将来はフレスコボール界のキングカズに――ジャパンオープン3連覇、初代日本代表・倉茂孝明さんインタビュー

倉茂孝明さんは大学生時代の2014年にフレスコボールと出会い、2015年には初代日本代表としてワールドカップに出場。その後も、日本のフレスコボール界の最前線で活動をつづけ、2015~2017年のジャパンオープンで3連覇中の日本トップ選手です。

日本でほぼ認知されておらず、練習相手もいない草創期からフレスコボールに親しみ、普及活動をしながらも自身のレベルアップも欠かさず腕を磨いてきました。そういう時期を経てきたからこそ、簡単には折れないフレスコボールへの熱い思いと自信があります。

日本代表としてのプライドを強く感じさせてくれるインタビューとなりました。ペアの嵐さんとのエピソードも含めて、必見です。

最初の1球が、きれいな放物線を描いた

— フレスコボールに出会ったきっかけを改めて教えてください。

倉茂 2014年3月から1年間、ブラジルに留学していました。そのときに失恋しまして…何かのスポーツで日本代表になって見返してやろうと思って、ネットで検索したら、フレスコボールが出てきました。日本フレスコボール協会で、バイトの募集みたいに日本代表を募集してて。

— バイトの募集(笑)。

倉茂 「テニス経験者優遇」みたいな(笑)。自分の大好きなリオ発祥で、ビーチも好きだしテニスもやってたし、かつ「初代日本代表」って、こんなチャンスはないじゃないですか。「これだ!」と思ったんです。調べたらちょうどその週末(2014年12月)に、コパカバーナビーチで大会があるって知って。

住んでいたサンパウロから、夜行バスに乗ってリオに行きました。翌朝、会場について誰かに声をかけようとしたら、逆に声を掛けてきてくれたのがルイース選手(ブラジル代表・フレスコボール界のレジェンド)だったんです。「フレスコボールを見に来たんだ」って言ったら「じゃあやろうよ」ってラケットを渡されて、そこで彼とラリーしました。

— いきなりトップ選手とラリーを。

倉茂 これは本当に今でも忘れない。「俺は日本代表になる」って思って来ているから、この1球目は本当に貴重だぞと思ってて(笑)。ルイースがポンって出してくれた球を返したときに、すごくきれいに放物線を描いて返ったんです。

— そこで、「行ける!」と?(笑)

倉茂 「行ける、日本代表になるな」って思って(笑)。その時はルイースがどんな人なのかも、ルールも知らなかったけど、大会時のめちゃめちゃスピーディなラリー、人間離れしたラリーに引き込まれました。ラケットとボールもすぐそこで買って。

サンパウロに戻ってからも友だちと練習したり、年末年始はラケットを持ってリオに行って、ビーチでプレーしている人を見つけては片っ端から「練習相手になってくれ」と声をかけて、日が暮れるまで練習したり、という武者修行の旅をしました。これは本当にいい思い出ですね。

「フレスコボール界を代表する」強い日本代表への意識

— 日本では練習相手もなかなかいない中、どうやって練習したんですか?

倉茂 基本は相手に打ってもらって、ひたすらディフェンスです。相手が初心者でも、自分が相手の打ちやすいところに返せればラリーも続くし、その精度を上げ続けるというのが第一で、アタックの練習なんて全くしていなかったです。

当時は、リオ五輪が開かれることもあって、リオ繫がりで結構メディア取材があったり、前事務局長をはじめ協会のメンバーが、体験会やイベント出展などのフレームを作ってくれて、とにかく普及を頑張っていこうという気持ちでした。

特に自分はテレビ取材や体験会などの現場の最前線というか、プレー面での役割を担っていると思っていて。日本代表として、恥ずかしくないプレー、魅力を伝えるというところをずっと意識していました。当時は勝つことよりも、フレスコボールを通してたくさんの人と出会って、新しい仲間を作ることが楽しかったですね。

— 普及面を強く意識していたんですね。

倉茂 それでも、いろんなスポーツの日本代表の人と関わることもあって、まだまだ小さい世界だけど、「日本代表」だから、たとえばビーチテニスの日本代表の方とラリーして、「そんなもんか」って思われないようにというのは意識したし、緊張感を持ってやっていました。「フレスコ界を代表しないと」という意識が、上達させてくれたのかもしれないです。

— わりと「日本代表」というものへの思いが強くありますよね。

倉茂 そうですね。他のスポーツの日本代表の人たちと一緒に話したり飲んだりする中で、代表としての意識とかいろいろ、教えてもらいました。それが今の自分にもプラスになっているなと思います。

ラリーをしている瞬間は、すべてを忘れて自由になれる

— 2015、2016年とジャパンオープンで優勝して、2017年はペアが代わりました。その時はどういう思いだったんですか?

倉茂 嵐さん(フレスコボール協会アンバサダー・五十嵐恭雄さん)からオファーがあったんですけど、それまで国内で負けていなかったので、ちょっと悩みました。

— 競技人口も増えて、大会のレベルも上がってきていましたよね。

倉茂 2016年のジャパンオープンの時は、結構、芝・斉藤ペア(日本代表)もいいプレーをしていました。けど、実力は亮太にも芝さんにも負けていないという自負がありました。だから嵐さんと組んで数か月練習すれば、あの2人にも勝てるかなと思っていて。

それに嵐さんが、スラムダンクの“桜木花道”みたいにぐいぐい伸びていくのがイメージできたんです。オファーを受けたときも、その「やる気」が刺激になりました。だから、「3月と5月の大会はどうなるかわからないけど、ジャパンオープンの時は優勝しましょう」と伝えました。

— 嵐さんとは、競技に対する温度感が合っていたと。その時点での実力は足りていなくても、気持ちの面で合っているのは大事なことですね。

倉茂 ペアとの意思疎通って本当に大事だなと思います。でも、当時はチャンピオンを目指すというところで、嵐さんも言っていたように、「優勝しなくちゃ」という気持ちが強くなってしまった。そこは僕が嵐さんにすごくプレッシャーをかけちゃったかもしれません。最初のうちはあまりうまいラリーができなくて、物足りない、というか苦しかったです。

でも、8月のジャパンオープン直前、「楽しもう!」と思ってやったら、いいラリーができて。その辺りで「優勝できそうだな」と感じて、大会当日もいい集中力で楽しめました。なんか、本番に強いんですよね。(笑)

— その辺も聞きたくて(笑)。倉茂さんは「ここぞ」というときにきちんと結果を出すイメージがあるんですが、どうやって大会に臨んでいますか。

倉茂 ちょっと質問の意図とは違うかもしれないんですが、皆さんご存知の『ワイルドスピード』という映画の中のセリフで、「ゼロヨンだけに生きる人生。先のことは考えず、借金も店もチームも気にしない。10秒足らずの時間だけ、俺は自由だ」という名言があって。僕もフレスコしてるときに、同じような感覚になれる気がするんです。

打っている瞬間、他の事をすべて忘れて夢中になれるというか。大会になると、観客に囲まれた独特の雰囲気のコートが現れて、その中心に2人だけが立てるわけです。時間は5分間、そこですべてを出す。「俺らすげえだろ」って気概を持って最高のプレーを魅せる。「やってやろう」という気持ちです。それって、気持ちいいじゃないですか。

— なるほど。

倉茂 この競技には、「ボールを落としちゃいけない」という緊張感がピンと1本あって。その上で、リスクを負いながらも半端ないスピードの高速アタックをピンポイントで狙ったところに打ち込んで、毎回少しずつ違う軌道で返ってくるボールに対応するために頭をフル回転させて、体も動かして、またすぐ次のアタックを打ち込んで。。その感覚が楽しいです。

— 周りに魅せたり、自分が無になれる瞬間を楽しんでいるんですね。

倉茂 特に2017年のジャパンオープンはそれをすごく感じました。ラリー中、MCの南さんが「嵐さんを、アンバサダーに推薦してよかった!」って実況してて。あの言葉はすごく耳に入ってきて、「今、きっと俺らすげーいいラリーしてるんだろうな」とふと思ったのを覚えています。

あと、残り2,30秒ぐらいの時かな。ボールが僕のボディに来て、「うわぁ!」って声出して必死に返したときに、嵐さんが、「頑張れ!」って言ってくれたんですよね。その時に、「ああ、今引っ張ってもらってるな」って。それまでは自分が引っ張る気持ちでやっていたけど、引っ張ってもらってるなと感じて、気持ち良く最後まで行けました。

「やっぱ、俺が行かないと!」

— その時の2人の最高の形が出ましたね。

倉茂 もちろんまだまだいけるという思いはあります。この前嵐さんと練習で打ってる時に、すごく良いラリーができたんですよ。特別なプレーがあったわけではないんですけど、安心して打ち込めて、徐々に昨年までの練習で味わえなかったような感覚になってきました。

— やっとペアとして楽しめるようになってきた感じですね。今はどんなことをモチベーションにしていますか?

倉茂 いろんなものがモチベーションになっています。いろんな人に会えて、仲間もできて、週末のビーチでビールを飲む瞬間なんかは格別ですね!(笑)。それだけでも十分なモチベーションだし、やっぱりもっともっと上手くなりたいという気持ちが体を突き動かしています。あと、最近は自分の成長以上に、自分が教えたことで誰かが少しでも上手くなったりフレスコの楽しさを感じてくれてたりする瞬間があると、めちゃ嬉しいです。近い将来、スクールを開けたら最高ですね。これからもフレスコボールを通していろんな人と笑いながらワイワイできたら幸せです。

— 今後はどこを目標にしていきますか?

倉茂 世界大会には何度か出場しましたが、日本で優勝したペアとはまだ出たことがないので、今年は嵐さんとブラジルに行って、優勝したいなと。できる気がするし、先日他のメンバーがブラジルに行きましたけど、やっぱ、俺が行かないと!って。

— そういうところ、さすがです(笑)

倉茂 (笑)。でも本当に、ブラジル人も僕のことを待ってるんです(笑)。初めてやった日、本当に生まれたての赤ちゃんみたいな時から見てくれている人たちがたくさんいる。だから、そういう人たちに成長した姿を見せて、なんなら試合では圧勝したいです。

将来はフレスコ界のキングカズじゃないですけど、ずっと現役で何歳まででも挑戦していたいし、日本や世界でフレスコボール界のレジェンドと呼ばれるような存在になりたいです。そして、いつかは日本もブラジルみたいにビーチを歩けば誰かしらがフレスコボールをやっているという光景を実現していきたい!そこを目指して、いろんな人に興味を持ってもらいたいですね。

次回のインタビューもお楽しみに!

〇ジャパンオープン2017での倉茂・五十嵐ペアのラリー!

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落合真彩

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