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【ネタバレあり】『月に吠えらんねえ』展、リーディングシアター、アフタートクショー感想

普段は詩を書いていますが、今回は詩に関する作品の展示の感想を。
『月に吠えらんねえ』は2011〜2019年にアフタヌーンにて連載していたマンガ。

主人公は萩原朔太郎作品をモデルとした「朔」。師匠の「白さん(北原白秋作品)」、弟子の「ミヨシくん(三好達治作品)」たちが、詩人たちが暮らす□(詩歌句)街で繰り広げるコメディ&ミステリィ。

と、思っていた。ところがコメディ要素は早々に退場し、この町の抱える謎が明らかになり始めてからは、近代文学の抱えてきた大きくて深すぎる闇を知ることとなる。

現在はリブート作品『月に吠えたンねえ』が連載中。『鬼滅の刃』に対する『キメツ学園』のような、ポップに描いた番外編で、私はどちらも大好き。

そんな『月に吠えらんねえ』の展示が市川市文学ミュージアムにて開催されている。今日、10月30日はその中でも特別なリーディングシアター及びアフタートークショーが開かれた。

リーディングシアター

リーディングシアターはマンガのコマがスクリーンに表示され、それに演者がその場で声をあてるというもの。約1時間で、こんな表現があるのかと驚いた。
過去も開かれたそうだが、今回は場面を追加したパワーアップバージョン。主に以下の場面が上演された。

第2話「二魂一体」単行本第1巻収録
第6話「1945」単行本2巻収録
第9〜14話「遠い旅」単行本2,3巻収録
第16話「裸體の森」単行本4巻収録
第23話「ボーイミーツガール」単行本5巻収録
第26話「純正詩論」単行本5巻収録
第57話「神国」単行本10,11巻収録
第61話「日本」単行本11巻収録

大体このあたりからかいつまんで取っているようだったが、色々改編はありそう。私が好きな日常寄りの場面は残念ながら扱われず。
ハルコのシーンでは会場で泣いている人も何人もいて、作品を愛するファンの思い入れの強さを感じた。
萩原朔太郎のお孫さんである萩原朔美さんが犀を演じていたのが印象深かった。
また、若手声優さん、モデルさんが声をあてる中で複数キャラクターとナレーションを務められた柳沢三千代さんの演技が目立った。調べるとカレーパンマン役をずっと務められている方だった。
気付きませんでしたが、いつも聴いております!

アフタートークショー

リーディングシアターの後は作者、清家雪子先生と、研究者、監修者の安智史さん、栗原飛宇馬さんのトークショー。
興味深い話がいくつもあった。

清家先生はアシスタント等での漫画の勉強をしたことがない。そのため構図も特殊、映画風のところがある。映像が先に浮かんで絵に落とし込んでいるとこのこと。

吹き出しの尻尾をつけたこともない。アフタヌーンはその辺りの指摘をしない。

漫画は基本線という枠がある。雑誌掲載時、シリアスなシーンに広告が付くのが嫌だから意図的にはみ出していた。

意味よりも音楽性を重視したセリフ作りをするため文法的に誤りがあっても気にしない。これは朔太郎に近い。三好達治が見たら怒ると思う。

草野心平が好きだが、著作権の問題で使えず残念。

「萩原朔太郎が現代人に受け入れられる理由は?」という質問に対して、「文章が現代的。詩も書簡、手紙も。まあ、想像と描写のバランスが適度に二次創作しやすい」

今この瞬間、萩原朔太郎の中で一番好きな詩は「Omega の瞳」。

特別展

こちらは唯一撮影OKの居酒屋BOXY

萩原朔太郎と関連のあった文豪を『月に吠えらんねえ』のキャラクターと絡めて紹介。
作家本人の直筆原稿など貴重なものも見られて面白い。
朔太郎はくにゃくにゃしていて字に特徴がある。
草野心平も読解困難だが、らしいといえばらしい。

限定マンガ、「イチカワで吠えらんねえ」が掲載され、市川市に関連する詩人や小説家が登場。
リーディングシアター内で語られていたが、もっと全国で展示され、その場所ごとの書き下ろしマンガが生まれると地域おこし、詩人の再発見にも繋がりそうだ。

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