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入札(オークション)方式とは?|M&A BANK Vol.157

買い手の決め方、実は2種類あります

島袋
今日もブルームキャピタルの宮崎さんに来ていただいております。
オークションという言葉が宮崎さんの本にも出てきますが、これってどういうものなんでしょうか。

宮崎
オークションは入札のことですよね。
M&Aの売却プロセスは、相対方式と入札方式の二つに分かれます。
実は本を書き始めた理由がここにあるんですよね。売却プロセスの違いとかそのコツ、ノウハウを書いてある本が世の中になかったので、そういうことを書いたんです。たぶんこの本が初めてだと思います。

入札はだいたい型が決まっています。
今3月1日だとしたら、たとえば5月30日までと期間を決めて、その間にいろんな買い手候補にあたって簡単なデューデリをして価格を出してもらうんです。
その決まった日付を入札日というんですが、入札日に1回札(買収価格)を集めて、そこから交渉していく人を決めていくというプロセスです。

いろいろコツがあるんですけど、調べても全然出てこなかったんですね。
それで、その一部をこの本に書いたんです。

島袋
どっちのやり方がいいんでしょうね。

宮崎
ケースによりますね。
価格や条件にこだわらず、手軽にサクッと決めたいなら相対でいいと思います。

でも僕はいつも思うんですけど、経営者がそこそこの会社を売却するのって、今までの人生を売るみたいなもんなんですよね。だから最高の形にしたいと思うのは当たり前なんですよ。売却する価値を最大化したい
その価値は嘘を言って高くするというのではなく、ちゃんとフェアなバリューで最大化してあげたいじゃないですか。よくあるキーマンズロックのような、契約の条件もそうです。こういった条件は交渉になります。
そこも含めていい条件を取ろうと思うと、入札が1番いいんじゃないかと思います。

他にも、例えば上場会社の子会社を売却する場合も「入札した」と市場に示すことができれば、経営者として売却価値を最大化させたというアピールにもなります。

とにかく、ベンチャー企業が売却するとき、条件を最大化するなら入札がいいかもしれませんね。必ずしもそうではないんですが。

島袋
なるほどですね。みなさん、とりあえず宮崎さんに相談してみたほうがいいですね。(笑)


結局、仲介とFAはどう使い分けるべきか

島袋
僕もM&Aの仲介とかマッチングをさせていただくことがあるんですが、そのとき少し疑問に思うのが、果たして両方についていいのか?片方につくべきじゃないのか、ということなんですよね。要は仲介会社とFAアドバイザーの話です。
これはどっちがいいというのはないと思いますが、二つはどう違って、売り手はどう使い分けるといいんでしょうか。

宮崎
私の口から言いにくいことではあるんですが、僕の意見では、売り手側の人はアドバイザーを雇った方がいいと思います。
買い手であれば、仲介会社がすごく有用だったりすると思います。

売り手さんでも特にご高齢で、価格最大化とか条件をちゃんとするよりも早く相性のいい相手を決めたいという場合は、仲介会社はネットワークがすごいのでとても有用です。

ただ、会社の規模がある程度大きい場合は、そもそも買い手が沢山いません。
10億~20億の会社を買える会社がどのくらいあるかと言ったら、少ないですよね。持っているお金の10分の1以上は使いたくないと買い手が考えるとすると余計にです。
買い手候補が多くない場合は、仲介会社の強みが相対的に弱くなります。

それに価格が高い場合は、価格の交渉をする余地が増えます。「この事実をこう説明したら価値をより感じてもらえる」とか、「この会社の利益が今は2億でも、買い手が変わったら2億5000万に増える」とか。
いろいろな交渉をするための情報整理をした上で売り手側に立って、買い手に交渉する必要が出てきます。
仲介会社はマッチングをしてお金をもらうので、どちらかについたら変になりますよね。だから交渉はできない

なので、そこそこ規模が大きい場合にアドバイザーがちゃんと力になってあげるカルチャーができれば、日本の売り手がすごくハッピーになると思います。


FAをつけると効果的な規模とは?

島袋
どのくらいの規模だとFAをつけた方がいいんでしょうか。

宮崎
オーナー次第だとは思いますが、売却側のFAである立場から言うと、そうですね…
営業利益で3000万とか5000万を超えるような会社であれば、いろいろな交渉技術もあるし、実際会社の情報を整理する意味合いも相当増えるし、いろいろなスキームを使うこともできるので、FAがやれる仕事が増えてきます。

逆に市場価値が5000万ぐらいしかない会社であれば、僕らが入ってもなにも変わらないんです。
相談に乗ってもらうことにはすごいメリットがありますが、仲介会社さんでもそれはやってくれますから、あえてFAを付ける必要はないかなと思います。



最後に、売り手の皆さんへ

宮崎
最後に1個だけ、お伝えしたいことがあります。
ファクトとして、売り手と買い手にはM&Aに関するスキルの差が相当あるんです。

売り手はだいたいM&Aは初めて、あっても2、3回目なわけですね。
一方買い手は何回もやっていることが多くて、ブレーンがいますから、そこの差を埋めないといけない。

アドバイザーをつけずに進めることもあると思うんですが、そういう場合でも必ず、売り手として知っておかないといけないノウハウを勉強しておいた方がいいと思います。
インターネットでも、僕が出した本でもいいので、ある程度知識をつけた上で交渉しないと、相場も何もわからないで失敗しちゃいますので。
そこは注意していただくといいと思います。

島袋
いや~、本当にためになりました!
売り手の皆さん、しっかり勉強して交渉に備えましょうね。
宮崎さん、この度本当にありがとうございました。ぜひまたよろしくお願いします!


出演者

■宮崎 淳平:株式会社ブルームキャピタル-代表取締役社長

ライブドアグループ、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社社楽にてM&Aアドバイザリー業に従事。その他にもプライベートエクイティ投資案件、資金調達案件、及びファンド組成・運営を多数経験。2012年にブルームキャピタルを創業。

【株式会社ブルームキャピタルとは】

「ベンチャー市場・TMT関連市場におけるM&A市場の完全市場化への貢献」を経営理念とする、M&Aアドバイザリーファーム。売り手側のみの立場に立ち、各売り手にカスタマイズされたM&Aアドバイスに特化するという、国内では例のないサービスを展開している。

■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役

シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。