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[Portugirl]~EU最西端での小娘ひとり旅奮闘記~[007]


前回の続き。 ( 最初から読む

2018年4月30日

 今日も朝からシャワーを浴びてスッキリしてからスタート。昨日のリセット作戦が功を奏し、浮腫みも綺麗に取れた。また8時に朝食を取ったら部屋に戻って二度寝。今日はコインブラを離れて、ポルトガル第二の都市、ポルトへ向かう日だが、コインブラでやりたいことはもうほぼやりつくしたのでチェックアウトまでゆっくりすることに。

 チェックアウト時刻11時前にチェックアウトを済まし、荷物だけ置かせてもらって街に降りた。カフェサンタクルスでこの旅行記を書き進め、別のカフェで軽くランチを済まして13時には宿に戻った。タクシーをオーナーさんに呼んでもらい、コインブラB駅へ。

 列車でポルトに向かうのが一番得策なことが昨日下調べした時に判明したので、時刻表を見て狙った時間の列車のチケットを無事購入。


列車はInterCity


 また列車で旅をできるのが嬉しく、少しうきうきした。定刻13:32からは10分ほど遅れてホームに列車が到着。ポルトガル語ばかりの切符を見て、数字と雰囲気で車両番号と席の番号を解読。


 ホームに入ってきた列車のわかりにくい車両番号を見つけ、自分の乗る24号車までスーツケースを持ってダッシュした。

周りから

「なんだあの日本人!!」

「なんだかわかんねぇけど頑張れ!!!」

とポルトガル人たちからの声援を背に受け走る走る。こうして荷物を持って自分の乗る車両に走って乗り込むのも2年ぶりで楽しかった。

 無事荷物を置いて着席した瞬間、列車は北に向けて動き始めた。
私の席は進行方向とは逆向きの席。左の自分の席側の窓からは分厚い雨雲が見える。反対に右の窓から見える空は青く晴れていた。海側は風が強いからいつも晴れるのだろうか。

「空が違う」

 海外を旅したことある人の中には、私と同じくこう感じたことのある人もいるはず。少なくとも私の右側の窓から見える青空に浮かぶ雲は、日本の雲よりこう、躍動感のある雲だと思う。列車はポルトに近づくにつれ、左の窓から見えていた分厚い雨雲を引き離し、燦々と降り注ぐ太陽の下、北へ北へと向かっていく。

 ポルトまでもうあと二駅というところまで来た。列車のWi-Fiもようやく繋がった頃、次のステイ先のAirbnbのホストとチェックインのやり取りをしていたらまたもやトラブル発生。事前のやり取りでなぜ1時間遅い列車を最初に勧めてきたのか謎だったが、どうやら私の「15時にポルトに着く列車」を、「15時コインブラ発のポルト行きの列車」だと勘違いしていたらしい。ポルトーコインブラ間は1時間。よってポルト=シャンパーニャ駅で1時間暇になった。まぁホストが家に居ないんじゃあチェックインもできないししょうがない。この旅行記を書き進める時間をお釣りでもらったと思えばどうってことない。

 それにしてもこの旅では移動で毎回何かしらトラブルが起こる。それによって毎回目的地まで焦らされる。だがもうこんなの慣れっこだ。むしろこういうトラブルがまさに旅の醍醐味だろう。こういうハプニングは決まって次の街で何かいいことが起こる前兆なのだから。


 列車は15分ほど遅れて、ポルト市、シャンパーニャ駅に到着した。約1時間の暇つぶしは、この旅行記をまた書き進め、Wi-Fiを使い、どうにかこの状況を誰かと共有したく、日本にいる友人とLINEで電話で話した。この時ふと思った。しばらく日本語を話してなかったなと。ひとり旅の留意点はまさにこうだ。今その時起きたことをリアルタイムで共有できる相手がいないことと、ノンストレスで話せる自分の母語である日本語を話せないことだ。そのことも含めて友人と電話で話しているとAirbnbのホストから連絡が来た。電話を切り、メトロでステイ先の最寄駅Casa Da Musicaへと向かった。

 「青のスーツケースに、青のバッグ、青のショルダーバッグ」

と自分の特徴を伝えて置いたので待ち合わせ場所で待っていると、16:10に着くと言っていたホストは10分遅れて現れた。「Hola!Maaya!本当にごめんなさい!さぁさぁいきましょ、あら、ほんとに青ずくめ!荷物手伝うわ!ん?あなたのブーツ素敵ね!」と遅れてきた、時間を勘違いしていた割には明るく登場したので若干驚きながら、早く荷物を置いて腰を落ち着けたいので話しながら今回最後のステイ先へと向かった。

 メトロの駅からは数分で着いた。坂もなくて安心した。お家は日本でいう三階にあるので荷物をもってテンポよく階段を登った。ドアを開けると三匹の猫が出迎えてくれた。刺身、ピース、そして アリという名前らしい。グーグルで日本語の意味を探してつけたらしい。

 部屋はシンプルで必要なものは全て揃っており、過ごしやすそうだった。リビングではホストのInesがお香を焚いており、置いてあるインテリアもおしゃれ且つ、何やら神秘的だった。荷物を置いて身支度を整えなおしてリビングへ。Inesがお茶とお菓子を用意してくれており、地図を広げてお勧めスポットやルートを書き込みながら教えてくれた。

 ここまでは良かった。そこからお互いの話へ内容が映ると、私がInesと初対面で感じた不思議な違和感が確信へと変わった。彼女自身とてもいい人なのはわかるのだが、如何せん彼女は「物事を感覚で捉えるひと」な訳で、会話をしていても、内容によって頭の中にイメージが広がりすぎると感受性が豊かすぎて感情が溢れ出す傾向にあるみたいだ。蛇の話になったら泣き出すし、飛行機の話をしたら頭を抱えたまま数十秒フリーズしたのち、呼吸を整えて意識をテーブルに戻していた。

 正直な感想として、このままの調子だと先が思いやられた。この滞在中ここのホストであるInesとのコミュニケーションは必要不可欠なのに、どう接したらいいのかわからない。実際に彼女とコミュニケーションをとってみないとわからないと思うが、会話している時、彼女と目が合っているものの、本当の意味で目が合っているのか謎。目を通して心や頭の中を見透かされているかのような気分になってくる。個人的な感想になってしまうが、Inesから受ける質問も抽象的な物が多く、話をしていて占い師やそっち系のスピリチュアルな方の人と話している感じに近かった。

 Inesとの会話は長く、2時間経ってやっと解放された。その頃には私は疲れ切ってしまい、1時間ほど動けなかった。本当は荷物を置いて一休みしたら街に繰り出すはずだったのに。しょうがない。とりあえず彼女とのコミュニケーションはまた明日考えることにして、今日はインタナショナルジャズデー。夜ご飯を食べてジャズを聴こう。

 またメトロに乗って中心地トリニダーに移動。夜に備えてJazzバーの場所を確認したら、ふらふらとしながら適当に1人でも夜ご飯食べられそうなお店を探した。Rua Da FloresにあるA Plate という可愛らしいお店を通り過ぎようとしたら、何やら中からいい感じのJazzが流れてくる。音に誘われるようにお店の前まで吸い寄せられると、店内の窓側にはいい感じの紳士なおじさまがギターの生演奏をしていた。


 ウェイトレスのお姉さんに1人でもいけるか聞いてみたところ、中は予約で一杯だとのこと。外でもいいならということだったので快諾し、スープときのこのカルボナーラ、そして赤ワインを注文。先ほどのお姉さんが心配してブランケットを持ってきてくれた。


 窓越しにギターを弾くおじさんと目線で会話しながら音楽に耳を澄ましていると、程なくしてスープが運ばれてきた。少し肌寒いこの気候に野菜スープは沁みた。


 パスタも美味しかったが、1人には量が多いので無理をせず残した。演奏が一通り終わる頃には食べ終わり、また窓越しにおじさんと別れの挨拶とお礼を伝えて、次のJazzバーへと向かった。

 歩いて10分くらいのところにあるJazz House : Jazz Storyに入るとまだ客は誰もおらず、またワインを飲みながら演奏開始を待った。23時前、ついにスタート。

 今夜はアップライトピアノと、コントラバス、ドラムのトリオだ。ポルトガル語オンリーで進むが、音楽に言葉はいらない。気づいたら体がリズムを取り始める。跳ねるピアノと聴き入るコントラバスと全てを巻き込むドラムが代わる代わるオーディエンスを席巻する。フェアリーゴッドマザーがシンデレラにかけた魔法が解けた頃、ここでの音楽の魔法も解けた。


 会計を済まして、メトロに乗り、猫もホストも寝静まったステイ先に戻った。ベッドに寝転がったあと、気を失うように深い眠りについた。


つづく

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