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18時50分、京都駅、金星が光る





五山の送り火が過ぎたからといって
夏はまだ終わらない


胸の高鳴り
上気する頬


私は透明ガラスの道
スカイウェイの間を何度も行ったり来たりする


理由は2つある

ひとつは
その角度からライトアップされた大階段を見下ろすのが好きだから、

もうひとつは
今日が宇宙一、特別な日だから、

何もかもを、心に焼き付けたい



連なるエスカレーターを下り切り
直進し再び上昇をする

天上に向かって広がる解放的空間
鋭角なのに和の優しさを受けとめる様々な『面』の集まり

ガラスの中に存在するカフェ
電車の往来と
沢山の人の動きを一望する


この空間に『止まっているもの』など存在しない


いにしえの都から吹く風と未来の物語が交錯する今
上空に金星が光る



白いタワーの見える踊り場、


隣の男性は電話を片手に
関西ことばで誰かと忙しそうに打ち合わせをしている

そろそろ待ち合わせの時刻だ


大階段の映し出す極彩色のライト
夏らしい絵柄に
いつもならもう少しはしゃぐところだけど

履き慣れない下駄のせいもある


今日に限っては
浴衣の中で息をしている7色の蝶が跳んでしまわないようにと

指先でおさえるのがやっとだ


金星が光る夜、帯の黄いろに願いをかける


白いタワーの見える踊り場
18時50分、君を待つ


















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