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メルカリで経験したM&A|M&A BANK Vol.177

メルカリでのM&Aは?

島袋
今回も弁護士の岡本先生に来ていただいています。
メルカリにお勤めの際に担当されたM&Aや出資案件のことを伺いたいと思います。

岡本
そうですね、メルカリの時はM&Aはそんなにたくさん数があったわけではありません。
というのは、私がいたのは2015年の3月から約4年間なんですが、上場したのが去年(2018年)の6月なんですね。
IPOの審査をしている間に大きいM&Aをやってしまうと、買った新しい会社もまた審査しなきゃいけないので、それで上場のタイミングがけっこう伸びちゃったりするんです。
そういう理由もあって大きいM&Aは正直我慢していたところがあります。

買収したのはザワット株式会社、後はIPOした後にCARTUNE(カーチューン)という車のサービスを運営しているマイケル株式会社ですね。この時は株式交換でした。
ふたつともそんなに規模は大きくはないですが、事業面のシナジーが見込めるM&Aでした。



法務部がいる場合も、外部にDDを依頼する?

島袋
法務DDをメインに担当されると思うんですが、外部の弁護士事務所とかにも依頼して、ダブルチェックのような形を取るんでしょうか。それとも領域の住み分けを決めてやるんですか?

岡本
いろんなケースがあるとは思いますが、やっぱりまずは社内でどういうシナジーがあるのか、買おうとしている会社のプロダクトやチームの相性も含めて、ビジネスサイドやプロダクトチームの人も含めて見ると思います。


ビジネスのシナジーが見込めそうだとわかってきてから外部のアドバイザーをリテインして、法務面や会計面を見ていく流れかなと思います。

メルカリでは私も含めた社内の法務部のメンバーでビジネスのデューデリをやっているときに、リーガル面も簡単に最低限のチェックはやりましたね。
本格的に進めると決まったら外部の人達もリテインしてやってもらうという形でやっていました。



「売ったあと」のことはしっかりすり合わせを

島袋
メルカリくらいの規模の会社に会社や事業を売却売りたい場合は、どういうところが一番重要になるんでしょうか。気をつけた方がいいことってありますか?

岡本
そうですね、結局買った後に事業が連携していくところが重要だと思います。
売る側の会社のキーマンをはじめ、そこにいらっしゃる方々やそのチームが、お互いにとってすごく大事になってくるのかなと思っています。
時にはそれがM&Aの契約書の条件になって、キーマンクローズのような「買った後〇年間はやめないでくださいね」という話になったりします。
そのあたりの相性を含めて、条件面は大事になってくるかと思います。

島袋
キーマンクローズされたところで「やっぱり辞めたい」となってしまう事例ってあるんでしょうか。結局やめちゃった、みたいな。

岡本
そうですね、売った側の会社の人がやる気がなくなってしまって全然コミットしてくれないとなると買った意味がなくなってしまう場合もあると思うので、インセンティブの設計も重要になりますね。
買収価格の払い方や、買った後のインセンティブ、ストックオプションみたいのものをどう出すか。ただ義務として縛るだけだとおっしゃる通りやる気がなくて全然コミットしてくれないケースも出てくるので、やる気にさせるような設計は、買う側にとっても非常に大事ですね。

島袋
そこって法務部がやるんですか?
設計も含めて、人参のぶら下げ方みたいなところも。

岡本
法務部だけだとできないところがあるので、事業部の人たちや経営陣とも一緒に考えますね。
スキームや実際契約書に落とし込むところは当然リーガルが中心ですけれど、この人達とどういう形で働きたいかとか、何を期待しているかというところや、人間関係とか信頼関係みたいなところも含めての話になるので、その辺りは経営陣もしっかり関与してディスカッションしながら決めることが多いと思います。

島袋
その人参のぶら下げ方の戦略のご相談とかはできるん でしょうか?

岡本
はい勿論です、色々なパターンがあると思いますので。

島袋
わかりました。

もうお綺麗でずっと見てらんないので、続きはまた次回ということで。

ではまた、M&A BANKでお会いしましょう!



出演者

■岡本杏莉:日本/NY州法弁護士
慶応義塾大学法学部卒業。西村あさひ法律事務所、スタンフォード大ロースクールへの留学、NYの法律事務所での研修を経て、2015年3月に株式会社メルカリに入社。日本及び米国の法務、大型資金調達やIPOなどFinance/IRを担当。個人でもスタートアップ等へのリーガルアドバイスを行う。2017年12月から法律事務所ZeLoに、2019年2月からトリプル・ダブリュー・ジャパンに参画。

■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役
シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。