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「失敗しない事業」を創る、凡人起業メソッド|M&A BANK Vol.166

15年越しで起業した会社を売却した理由

島袋
「自分がしてきた事を見直せば武器は見つかる。」…なるほどなあ~
今回も「凡人起業」の著者、小原聖誉さんに来ていただいております。

今回は、小原さんが経験されたM&Aについて。
(起業まで)15年寝かせた、大事なウィスキーみたいな会社を3年半であげちゃったわけですが、なぜM&Aをしようと思ったんですか?

小原
根本的な理由は、上手くいかなくなったからです。

島袋
ほうほう。
上手くいかなかったポイントを、もっと詳しく教えていただいてもいいですか?


そもそもの「凡人起業」のメソッド

小原
では、そもそもの事業のご説明からさせていただこうと思います。
私の起業する時のスタンスは「できるだけ失敗をしない事業を選ぶ」というものなんです。

まずは、これから伸びが見込める市場であること
たとえばスマートフォンの普及率が30%なら、まだ伸び代が70%はありますよね。そういったマクロな市場環境。
もう1つは、競争者がいないことをする

島袋
なるほど。

小原
私がチョイスしたのはスマートフォンゲームのマーケティングサービスでした。
「パズドラ」「モンスト」といった昔からのスマホゲームはiPhone と Android の両方に出しますが、スマホゲームのマーケティングやメディアの話になると、App Bank さんなど、ほとんどの会社がiPhoneの方に偏っていたんです。

これはロジックがあるようで実はないと思っています。
単純にその経営者がiPhoneが好きだったり、「iPhoneがAndroidより使いやすいからiPhoneの方がいい」みたいな、頭の中に壁を自分で設けてしまっている状態なんじゃないかと。
結果として、Android側のゲームのマーケティングサービスは当時存在していませんでした。小さいものはあったかもしれませんが、目立ったものはなかったんです。

つまり、スマートフォンゲームの市場は大きく成長していくのは間違いないと思ったんですが、その中で競争者のいないAndroidの方に参入したんです。

島袋
なるほど!面白い。

小原
競争者がいなければ負けることがない。その視点でトライしたんです。

もう1つトライしたのは、「大企業がやらないこと」ですね。

僕が提供したサービスって、ゲーム版ホットペッパーみたいなものだったんです。
ホットペッパーという無料の雑誌には美容院やネイルサロンが載っていてクーポンが付いている。それと同じで、ゲームのクーポンを僕のメディアのアプリから配布したんです。

売れているゲームタイトルはGoogle Play ストアなんかで「トップセールス」というカテゴリーの順位を見るとわかるので、売上が多いタイトルやユーザーさんが多いタイトルを持ってらっしゃるゲーム会社に交渉に行きました。
「ゲームギフトというゲームを紹介するホットペッパーをみたいなものをやりますから、クーポンを下さい」という風に言って、300円で売っているものを無料で仕入れるんです。
ゲームをされているユーザーさんからすれば使わない理由が全くない。
300円を払わなくても、僕のサイトならタダでクーポンがもらえるわけですから。

ゲーム業界には「ファミ通」などいろいろ雑誌もありますが、出版業界全体の売り上げが落ちているので、出版社もいろいろな企画を打って、たとえば付録をつけた本がよく売れました。バックが付いてくる雑誌みたいな感じですよね。
雑誌にゲームのクーポンをつけたら、その雑誌が30万部(1部780円の雑誌)とか売れていましたから。
なので、非常に簡単な話なんですよ。

島袋
簡単っちゃ簡単ですけど、それを思いついて実行するのは凡人じゃないと思いますよ。

そろそろお時間なので、その原則に従った事業がなぜうまくいかなくなって、どうやって売却することになったのか、次回続きを伺いたいと思います。



出演者

■小原 聖誉:株式会社StartPoint-創業者・代表取締役社長

2013年AppBroadCastを創業。創業3年でmediba(KDDIグループ)へバイアウト。medibaにて新規事業役員CBDOを務めたのち、退職。現在はエンジェル投資家として活動。21社に出資し、そのうちの1社アクリートはIPOを果たしている。

【株式会社AppBroadCastのM&A概要】

2016年4月、KDDI子会社で広告事業を中心に展開するmedibaへ株式を売却、連結子会社化。株式の取得数や割合については非公開。関係者によるとバリュエーション(評価額)は十数億円になると言われた。KDDIとは2014年の資金調達、業務提携などすでにかかわりを持っていた。

■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役

シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。