い

「寂しかった?」
無言でその子は僕を抱きしめる

少し僕より背の高い
年下の彼

「寂しかったんだな笑」
ごめん、とは言わない
僕のせいではない

近い距離にある顔
その肌は水をも弾きそうなくらい
みずみずしくて、美しい
そしてその造形も
惚れ惚れと見とれてしまうほど

しばらく見つめ合って
さらに少し顔が近くなる

そこで、僕は我に返る
そんな事をしている場合ではない
ここは職場だ

自分に言い聞かせる
しっかりしろ、と

絡んでくる腕を
笑いながら振りほどく
その時彼は何を思うのだろうか
できるならば寂しく思ってほしい

遠くから感じる視線
それに僕は時々気づいている

でも君はそれ以上に僕が君に視線を送っていることに
気づいているんだろうか

僕が君を見ているのと同じように
君にも僕を見ていてほしい


「あのさ、ジュンはその子のこと
 好きだよね?」

「いや?そんなことないと思うけど」

「いや、好きでしょ。
 だってその子の事話すときのジュン
 すごく楽しそうだよ」

「そうかな?
 でも俺、付き合ってる人いるし」

「だからさ、どうすんの?」

「さぁ…?
 そもそもその子が俺のこと
 どう思ってんのか分からないし」

「もし、その子がジュンのこと好きで
 そういうことになったとしたら?
 彼氏がいるって言うの?」

「…言うしかないだろ」

「言いたくない?」

「…言い…たくない」

「それが答えだよ」


毎日のように抱き合って話をして
休みの日にはその子の事を考えて
そして顔が見れると
胸の奥がぎゅっとなる

でも僕は
「好きじゃない。好きじゃない」
と駄々をこねる子供のように
毎日その子の事を頭の中から消すように
眠りにつく

そしてまたあの視線に出会う

本気になったら負けだ


君が何を思っているのか
僕には分からない

僕が思うように
君も思っているのだろうか

それとも僕の希望でしかないのか


他人の心なんて
そう簡単に覗けるものではない

だから、僕は好きじゃない

はっきりと分かるその日まで
僕の気持ちは全て
胸の奥へ



jun.

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