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50年続いた家業を、どんな形で譲ったか|M&A BANK Vol.160

元の商売の、何をいかすか?

島袋
今回も、株式会社Loco Partnersの川口さんに来てもらっています。
川口さんのご実家の、50年続く小売りの酒屋さんを事業承継された際のことをお伺いしています。

経営状態はどんな感じだったんですか?

川口
私の父とか祖父の時は規制産業だったので、けっこう儲けていたんです。
おじいちゃんはお酒の免許の他にも、米の免許、タバコの免許、塩の免許と、規制産業でガチガチに固めて、「置けば売れるポジション」を作っていました。

島袋
やり手ですね。

川口
おじいちゃんやり手だなと思いましたね。
でも今の世の中だと規制緩和されちゃっていて、酒もタバコもどこでも買えます。これをどうアジャストさせていこうかということですね。

タバコよりも日本酒に目が向いたんですが、そちらを見始めると仕入れに力を入れないといけないんですね。
自分で開拓もするんですが、仕入れを他のところで担保できないかなと思っていら、たまたまSAKETIMESさんからオファーをいただきました。
単純に面白そうだなと思いましたし、酒蔵さんとのコネの部分について、彼はSAKETIMESをずっとやっているので、そこを借りれないかなと考えもしましたね。

両親は両親で、商売人の信頼として、お得意様がいる中でいきなりは辞められないので、5~10年間は実家で配達をしたいという思いがありました。
なので、そこはそこで残して免許はあちらに渡すという、実家のビジネスを守りつつ売るという形での事業承継を考え始めました。

島袋
お父さんとかは配達のロックアップということですね。

川口
言うならばそうですね。


一番の価値は「免許」だった

島袋
3代目、それで権利は譲渡したんでしょうか。

川口
昔の免許と有限会社は譲渡した形です。

島袋
株式会社じゃなくて有限会社の株式売却ですよね?
どういう算定の仕方になるんでしょうか。

川口
やっぱり価値があるのは株じゃなくて昔の免許で、そこに有限会社が紐づいているんです。
お酒の免許は個人に紐づく場合と会社に紐づく場合があって、うちは運良く会社に紐づいていたので、株式譲渡という形でそれを移行できて、今回のディールが成立しました。

その価値の評価なんですが、いろいろ聞いても参考になるものがあまりないんですよね。
テクニカルな玄人のM&Aじゃないので、それこそお互いの言い値というか、同意した結果になると思うんです。
親父は普通に「タダでいいじゃん」と言っていたんですけど、タダだとさすがにまずいだろうという話になっていろいろな人に聞いた結果、「数千万にはいかないけど数百万ぐらいじゃない」みたいに、ある程度レンジが狭まってきて、あとはお互いで相談ですよね。

うちも正直それでお金をもらおうとは思っていなくて、どちらかというと心意気というか、うちのこの免許を使って、日本酒の新しい価値と裾野を広げたいという思いに胸を打たれて売ったという感じです。

島袋
非常に聞きにくいんですが、ちなみに金額はいくらぐらいですか?

川口
金額ですか?数百万ですね。

島袋
うーんなるほどなるほど

川口
高いわけではないので。

島袋
お父さんはまだ働かれているわけですよね。

川口
そうですね。新しく株式会社川勇商店というのを作って、そこで新しい、今の小売免許をつけてやっています。
昔の免許と違って、今の免許だと通販を全国的にやれないんですが、単純に世田谷区内とかお得意様だけやるなら今の免許でも足りるので、新しい免許と新会社の組み合わせでやっている状態です。

島袋
銀行からの借り入れはなかったんですか?

川口
ないです。

島袋
そうなんですね。素晴らしいですね!
では今回はここまでです。またM&A BANKでお会いしましょう!


出演者

■川口 達也:株式会社Loco Partners-経営管理部 ゼネラルマネージャー(現:部長)/公認会計士

小売酒屋の長男として生まれる。新卒でディー・エヌ・エーの経理部に配属され、同年に公認会計士の論文式試験に合格。2017年、株式会社Loco Partnersへの転職を契機に実家の小売酒屋の再建に着手し、2018年に株式会社Clearに株式と旧酒販免許を譲渡。NPO法人3keysの支援も行う。

【有限会社 川勇商店のM&A概要】

川口達也氏が3代目となる、創業50年超の小売酒屋。通信販売でも事実上制約がない酒販免許の旧免許を保有していた。2018年に、日本酒専門WEBメディアSAKETIMESを運営するClearが発行済み株式の全てを取得し、同社を完全子会社化した。

■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役

シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。