見出し画像

【最終回】【PeopleFlowで移動が見える】電車の遅延・運休による変化を探る

MaaS Tech Japanでは、多様なモビリティデータを連携させ、分析・予測を可能とするMaaSデータ基盤「TraISARE」の開発を進めています。2021年4月から、TraISAREの活用ユースケースの一つとして「PeopleFlow」というサービスをβ版で公開しています。

PeopleFlowは、「密」を回避した移動ニーズの高まりを受け、混雑を避けるための参考情報として、駅周辺の混雑予測情報を確認することができるサービスです。エリアの混雑度や他エリアからの人の流入を知ることで、駅を取巻く人々の移動の様子や駅ごとの特徴を読み取ることができます。PeopleFlowの詳細はこちらをご覧ください。

この記事では、PeopleFlowを使い、電車の遅延や運転見合わせが発生した際に、関連する駅の人の流れにどのような変化が観察できるかを紹介します。

今回は、〈2020年8月30日・東横線/みなとみらい線・運転見合わせ〉〈2020年6月21日・京成本線/押上線・運転見合わせ〉の2つの事例について取り上げていきます。運転見合せの原因となった駅における人の流れの前後変化や、直通している路線の駅における人の流れの変化を分析しています。

1. 東横線・みなとみらい線 - 横浜駅での煙発生

〈事例の概要〉
2020年8月30日(日)午後8時頃、東急東横線 横浜駅構内のエスカレーターにおいて煙が発生した。この影響で、午後8時25分ごろから東横線菊名駅~みなとみらい線元町・中華街駅間で運転を見合わせた。同午後10時10分に運転を再開、約1万人の利用者に影響した。東急電鉄によると、この発煙によるけが人や、体調を崩した人は出ていない。

横浜駅:煙発生前(午後7時50分)の流入分布

画像1

煙発生前の午後7時50分には、東横線は菊名駅〜横浜駅の各駅から一定の流入が確認できます。また、みなとみらい線は元町・中華街駅からの流入が確認できます。日曜日の夜の時間帯であるため全体の流入量は少ないですが、通常の運行時には各路線からの流入分布を見て取ることができます。

横浜駅:煙発生の直後(午後8時50分)の流入分布

画像3

煙発生による運転見合わせ後の午後8時50分には、東横線・みなとみらい線ともに路線に沿った流入がなくなっていることが確認できます。一方で、東横線 菊名駅〜横浜駅と同一区間を走るJR横浜線、特に東神奈川駅付近からの流入が運転見合わせ前に比べて大幅に増えている様子が確認できます。

午後8時50分頃は運転見合わせから30分程しか経過していませんので、横浜駅までの利用を見込んでいた乗客が菊名駅で足止めを受け、東横線から横浜線に乗り換えため、横浜線からの流入が増加したものと予測できます

続いて、運転見合わせから一時間弱経過した午後9時10分頃の流入分布を見てみます。

横浜駅:煙発生の一定時間後(午後9時10分)の流入分布

画像4

引き続き東横線・みなとみらい線からの流入はありません。午後8時50分頃に増大していた横浜線沿いの流入もまだ続いていますが、落ち着いてきている様子が分かります。

一方で他の路線からの流入が減る一方で、JR線(東海道線・京浜東北線)と京急線から継続的に流入している様子が観察できます。これが東横線の運転見合わせに起因するものであると言い切ることはできませんが、渋谷→横浜の移動を予定していた乗客が、渋谷駅で運転見合わせの情報を知り、渋谷→品川→横浜のように経路を変更したことが理由ではないかと考えることもできます。

以上のように、東急東横線横浜駅での煙発生によって横浜駅への流入経路が大きく変化する様子を確認することができました。

2. 京成本線・押上線 - 青砥駅でのダイヤ乱れ発生

〈事例の概要〉
2020年6月12日(金)午前10時15分ごろ、東京都葛飾区の京成電鉄青砥駅で、入ってきた上り普通電車が脱線。これにより京成本線、押上線、成田スカイアクセス線が一時運転を見合せた。午前10時50頃、八広〜青砥(押上線)を除いて運転再開。ダイヤは大幅に乱れ、直通している都営浅草線や京急線などにも影響が出た。脱線事故によるけが人はいなかった。

まずは、脱線事故後も運転見合わせが続いた 、京成押上線(青砥〜八広間)の終着駅である押上駅の人の流れについて前後比較してみます。

押上駅:脱線事故前(午前9時30分)の流入分布

画像5

脱線事故前の午前9時30分の段階では、京成本線から青砥駅を経由して押上駅に向かう人の流れが観察できます。

押上駅:脱線事故後(午前10時30分)の流入分布

画像6

脱線事故から約15分後の午前10時30分の流入分布をみると、京成本線及び押上線からの流入が完全に無くなっている様子が観察できます。

ここまでは京成線内での影響に注目して観察してきましたが、より広範なエリアにその影響が及ぶことはなかったのでしょうか。運転見合わせが続いた京成押上線は、押上駅から都営浅草線に直通しています。脱線事故が発生した2020年6月12日は平日(金曜日)でしたので、浅草線が走る新橋などの都心のオフィス街に向かう移動需要があったのではないかと推測できます。
そこで、ここからは同日の新橋駅の人の流れの分布を観察してみます。

新橋駅:脱線事故前(午前10時)の流入分布

スクリーンショット_2021-05-13_16_00_00

午前10時の段階での流入の様子を見ると、押上線エリアからの流入は確認できませんが、浅草線の途中駅からの流入は確認することができます。

新橋駅:脱線事故後(午前10時45分)の流入分布

画像8

一方、脱線事故発生から約30分経過した午前10時45分には押上線内はもちろん、浅草線内からの流入も無くなっている様子が観察できます。押上線からの直通電車が運休になったことにより、浅草線でも運休やダイヤ乱れが発生したことが要因であると推測することができます

このように青砥駅で発生した脱線事故によって、京成線だけでなく、直通する路線などの広域にまで影響が及ぶ様子を観察することができました。

終わりに

この記事では、PeopleFlowを使い、電車の遅延や運転見合わせが発生した際に、関連する駅の人の流れにどのような変化が観察できるかを紹介しました。

これまでにも、駅毎の人の流れの特徴や、コロナ前後の人の流れの比較などの記事を公開していますので、他の記事もぜひ御覧ください。

また、記事でも紹介した交通データ×人流データを組み合わせた混雑情報を提供するダッシュボード「PeopleFlow」はこちらで公開中です!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?