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「ハフポストブックス」が生まれた日


そもそもハフポストを知らなかった 


「来週、ハフィントンポストの竹下さんが打ち合わせに来るの。NewsPicksBookみたいにできたら面白くない?

2018年の3月、社長の干場が編集会議でいきなり言った。

「誰か興味ある人いる?」

と言われたので、僕は思わず手を挙げる。
条件反射的なものだ。
何となく面白しそう。それ以上の考えがあるわけではなかった。

そもそも、「ハフィントンポスト」が何かも知らないのだ。

何となく緑色。それ以上のイメージがあるわけではなかった。(すみません)

でも、来週、編集長が来てしまう。

編集会議が終わった後、僕は「デジタル事業部」のI君とM君に聞いてみた。

「ハフィントンポストって何?」

「あーあの有名なウェブメディアですよねー」

いや、それぐらいは、さすがに知ってた。

それからグーグルで調べてみると、色んな情報が出てきた。

・「ハフィントンさん」がつくったらしい
・世界中にたくさんある
・2200万のユニークユーザーがいる
・記者だけでなくブロガーの記事も掲載している
・日本では2013年にはじまった
・2017年に黒字化した 

ということがわかった。

なかでも気になったのは、
「アジェンダ設定型メディア」
という言葉だ。

世の中の出来事の奥底に流れる課題やその解決策を言葉にして、会話を生み出す「アジェンダ設定型」メディアをめざしています。

これは、ディスカヴァーの

「視点を変える、明日を変える」

というミッションに近い。近いのではないか!

とりあえず、そこを出発点にしようと思った。 

それから毎日、ハフポストの記事を読みまくる。

1週間後、僕は社長に対して

「今はハフィントンポストじゃなくて、ハフポストって言うんですよ」 

とドヤるまでになった。


一発勝負の、打ち合わせ


そして、打ち合わせ当日。

編集長の竹下隆一郎さんと、編集長補佐の南麻理江さんがいらっしゃった。

竹下編集長は、身長が180センチ以上あるワイルドな男性に見えた。でも、物腰が柔らかく、ずっとニコニコしていた。それでいて、目はちょっとギラついていた。 

南さんは、すごくハイテンションで、キラキラピカピカしてて、頭の回転が速くて、喋るのが上手で、ハイテンションだった。 

そもそも、すべての発端は、南さんが立ち上げた「カリスマホストの裏読書術」という連載だ。

歌舞伎町初の本屋を開いたホスト経営者、手塚マキさん。

「夏目漱石の『こころ』は男のマウンティング本
「村上春樹の『ノルウェイの森』は全ホストに読ませたい

など、手塚さんの本の読み方、接し方は今まで見たことも聞いたこともない。新鮮だった。

そして、「この連載を本にしませんか?」と竹下さんから社長の干場に提案があったのだ。
手塚さんはもともとディスカヴァーの著者でもあったので、「ぜひ打ち合わせを!」となっていた。

というわけで、打ち合わせがはじまった。

竹下さんと南さんに圧倒され、早速モジモジする僕。それを速攻で見かねた社長が、最高のパスをだしてくれた。

「今日は、手塚さんの連載の打ち合わせでいらっしゃったと思うんですけど、こちらから逆に提案があります!はい、あとは、林くん!

もう、やるしかない。

僕は、何とか間に合った資料でプレゼンした。

実はギリギリすぎて、事前に社長にも見せていなかった。 

一か八かだった。

正直言って、何を話したのか全然覚えていない。

唯一覚えているのは、南さんが僕の資料をベタ褒めしてくれたことだ。

「この資料めっちゃいいですね!!フレームが緑とオレンジになってる!!

・・・よかった。

少しでもコラボ感を演出するために、ハフポストの緑とディスカヴァーのオレンジで、ふち取りをしていたのだ。

その効果で、「コラボいいですね!やりましょう!」という方向になった。

竹下編集長はずっと前からメディアとして出版を考えていたらしい。

よかった。

それから全員で色んなアイデアを話した。
「こんな人に書いてもらいたい」
「本の売り方から変えていきたい」
「ウエブと本をうまく融合させたい」
ワイワイ盛り上がって、その日の打ち合わせは終わった。


イタリアンの奇跡


その後、竹下さんと干場社長とランチを食べに行くことになった。社長いきつけのイタリアンだ。

竹下さんはもの凄い読書家で、ひと月に50冊以上の本を読むと言っていた。
美味しいパスタを食べながら、竹下さんと干場社長が、メデイアや出版について意見を交わしていた。

僕は「へぇー!」「すごい!」「なるほどー!」とか言いながら、パスタを食べていた。

するといきなり、干場社長へのバースデーサプライズが始まった。

バースデーケーキと、イケメンたちによる歌がプレゼントされた。

この打ち合わせの1週間前、3月14日は干場の誕生日だったのだ。

「え!何これ!竹下さんが予約してくれたの!?え!?!」 

社長はとても、それはとても喜んでいた。

よかった。

僕は「誰でしょうねー」と言いながら、お茶を濁した。 

竹下さんもニコニコしていた。

もうこの時点で僕たちの間には、昔から知り合いだったような、お互いがしっくりくる「共有感」が生まれていた。少なくとも僕はそう思う。

そして、このサプライズは奇跡だった。

竹下さんが予約してくださったものではない。(ランチのお店を直前まで知らされていなかったので当たり前だ)

何となくお茶を濁してしまったが、僕が予約したものでもない。 

あとで社長の秘書に聞いても「知りません」と言っていた。

真相は分からないが、おそらく常連の干場に対してお店からの粋なサプライズだったのでは、と僕は思う。

何はともあれ、この奇跡の効果は大きかった。

企業と企業の提携ではなく、「ひとつの仲間」になって新しいレーベルを生み出そうという空気が生まれたのだ。

それは、打ち合わせからの高揚感、ランチの楽しい時間を共に過ごせたことが理由だ。

一緒にいて、会話をする。そのワクワク感。

それがハフポストブックスの出発点だと僕は思っている。

この日僕は竹下さん、南さん、そしてハフポストのことが大好きになっていた。


そして、月日が流れ


それから1年と1ヶ月。ようやく、ついに、ハフポストブックスが創刊した。


その間、僕は毎週ハフポストに通って1日を過ごしたり


ハフポストのブックエバンジェリストになったり


一緒にスナックイベントに行ったり


取材に行ったり


打ち合わせで激論を交わしたり


パフェでも食ったり

とにかく色々あった。

そしてときには、ウェブと本の違いや、仕事の進め方、価値観が衝突することもあった。

お互いモヤモヤすることもあったと思う。

自分の力不足も日々、強く感じていた。

正直、校了前の1ヶ月は、しんどかった。

ちなみにこれは、僕の机ではない。他人の机(と椅子)にもゲラをぶちまけていた。


やっと校了しても、何だか全く終わった気がしなかった。



それでも、なんとか本ができた。

お互いがぶつかり合って、会話をしあって、ごちゃ混ぜになって本ができた感覚だった。

今振り返ると、うまくいっているときは、会話ができていた。

うまくいかなかったときは、会話ができていなかった気がする。

普通の本の5倍はしんどかった。

でも、「絶対に自分たちだけでは出来ない」本をつくれた。

「この人たちと一緒にやりたい」 

そう思った、あの日があったからだと思う。


「ここから会話を始めよう」 

4月20日、ハフポストブックスが創刊した。新聞に広告も出た。

会話から生まれたハフポストブックスは、世の中に多様な会話を増やしていく。

でもそれだけじゃない。身の回りの人、一緒に働く人との何気ない会話も大切にしたい。

そのためにも、まずは僕から会話をはじめたい。創刊を終えた今、そう思っている。


ウェブメディアと出版社の、融合合体


すべての発端となった手塚さんの連載は、南さんの大大大奮闘もあり、『裏・読書』として1冊にまとまった。

連載を本にするのではなく、本のために取材をやり直し、原稿も超加筆修正した。 

手塚さんと南さんの共作だ。名著を読む手塚さんの視点の新鮮さがそのままに、本としてより深く味わえるものになった。

「ものごとはなし崩し的にすすむ」「社会に合わせるのはプレイだと思う」などキツかったときは手塚さんの言葉に救われた


竹下さんの本は、『ピンポイント人脈の鍛え方』→『☆の人脈力』→『つながる力』と紆余曲折があり、最終的に『内向的な人のためのスタンフォード流ピンポイント人脈術』という本になった。タイトルや方向性は干場も考えた。

「人脈術」の皮を被った社会思想史みたいな本だ。と僕は思う。

ビジネス書のフォーマットに、現代社会の潮流と、これからの時代を生きるための思想が流れている。

昨日、この本を買って読んだ人が「自分は外交的だと思っていたけど、今の時代は内向的になるのもいいんだ!と気づきました」と話してくれた。

本が視点を変えて、会話のきっかけになっていたのが、とても嬉しかった。



ハフポストブックスは、はじまったばかりだ。

どんどん、面白い本を世に出していきたい。

僕たちのワクワク感は、あの日より、強くなっている。 






【イベントのご案内】

noteを運営する加藤 貞顕さんと、ハフポストの竹下編集長、ディスカヴァー社長の干場によるイベントを、5月8日の夜に開催します。無料です!

「良いコンテンツはどこに集まり、どこへ広がっていくのか。ネットメディアと出版が今できることについて話し合います【イベント】」

●日時 5月8日(水) 19時15分〜20時45分(開場18:30)●場所 アカデミーヒルズ(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー49階)東京メトロ 日比谷線「六本木」駅1C出口より徒歩3分(コンコースにて直結)都営地下鉄 大江戸線「六本木」駅3出口より徒歩6分東京メトロ 南北線「麻布十番」駅4出口より徒歩12分都営地下鉄 大江戸線「麻布十番」駅7出口より徒歩9分東京メトロ 千代田線「乃木坂」駅5出口より徒歩10分●申込締切 定員になり次第締め切らせて頂きます。●定員 150人●受講費  無料●応募方法 下記応募フォームより必要事項を記入のうえご応募ください。https://d21.co.jp/feature/huffpostbooks/event/0508.html

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林拓馬(編集者)

書籍編集者 ビジネス書、小説などを担当しています。「ハフポストブックス」担当編集。書店員が選ぶ小説新人賞「本のサナギ賞」企画運営。1989年生まれ。富山県出身。一児の父。
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