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M&A 基本の流れと注意点|M&A BANK Vol.134

起業家YouTuberが増えてきました

島袋
冨岡くん、ビジネスYouTuberが増えてきましたね。

冨岡
そうですね、「この人がやるの?」っていう人をちらほら見かけますね。

島袋
たとえば誰ですか?

冨岡
レシピ動画kurashiruの堀江社長もそうですし、直接お会いしたことはないんですけど、プログラミングスクールの“TECH::CAMP”社長の真子さんが、ガチYouTuberみたいな動画を上げていたり。
「動画の時代がくる」とは言われていたんですけど、そういうことなんだなと。
思っていた動画とちょっと違ったので。

島袋
gumiの國光さんも、Facebookで「今年は多くの起業家がYouTuberになるだろう。
なんやかんやで起業家はひな壇芸人みたいなものなので」って。(笑)

冨岡
M&A BANKは先駆けじゃないですか?

島袋
あなたもひな壇芸人ですよ。(笑)


M&A・最初の一歩

冨岡
これまで冨岡くんにはM&Aのテクニカルな話をしてもらってきましたが、今回は初心にかえって、「はじめてのM&A編」として、基礎のところを話していきたいなと思います。

起業家が売りたいなと思ったら、まず何から進めればいいのか。用語もいろいろあるので、そのへんを解説していきましょう。
まずはM&Aの基本的なプロセスのおさらいをお願いします。

冨岡
わかりました。
今、「会社を売りたいなと思った時どうすればいいか」とおっしゃいましたが、実はその前からプロセスは始まっています。「売りたいな」と思っている人は、すでにプロセスがけっこう進んでいる段階です。
上場会社はともかく、ほとんどの会社はそもそもM&Aを経営の選択肢に入れていないですから。
世の中のほとんどの経営者の方たちは、自分が会社や事業を買ったり売ったりできるかもしれないとは考えていないと思うんです。

島袋
まず第1ステップ「自分にもM&Aができるかもしれない」と知って、経営の手法の1つとして選択肢に入れることですね。
たしかに、そう頭の中に入れるのは大きい。


どうやって相手を探すか

冨岡
それができた上で、「どういう風に売ろうか」という話になります。
ただ、(M&Aの)やり方はいくらでもあって、「これしかいけない」というのはない。
たとえば、うち(IdeaLink株式会社)がやっている不動産メディアを「売りたい」と思ったときは、

島袋
売りたい!!

冨岡
まず、メディアを買ってくれそうな経営者に直接相談に行って「買います」と言われて成立したら、それで終わりでもいいんです。
もちろん他にもやり方はいろいろあって、たとえば自分たちで買い手を見つけるのがなかなか難しかったり、M&Aの経験がなくてよくわからない場合は、いわゆる仲介会社さんとかM&Aアドバイザーさんとかに相談することが多いですね。
「こういう事業をやっているんですけど、買ってくれるところはありますか?」と。

島袋
はい先生!仲介会社とアドバイザーはどう違うんですか?

冨岡
すごく簡単に言うと、仲介会社はマッチングしたときに、買い手と売り手の両方から手数料をもらいます。
結婚相談所みたいなかんじです。

一方、M&Aアドバイザーファイナンシャルアドバイザーと言われる人たちは、売り手についたら売り手の人たちの為だけに働いて、売り手からお金をもらいます。買い手につく場合もあります。片方だけについて、片方からしかお金をもらわないんです。
そういう意味では仲介会社とアドバイザーは全然違います。

島袋
なるほど。


アリかもと思ったときに結ぶ、あの契約

島袋
もう一つ気になるのが、交渉を進めていく途中で結ぶ基本合意契約書にはどこまで法的拘束力があるか、です。
あれはどこまで決め込んだ契約書なんでしょうか。

冨岡
まず基本合意契約書というのは、売り手候補と買い手候補がお互いに簡単な情報をもらって「興味があるので本格的なDDに進もう」となったときに、その検討を始める前にお互いにざっくりと条件を握っておくためのものですね。

DDが終わって売却金額を提示したときに、売り手と買い手の想定金額にものすごく大きなギャップがあったらDDが無駄になってしまうので、それは避けたいですよね。

島袋
そうですね。

冨岡
だから、DDに入る前に基本合意という形で、お互いにだいたいの条件を握るんです。

それで、島袋さんの基本合意書の法的拘束力についての質問の答えとしては、「案件によってケースバイケース」です。法的拘束力を持たせる場合も持たせない場合もあります。

よくやるのは秘密保持契約ですね。あと、買い手が強く希望する場合は独占交渉権を付けることもあります。

島袋
独占交渉権というのは。

冨岡
たとえば、「1~3ヶ月のDD期間中はうちとだけ交渉してね」という約束ですね。
そういう契約を入れることによって、買い手は安心してお金をかけて調査できるようになります。

一方で、譲渡金額、例えば「だいたい1億円で」と書くんですが、これには法的拘束力がないケースがほとんどです。基本的にはないですね。
なぜかと言うと、そのあとのDDの中でもし何かマイナスの事象が出た場合、もう少し金額を安くしたいですよね。もし1億円でフィックスになっていると、下げられない。なので、買い手としても法的拘束力は持たせたくない。
だから、「DDの中で特に問題がなければ1億円ぐらいで買います」くらいの内容で、買い手と売り手が条件を握って、あとで揉めないようにするんです。なので、たとえ法的拘束力がなくても、基本合意の中で約1億円と記載することに意味はあるんです。

法的拘束力を持たせるか持たせないかは案件ごとに全然違ってくるので、ここは絶対に弁護士に相談してもらいたいところです。

島袋
なるほどね。


DDはどのくらいかかる?

島袋
基本合意をしたあとは、DDに入りますよね。DDはたしか、法務DD・財務DD・事業DDの3つがマストというお話だったと思うんですが。

冨岡
財務DD・法務DDはマストですね。これは外部の先生方に外注することが多いです。法務DDだったら弁護士の先生、財務や税務は会計士や税理士の先生方にお願いするのが基本です。
ビジネスDDもマストなんですが、外注するか、自分たちでするか考えるといいと思います。

島袋
いくらぐらいかかるんですか?

冨岡
これはちょっと、別撮りでもいいですか?めちゃくちゃあるんですよ。

島袋
えぇ!ここまで言っておいて?(笑)
詳しくはプレミアムの方でまたお話しするとして、ざっくりとは?

冨岡
たとえば、1000万円の会社をM&Aする時にDDに500万円かけるのは、感覚的にちょっと多い感じがしますよね。
そういう風に、DD金額は買収金額によって設定する側面もあります。

あとは、たとえば財務DDと法務DD合わせて100万円以内に収めたいとなると、受けてくれる会社はあんまりいないんですよ。小さい案件は個人でやられている会計士や弁護士じゃないと難しいことが多いです。

上場会社がクロスボーダーでやる大きな案件だったら、監査法人のBIG4と言われる大手の監査法人のグループにお願いしたり、4大弁護士事務所・法律事務所にお願いしたりします。そういう場合は1000万は超えます。

島袋
当前と言えば当然ですが、買収規模によってDDにかかる予算も変わるということですね。

DDにかける期間は一般的にどのくらいなんでしょうか?

冨岡
これも本当に案件によって全然違いますが、たとえばこの間出演いただいたZEIN株式会社のケースだったら、DD調査は1日でした。 で、報告書作成に1日、合計2日で終わり。そういうケースもあります。

島袋
そのあとみんなで飯食ってたって言ってましたね。(笑)
なんか短期バイトみたいですね。さくっと。

冨岡
一方で、案件によっては1ヶ月フルに使って調査することもありますし、ものすごい大きい案件だと第1弾のDDをやったあとさらに第2弾をやるケースもあります。
まあ、だいたいは1~2週間ぐらいのケースが多いですね。

島袋
そうなんですね。
長くなっちゃったので、今回はここまでにしましょう。
次回は売却先による違いについて、お話ししたいと思います。どうぞお楽しみに!


出演者

■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役

26歳だった2008年にインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2014年にIPO準備に取り掛かるも、のちに断念。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。「事業は創って売る」がモットー。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。

■冨岡 大悟:TOMIOKA C.P.A OFFICE 代表/公認会計士

KPMG/あずさ監査法人のIPO部に所属。フロンティア・マネジメント株式会社にてM&Aアドバイザー業務等に携わったのち、オーストラリアに駐在。日系企業の海外進出支援、事業開発業務等に携わる。帰国後、TOMIOKA C.P.A OFFICEを開設し、IPO、M&A、資金調達、事業開発等のコンサルティングを行う。IdeaLink株式会社の取締役CFOの他、上場準備会社を中心に3社の社外役員に就任。