【インタビュー】ちょうどいいRecords|ちょうどいいグルーヴを追求して
例えば、音楽の最高の楽しみ方ってなんだろうと考えてみると、まず直感的に思いつくことが、バチバチのエレクトロやゴリゴリのヒップホップなんかをクラブで爆音で聞いて、ギリ羽目を外す楽しみ方がある。(ツイてない日なんかには大アリ)
でも、小さなありふれた日常のリアルな音楽の楽しみ方とは、日曜の昼にたまったワイシャツをアイロン掛けしているときだったり、キッチンでガールフレンドと一緒に夕食を作っているとき、遅くまで続きそうな勉強や作業中のときに、SoundCloudやYouTube上から聴こえてくる、ふとこの曲いいなと思えるような自然体の音楽だったりする。
そんな音楽はありがたいことに現代では視聴形態の進化のおかげで、ジョックスやナードといったカースト、田舎か都会などの地域差など、音楽を楽しむ上での取り巻く境界線を越え、みんなの耳に入ってきて親しみやすい音楽ともなっているのだ。
そう考えると、まったく今の音楽はちょうどいいって、最高。なのかもしれない。そんな中カルチャーの街「福岡」には、ポップソングをこよなく愛する「ちょうどいいRecords」という音楽レーベルがある。
彼らは"ちょうどいいって、最高。"をコンセプトに、2015年に発足して以来、定期的に音楽イベント『ちょうどいいSummit』を開催し、音楽を通してクラブに入ったことがないような人でも居心地がいい、ちょうどいい交流の居場所づくりを提案している。
イベントを主宰している代表のDJちょうどいいさんは、2014年から福岡を拠点として活動しているDJ。
現行City Popをメインに、Chillで心地のいい選曲でちょうどいいグルーヴを持ち味としていて、DJmixのプラットフォーム「Mixcloud」では約8000のフォロワーを抱えていたり、地元FM局「LOVE FM」では自身のMixを提供、最近ではSpotifyでキューレーターとして積極的に活動するなど、いま福岡を中心に目が離せない注目のDJの一人だ。
今回はそんなちょうどいいぐらいにイケてるDJちょうどいいさんにレーベル発足のきっかけや、新しいDJイベント作りとお客さんについて聞くとともに、レーベルアーティストのSugar.C.A.Pさんやレーベルと縁の深いフォロワーの姫野さん、Ayuさんなどにも話を聞いてみた。
取材場所は「ちょうどいいRecords」の"ホーム"でもあり、彼らも思い入れの深いBar Amonというところ。六本松に密かにたたずむディープな秘密基地のようなところで、根掘り葉掘り聞いたインタビューとなっている。
お手元のコーヒーにもぴったりなDJちょうどいいさんセレクトのプレイリストでも聴きながら、ちょうどいい世界観に心を傾けてみてはどうだろう。
企画・構成、聞き手:大坪 磨亜久
写真:DJちょうどいいさん、大坪 磨亜久
【メンバーの方からイベントをやりたいという声がだんだんとあがってきた】
ーーまず、簡単な自己紹介をお願いします。
C:「ちょうどいいRecords」代表のDJちょうどいいです。「ちょうどいいRecords」の代表をしながらDJと音楽キュレーターとして福岡で活動しています。
ーーありがとうございます。さっそくそのDJちょうどいいさんが立ち上げたレーベル「ちょうどいいRecords」のことについてお聞きします。最初はノリだったそうで。発足のきっかけを教えてください。
C:そうですね、最初はノリでした(笑)。ツイッターでフォローしていた方が冗談でネットレーベルを立ち上げますということを言われていて、それが面白いなと思ったので自分もすごく軽い気持ちでネットレーベル「ちょうどいいRecords」を立ち上げますとSNSに投稿したんです。すると、加入したいということで何名かから声をかけて頂いて。メンバーが集まったからにはなにか活動しなければマズイだろうということで、活動を始めたというのが経緯です。レーベルとは名ばかりのサークル活動のようなものですね(笑)。
ーー現メンバーは何人いるんですか?またどんな人がいるのでしょうか?
C:今のメンバーは5人ですね。DJが3人とアーティストが1人、それと自分を合わせて5名で活動しています。
ーー一ネットレーベルからリアルでのイベント開催までのプロセスについて教えてください。
C:「ちょうどいいRecords」を立ち上げてから、活動としてはDJmixの共作等のネットを通した活動をしていたんですが、メンバーの方からイベントをやりたいという声がだんだんとあがってきました。ですが、その時自分は現場でDJする気が全くなくて、ずっと断っていたんです。でも、最終的にメンバーの説得に負けて、開催することになりましたね。
ーーそれはいつ頃くらいだったんですか?
C:2016年の10月ですね。レーベル立ち上げから約1年後です。
ーー初めてイベントを開いたときの反響はいかがでしたか?
C:一人も知り合いのいない状態でイベントを開催したので凄く不安だったんですが、初めての開催にしては多くの方が遊びに来てくれました。ただ、DJも遊びに来てくれた方もほとんどが県外の方で、ネットレーベルならではというか、今思うとなかなか無いイベントだったんじゃないかなと思います。ちなみにメンバーも殆どが現場でのDJが未経験で、みんな揃ってすごく緊張していたのを覚えています(笑)。
【気軽に遊びに来れるような雰囲気やイメージ作りは心がけています】
ーーそれからは六本松蔦屋書店「BUY ME STAND」さんでもイベントを開催されるなど、徐々に活躍の幅を広げてらっしゃいます。いわゆる文化系の人たちの遊び場のニーズとしての実感はありますか?
C:そもそもニーズがあるのかも分からないですけど(笑)。だんだんとそういったカルチャーが好きな人と繋がりが出来てきて、その人達を楽しませるというか、一緒に楽しめてる感覚はありますね。
ーー「ちょうどいいRecords」のSNS周りを見ていると、イベントを多くの人に広める方針の印象を受けます。フライヤーなども万人受けするデザインですよね。その理由は何ですか?
C:自分たちのターゲット層は普段クラブやライブに頻繁に行くわけでは無いけれど、音楽が大好きな人。つまり自分みたいな人でして(笑)。そういった人たちにも興味を持ってもらって、気軽に遊びに来れるような雰囲気やイメージ作りは心がけています。
ーーメインターゲットをいわゆる積極的に夜あそびをしない人にしているのは面白い試みですよね。
C:自分があまり夜遊び等をしないタイプなので、逆にそういった人の方が気が合うというのはありますね。
【門戸の広さみたいなのはすごいちょうどいいなと思いました。】
ーーでは逆に周囲の方からの意見も伺いたいと思います。Bar Amonの姫野さん、Ayuさんよろしくお願いします。まずは姫野さん簡単な自己紹介をお願いします。
H:六本松Bar Amonの店長、姫野マサノリです。36歳独身です。
ーーありがとうございます(笑)。代表のDJちょうどいいさんとはいつ頃からお知り合いなのですか?
H:2016年の7月か8月ですかね。和モノのイベントやっているDJとみじぃの紹介で知り合った覚えがあります。
ーーレーベル「ちょうどいいRecords」をはじめて知った時はどう思いましたか?
H:そのときは今みたいに近い友達ばっかりじゃなくて、大阪の子や名古屋の子とか、沖縄の人もいたりして。いろんな街の人が集まってやっている、しかもそれがみんなインターネットで知り合っていて、インターネットの力はすごいなと思いましたね。
ーーこちらの場所についてお聞きしたいと思います。2FをDJの練習場所の部室として貸し出しされているバーというのは面白いですよね。貸し出しされたのはいつ頃からなんですか?
H:いつだったかな。だんだん機材とか設備が集まってきて、一番最初にやったのは2017年の始めぐらいかな。
ーーなるほど。「ちょうどいいRecords」はちょうどいい音楽をコンセプトにいわゆるクラブカルチャーの門戸として特定の人に限らず文化系の人など、大多数の人々を取り入れようとしています。それについてはどうお考えですか?
H:過去にもそういう人たちっていうのはいっぱいいたとは思うんですけど、ぼくが2015年に東京から福岡に来たときは、福岡にはぼくの友達が少なかったというのもあるんですけど、あまりそういう人は周りにいなくて。インターネットで知り合った人達とやっているとか、今流行っている若い子たちが聴いているような音楽も好きだし、ぼくが好きな90年代の曲も好きだしみたいな人もあまり周りにはいなかったんで。そういう門戸の広さみたいなのはすごいちょうどいいなと思いました。
ーー「ちょうどいいRecords」の活動をどうみていますか?
H:今はいろいろ転換期を迎えているみたいなんで、形にこだわらず長く続けられる形が一番いいんじゃないかなとぼくは思っているんで。彼らはいろんな環境が変わる年頃だし、仕事が変わるとか結婚するとかそういったタイミングでもあるけどあまり無理せず、長く続けるのが一番価値があると思っていますね。
ーー彼らは将来どうなっていくと思いますか?
H:なっていくというより、ああなってほしいと思うのは音楽に限らず、職人集団みたいな。洋服作る人がいたりとか絵を描く人がいたりとか、オモシロ人間集団みたいなって(笑)。
ーーDJちょうどいいさんとは共同のイベントも近々あったりするそうで。
H:4月27日(土)に六本松のHEART STRINGS STUDIO(ハートストリングススタジオ)というところで、六本松やBar AmonにゆかりのあるバンドだったりDJだったりを集めて「六本松サラウンド」というイベントをします。
ーー楽しみです!ありがとうございました。
【すごくいい形で知らない人たちにも伝わっているんじゃないかなって】
ーーでは次はAyuさん、簡単な自己紹介をお願いします。
A:AyuとしてDJをやっています。Bar KNAT(バーナット)というイベントを主宰しております。あとオファーがあったときに、いろんなところでDJをやったりはしていますがそんな感じです。
ーーDJちょうどいいさんと知り合った機会について教えてください。
A:十何年来お付き合いがあるDJ老眼という人がいらっしゃるんですけども、その方が立ち上げ時から「ちょうどいいRecords」に参加していて、彼にイベントに出てくれないかと言われて出たのがきっかけです。
ーーイベント『ちょうどいいSummit』では第4回目にゲストDJとして出られていますよね。プレイヤーとして雰囲気はどうでしたか?
A:DJイベントっていうとゴリゴリの俺音楽詳しいぜみたいなDJやってそうな人たちがブースの前を陣取って普通のお客さんが引いてしまう事があったりして・・(笑)。『ちょうどいいSummit』は本当にその名の通りちょうどいい感じで、みんな音楽を楽しみに来ている、なんというか人との出会いを楽しみにしているような、とてもゆるくて楽しいハッピーなイベントだと思いました。
ーーなるほど。では「ちょうどいいRecords」の活動自体はどうみていますか?
A:ソーシャルネットワークをすごく上手に使って、拡散していますね。よくいろんな酒場で、「ちょうどいいRecords」ってどうなのって話題が出るくらい。ソーシャルネットワークではかなり有名というか、すごくいい形で知らない人たちにも伝わっているんじゃないかなって思います。
ーー一方でAyuさん主宰のイベントBar KNATでは、ゲストDJとしてDJちょうどいいさんを三回連続で呼ばれていますよね。Ayuさんが考える、場外でも魅力を放つDJちょうどいいさんの音楽の魅力は何だと思いますか?
A:オファーをした一番の理由はですね。ちょうどいいくんがかける選曲が、誰にでも分かるというか誰が聴いても楽しいと思えるような選曲をいつもしているなと思って。ベテランのDJさんほどマニアックな選曲になりがちで、俺こんなん持ってるぜっていうのが自慢というかマウンティングするような選曲が多いなか、聴く人の気持ちをとても考えて選曲しているなと強く感じていて、それがぼくのやっているイベントととても合うということでオファーしています。
ーーそれがやはり魅力なのですね。お二方、ありがとうございました。
【なんていうか、図書館みたいな感じなんですよ。】
ーー最近では地元FM局「LOVE FM」さんでもMixを流されていますよね。マスメディアで流れて反響などはいかがですか?
C:一番嬉しかった反響としては、Mixを聴いた高校生の方からメッセージが届いて、Mixを聴いて自分もDJを始めたいと思ったので、弟子入りさせてくださいという内容でした(笑)。それが反響としては嬉しかったですね。音楽の魅力とDJの魅力が、届いたのが実感できたというか。
ーー面白いですね(笑)。その高校生はその後どうなったのですか?
C:その後彼もDJとしてデビューして。去年の秋頃ですかね、自分のMixが流れたラジオ番組で、今度は彼のMixがオンエアされるということがありまして、そのときはめちゃくちゃ嬉しかったです。
ーー※取材先のBAR Amonでは急遽その高校生レンタロウさんが飛び入り参加してくれたので熱いメッセージを頂いた。「ちょうどいいRecords」についてどう思いますか?
R:高一のときにNew oil deals(ニューオイルディールズ)という福岡のHIPHOPバンドにハマっていて、そのバンドの曲が入ったDJmixを流したのがDJちょうどいいさんで、そこで衝撃を受けて。それまでのDJのイメージっていったら例えばダンスミュージックをバコバコかけたりだとか、それこそヒップホップですごい重低音のものと思ってたんですけど、すごい自分が心地よい音楽がDJちょうどいいのMixだったんで。本当に”最高よりちょうどいい”(※「ちょうどいいRecords」の前のキャッチコピー)っていう。それが自分にとっては大きなカルチャーショックだったんで、いきなりTwitterのDMで弟子入りさしてくださいって言ったんですよ。それからAmonの2階でイベントの前とかにDJのルールじゃないけど、色々テクニックとかを教えてもらって。あとはキュレーション能力というか、普通に生きている上では出会えない音楽を、TwitterとかいろんなSpotifyのプレイリストとかで発信しているのがやべえなと。なんていうか、図書館みたいな感じなんですよ。
一同:おお・・(笑)
R:世の中にはエグい量の音楽があって、果てしないなって思ってて。それの入り口に立った気がしたのがDJを始めて、ちょうどいいさんと会ったときで。音楽のバカでかい世界にも入り口があるんだなと思ったのが印象的です。
C:嬉しいな(笑)。今後の目標とか最後に。
R:ラウンジとかカフェとかで自分の好きな音楽を思いのままにかけられるDJっていいと思っていて、ぼくは生涯音楽が好きなんで関わり続けたいと思っています。デカイ大人になるんでよろしくお願いします。
ーーありがとうございました!
【これが求めていたやつかなって感じで】
ーーまた「ちょうどいいRecords」は唯一のアーティストSugar.C.A.Pさんを抱えていらっしゃいます。Sugar.C.A.Pさん、よろしくお願いします。簡単な自己紹介をお願いします。
S:福岡市内でオリジナル曲とかカバー曲とかをやっていて「ちょうどいいRecords」のアーティスト枠で今は活動しています。
ーーレーベル加入のきっかけを教えてください。
S:元々弾き語りとかカバーをインスタに投稿して、ひっそりと活動していたんですけど、去年の6月くらいに六曲入りのCD(『Summer.C.A.P』)をリリースしたタイミングで、DMでちょうどいいくんからCD直接欲しいんです。って言われて、どこかでお会いしませんかってところから始まった感じですね。
ーーメッセージが来たときはどう思いましたか?
S:ちょっと怪しいと思ったけど最初(笑)。でも会ったら雰囲気的にも音楽好きな人なんだろうなっと思って。そこからはトントンと、多分その後2回くらい会ったときに、じゃあ入りましょうという経緯で今に至るって感じですね。
ーーレーベルに入る前と入った後では何が一番違いましたか?
S:まず一番大きいのは反応かな。ちょうどいいくんが勝手にという言い方は変だけど、レコードショップとか、色んなところに話を持っていって、ぼくのCDを紹介してくれて広めてくれたりとか、SNSとかで広めてくれたりとか。
ーープロモーションの部分が大きいですか?
S:そうですね。でかいでかい。あとは人かな。ちょうどいいくんが知ってる人とも繋がれてそこから話が広がったりとかしていて、それが今の活動にも活きてるんで。
ーーライブの面ではイベント『ちょうどいいSummit』でもライブされましたよね。感想はいかがでしたか?
S:ライブハウス以外でいわゆるイベント的なくくりでライブしたのが始めてで。そういう感じをずっとやりたいと思ってたんで、これが求めていたやつかなって感じでめっちゃ楽しかったです。
ーー「ちょうどいいRecords」から輩出されたアルバム『Summer.C.A.P』、さらに新作となるシングル『City Light』聞かせていただきました。チルな雰囲気でいいですよね。どんな思い入れがありますか?
S:間違いないです。その感想が正解です。自分が聞きたい曲、客観的にこういう曲があったらいいなとか。作り終わった後に気持ちをリスナー側に回して、ああ気持ちいい曲聴けたなって感じて欲しくて作りました。
ーージャケットやプロフィールのイラストはいつも可愛いらしいですよね。アートワークは誰が担当されているのですか?
S:m2n(マッツン)というイラストレーター。職場の元同僚で、結構福岡では有名で実験的に使ってもらえたらいいなと思って。
ーーSugar.C.A.Pさんにとってちょうどいい音楽とはどんなものだと思いますか?
S:一つは疲れない音楽ですね。聴いていて負担のない音楽かな。昔はパンクとかめっちゃ聴いてたんで世代的にも。途中からなんか急に耳が疲れてきて。だから疲れない音楽かな。
ーーこれからレーベルでどんなことをしていきたいと思っていますか?目標を教えてください。
S:まずは目標っていうか、もうちょっと聴いてくれる人を増やしたいっていうのと。もう少しイベントをやっていきたいんで、なんとかちょうどいいくんと一緒に進めていきたいかなという感じです。
ーーありがとうございました。
【音楽が好きであること、それを広めようとしていること、あとはちょうどいいこと】
ーー代表のDJちょうどいいさんに戻ります。アーティストなどはこれから増やす予定などあるんですか?もし応募するとしたらどんな人に来て欲しいですか?
C:積極的に勧誘等はしていないんですが、自分たちの活動内容や考え方等に賛同していただける方だったらいつでも入って欲しいと思っています。どんな人かに関しては、まず大前提として音楽が好きであること、それからそれを広めようとしていること、あとはちょうどいいこと。それだけですかね(笑)。
ーーそれは有名無名問わず?
C:そこに関しては全く関係ないですね。むしろ無名な方が良いし、なんならDJもアーティスト活動も、これから初めたいって人こそ大歓迎。一緒に1からスタートしたいですね。
ーー今後の目標を教えてください。
C:自分個人の目標としてはキュレーターとしての活動の幅を増やしたいと思っています。プレイリストの作成であったり、MixCDの作成やお店のBGM担当であったり。今まで以上にいい音楽をたくさんの人に届けられたらいいなと考えています。レーベルの目標は、認知度をあげることですね。たくさんの人に存在を知ってもらいたい。
ーーDJちょうどいいさんにとって、音楽を共有することにはどんな意味があると思いますか?
C:Amonの姫野さんも言ってたんですが、自分の好きなものを形に出すのが大事だと思ってます。そうすることで同じものが好きな友達が増えたり、同じものが好きな人が集まる空間を共有出来たり、さらに楽しいことが増えていく。自分にとってはそれが音楽ですが、人によってそれは違うと思うので。自分の好きなものをいろんな人が発信して、それを認めあえるような環境を作っていきたいですね。
ーー最後にこれから来たいなと思った人にメッセージなどあれば教えてください。
C:ゆるく楽しく活動していますので、いつでも気軽に遊びにきてください。待ってまーす!
ーーありがとうございました。
"やっぱり、最後は人柄だよね。"
インタビュー終了後、何故ここまで人気となったのかの談話となり、煙草とスナック菓子を片手にそう語るのは同席していた一人のお客さん。
当日はDJちょうどいいさんが久しぶりにBar Amonに来店するということで、大勢の人々が集まっていた。何を隠そう彼らは「ちょうどいいRecords」のファンでもあり、"DJちょうどいい"という一人の人のファンでもあるのだ。
だからBar Amonでは、そのような話が幾度となく飛び交う光景がたくさん入った。
そして一日を通して、ぼくもそれは同じように感じた。最近では珍しく晴れた当日。年明け後はじめての再会。公園で休憩していた時に、お気に入りのPSGのレコードを見せてくれたとき。道中、野良猫を見つけて写真を撮ろうとしているとき。取材先のBar Amonに向かう前に、行きつけの飲食店に一緒に向かったとき。そして取材の最中など。ぼくはかしこまった取材を意気込んでいたが、何だか久しぶりに"ちょうどいい"一日を過ごした気がする。
取材も終わってひと足早くBar Amonを出ようとしたときには、DJちょうどいいさんがお見送りしてくれて二人で少し話をしてお別れした。たわいない別れの挨拶で内容までは覚えていないが、帰りの六本松の夜空はいつもより少し明るかったのは今でも鮮明に覚えている。
肩ひじ張らないちょうどいい人たちが行う、自宅の心地よい空間をあえてみんなが集まる場所に変えて賑やかなムードを作る編集作業。理由はただ音楽が好きでグッドな出会いが欲しいから。それだけでいいのだ。〈意外だね〉や〈それっぽい〉などの色眼鏡に惑わされず、誰でもこの音楽が好きと表現できることが増えた今、時代を的確に捉えていて素敵じゃないか。
一日を通して、これがぼくらなりのパーティー作りだというメッセージを強く感じた「ちょうどいいRecords」。これからさらに、どう進化を遂げていくのだろうか。ぼくはとても楽しみになってきた。
(文・大坪 磨亜久)
【プロフィール】
DJちょうどいい:福岡在住のDJ。"ちょうどいいって、最高。"をコンセプトにJPOPをこよなく愛する音楽レーベル『ちょうどいいRecords』の主宰をつとめており、福岡の街の人々にちょうどいいグルーヴを届けている。活躍はリアルにとどまらずネットでもその存在を示しており、DJmixのプラットフォーム「Mixcloud」では新作をリリースするたびPop部門、Rap部門、Chillout部門、HipHop部門のチャートを軒並みジャックするなど、驚異的な再生数を叩き出し、次元問わずちょうどいい音楽のよさを世にキュレートしている。
twitter:@dj_choudoii
instagram:@dj.choudoii
Sugar.C.A.P:福岡在住のシンガー。Lo-fiのオリジナル楽曲、カバーの両面で活動をしており、心地いいグルーヴを奏でている。「ちょうどいいRecords」代表のDJちょうどいいとは似た雰囲気から袖を分かちあい、2018年6月に正式にレーベルに加入。名前の由来は苗字が佐藤→砂糖→sugarで、いつもキャップをかぶっていることからSugarC.A.P(シュガーキャップ)と来ている。
twitter:@sugercap1
instagram:@sugarc.a.p