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フレスコボールのおかげで、東京に「居場所」ができた――風味千賀子さんインタビュー

小中高と続けたテニス経験を生かし、ジャパンオープン2017で女子部門2位となった風味千賀子さん。最初はできそうでできなかったというフレスコボールに魅力を感じ、毎週土日、日が暮れるまで練習。女子のトップレベルに上り詰めました。

2018年1月に仕事の関係で地元奈良県に引っ越し。ですが、毎月1回は東京に来て、ペアとの練習やフレスコボール仲間と過ごす時間をつくっています。フレスコ関西支部をつくる!という思いもあり、これから普及活動の幅も広がるはず。

一番強く感じたのは、やはりペアへの思い。それが伝わるインタビューになっていると思います。ぜひ、読んでみてください。

最初は、パリピの集まりかと思った(笑)

— フレスコボールと出会ったのはいつですか?

風味 2016年10月か11月くらい。長ちゃん(長田涼:現フレスコボール協会事務局長)経由で練習に誘ってもらって、友だちと2人で行ったのが始まりです。お台場の練習に行って、やったら全然できなくて。「あれ?思い描いてたのと違う」と思って、一緒に行った友だちは30分で離脱(笑)。私だけ何時間か練習に付き合ってもらいました。

その翌月に有沙が「練習するので来ませんか?」ってメッセージくれて、行ったんです。でもその練習に、有沙が二日酔いで大遅刻。で、実は一番はじめの練習のときも芝さんが二日酔いで動けなくて。さらに、お台場で練習したらその後はだいたいサイゼ飲みですよね。それで「これは、パリピのサークルみたいなところに来てしまったぞ…」と思ってました(笑)。

— それは、そう思いますよ(笑)

風味 協会ホームページとかFacebookの写真見ても、水着の女の子たちが写ってるじゃないですか。「夏は水着を着て大会に出ないといけないんや…やばい。」って思ったり(笑)。でも競技自体は面白かったし、みんなのウェルカム感がすごくて、参加したくなりました。

— 始めてから、すぐにハマったんですか?

風味 ある時、倉茂くんと有沙に「絶対チカコさんに合うペアを見つけました!」って言われて。2017年の頭に初めて、今のペアのあやっぺさんに会いました。でも2人とも始めたばかりでラリーも全然続かなくて。倉茂くんと有沙は何をもって「合う」と言ってるんや、みたいな状態でした(笑)。

— 押しが強い2人に引き合わせられたんですね(笑)。ペア結成はどのタイミングで?

風味 その後、あやっぺさんから「大会に出てみたくない?」って言ってもらって、そこで組むことになりました。

— 2017年2月のビギナーズカップでは、男子ペアもいる中で3位。

風味 3位入賞してしまったら、もっと上も行けるだろうと。そこから、毎週土日全部やってましたね。あやっぺさんも私も、友だち付き合いが悪くなったと思われるぐらい、フレスコボールしかしてなかったです。

日常のコミュニケーションが、ラリーに出る

— 私の感覚では、そのあたりからフレスコ人口も増え始めた感じがしています。

風味 確か久しぶりの女子ペアでしたよね!

— そうなんです。それまでは女子が本当にいなかったので、入ってきてくれてよかったです。あやっぺさんとはすぐに仲良くなったんですか?

風味 あやっぺさんの最初の印象は「パーフェクトな大人の女性」という感じだったので、「自分とどこが合うんやろ?」って思ってました。でも、会ったり練習してるうちに、負けず嫌いなところとか、性格は似てるかもと思って、そのうちにお互い「脳内スケルトン」って言うくらい、何を考えてるのかが分かってきました。

— 練習量は女子の中で一番だと思いますが、どんな気持ちで練習していたんですか?

風味 ミウラカップ(2017年3月)では、真彩・有沙ペアが1位で私たちが2位だったんですけど、200点ぐらい差をつけられてて(※190点差)、「これは2位じゃない」と思いました。だからどうしても真彩・有沙ペアを倒したかったというのはありましたね。

— それは2人から言われた気がします。5月のお台場カップの後、「真彩・有沙ペアに勝ちたかったんだ」っていう。

風味 そうそう、有沙がしばらく競技できなくなるから、「これがラストチャンスや」って2人で言ってて。

— なるほど。小澤・風味ペアは短期間の成長がすごくて、8月のジャパンオープンまでの間にも、また何段階も上手くなってました。

風味 でも私たちの中では、ジャパンオープン2,3週間前になっても、全くしっくりきてませんでした。今考えると、あまりに練習練習ってなりすぎて、普段の会話がなかったんですよね。ボールを打つだけになってしまった。ぎくしゃくしながらラリーしてるなってお互いに思ってました。

— コミュニケーションが少なくなって、それがボールにも出てきた。

風味 女子特有なのかもしれないですけどね、日常のコミュニケーションの大切さかな。それで7月末くらいに、2人で夜ご飯に行きました。何を話したとかじゃないですけど、5、6時間ずーっとしゃべり続けたんです。翌日、朝から練習したら、昨日までのはなんだったんだっていうぐらいハマって。これならいけるかもしれないと思えました。

— ジャパンオープン、めっちゃいいラリーでしたよね。

風味 大会前にあやっぺさんが、ジャパンオープンを一区切りにしたいと言ってたんですね。選手としてのあやっぺさんがいなくなるかもっていうのが、私の中ではすごく大きなことで…一緒に出られる最後の大会かもしれない、しかも最大のライバルだった、真彩・有沙ペアはいない。

これはもう、勝つ以外の選択肢は自分の中に与えたらあかんって。それがすごくしんどくて。早くこの緊張感から解放されたい半面、もう組めなくなるなら、終わらなくてもいいなっていう気持ちが混ざりあってました。

— その中での、あのラリー。

風味 あれはあの時できるMAXだったと思うので、もちろん悔しかったけど、真彩・彩未ペアが1位でも自分たち的には納得できました。負けたけど、会場を沸かせることができたのは自分たちだったなと思って。

— いやー、本当にあれは、次の私たち出づらかったですよ(笑)。それくらい盛り上がってました。

できる限りのことをして、大会当日に最高のプレーをしたい

— あやっぺさんとの印象的なエピソードはありますか?

風味 私が奈良に帰るって決めた時かな。ジャパンオープンが終わったときに、選手は辞めずに、もう1年チカコとやりたいって言ってくれて、その4か月後に私が奈良に異動することが決まったんです。私の中ではペア解消の覚悟で「奈良に帰ることになりました」と伝えました。でもあやっぺさんはそれでも「もう1年チカコとやる」と言ってくれて。

それはもう、本当に、本当にうれしくて。どこまでできるかわからないけど、この1年はお金とかはもうどうでもいいから、できるだけ時間を作って練習して、なんとか結果を残したいと思いました。練習できないから順位が落ちましたっていうのは絶対にしたくない。

ペアに関しては、「練習時間の取れない私と組んでていいのかな」って思うところもあったんです。でも、それでもいいって言ってくれた。だからもう「私でいいのかな?」とは思わないようにしようと決めました。できる限りのことを2人でやって、大会当日最高のプレーができたらいいなって。

— いつだかちかこさんと話していて、「フレスコボールと出会って人生が変わった」と聞いたことがあります。どういう風に感じてそう思ったんですか?

風味 フレスコボールに出会うまでは、東京に来てから3,4年、本当に何してたかわからない週末だったんです。でも、フレスコボールを始めて、「東京に自分の居場所ができた」と思いました。

— 「居場所」。

風味 はい。あの空間を作れるのはすごいですよ。だってみんな正直、何の仕事してるのかもわからない人もいるじゃないですか。年齢もバラバラやし。なのに、初めて行った人でも分け隔てなく接してくれて、自然に中に入れこんでくれる空間は他にはないなーって。でも別に、取り込もうとはしてない。群れるのが好きな人はちょっと合わないかなとも思う。

— なるほど。群れたい人は逆に合わないんですかね。

風味 個人で独立、自立してる人たちの集まりに見えるんです。だから、練習後のご飯とかも、一緒に行かないからといって何か言われることもないけど、行ったら行ったで同じ空間を楽しめる。来たいときはいつでも来てねっていう空間。私はすごくいいなと思います。

— 一緒に楽しむこともできるけど、それぞれ依存はしていない。なかなかないかもしれないですね。

風味 不思議なコミュニティやなと思います。逆にこれをサークルと名乗ってしまったら、しんどいかも。やっぱり戦わないっていうのは、他のスポーツとは大きく違う部分で、それは集まってくる人の特徴にも表れてるかもしれないですね。今いるメンバーに攻撃性のある人はいないし。

今、月一くらいで奈良から東京に通ってますけど、実際すごく大変です。でも、東京に来るとめっちゃ元気になれるんですよ。

— 元気をもらうっていうのは結構みんな感じてると思いますね。

風味 作らなくていいですよね、自分を。逆に、気をつかうとバレる(笑)。たった1年ちょっとしか一緒にいないのに、私のことをよく見てくれてるし、知ってくれてるから、居心地がすごくいいです。

関西でもフレスココミュニティを広める

— 今後の目標を教えてください。

風味 選手としてはもう、あやっぺさんと優勝しかないですね。欲を言えば8月のジャパンオープンという最後の締めに。あとは、関西から数ペア連れて大会に出たい。

— 関西からぜひ連れてきてください。

風味 みんなにも体験会と称して関西に来てほしい。やっぱり初心者同士でやるのと、一つレベルが上の人とやるのでは全然モチベーションも違うし。それまでに私がある程度、人数を集めておいて、日本のトップレベルのプレーを関西で見てもらえる環境を作りたいです。

— 今のところちかこさんにしかできないことですね。私も大阪とかに体験会行きたいです。

風味 来て来て。だから私が東京に依存するのは、あと何年かでやめようかなと思ってます。東京に帰ってくるっていうのはすごい楽しいことだけど、このままだったら関西はなにも変わらないので。時間はかかるかもしれないけど、関西でも東京みたいに広めていきたいですね。

次回のインタビューもお楽しみに!

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