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家業を先代から継ぐときに大切なこと|M&A BANK Vol.161

先代の希望も丁寧に聞いておく

島袋
今日も株式会社Loco Partners川口さんをお招きして、事業承継案件について伺っていきます。

家業の酒屋さんを売却したということでお聞きしたいんですが、弊社IdeaLinkにも家業をやっている従業員がいるので、そういう人たちに向けて事業承継のタイミングでやった方がいいことなど、ぜひアドバイスをお願いします。

川口
そうですね、私の実例を言いますと、実際に商売をやっているのは両親、特に親父の方だったので、まず親父に「事業承継はこういう形で考えているんだけど」という頭出しとか、適宜やりたいことを伝えて、それどうなんだっけ?というすり合わせはすごく丁寧にやりましたね。

親父はそこまで強いこだわりもなく「好きにしたら」という感じでしたが、決めていく中で「これいい?あれいい?」と聞いてみると、要望が出てくることがありました。特に私は実際に商売をやっていなかったので、やっている人の意向は丁寧にヒアリングしないとわからないですよね。
そうすると、先ほど出たような「5年は商売をやりたい」とか「ちゃんとお得意先には丁寧に伝えたい」という要件が出てきたりするので、意志決定者たる両親との丁寧なすり合わせがまず大事かなと思います。
丁寧なコミュニケーションですね。



お互いの要望が叶う形に

島袋
親父さんに「こういう会社が買いたいと言ってるんだけど」と伝えた時は、なんて言われましたか?どういうリアクションだったんですか?

川口
そんなにすごく驚かれるようなことはなかったですね。
実際に先方の会社の社長さんに来てもらって、挨拶したり今後のことを話して、僕が「面白いからやってみたい」と伝えたときは、親父は「ああそうなんだ」という感じでしたね。
基本的に、酒屋を継ぐよりは会計士になることを許してくれる両親だったので、「お前がやりたいならやれば」という雰囲気だったので、強く反発されることはなかったです。

島袋
そうなんですね。

川口
腹を割って話し合うのもそうですし、お酒を持ってきて「これ売りたいんだけど」とやりたい世界を伝えてあげたり、彼にはこの免許が必要で、それなら一緒にやろうと思っていて、ただお父さんのビジネスはこういう形で担保するからねと説明したりしました。お互いwin-winの関係にはなれたかなと思います。

変なすれ違いはよくないと思うので、ちゃんとお互い言いたいことは言って、スキームとかちゃんと解決していく方法を考えて、実家も先方も含めたお互いがwin-winな形になるようにすることが大事かなと思います。



代々受け継いだ家業も「資産」のひとつ

川口
あとは事業承継という点で真面目な話で、自分で継ぐのかというところについて。

僕の場合は、DeNAの先輩に実家を継ぎながら今の会社でも働きたいという話をした時に、免許のことを知ったその人から「川口くん、それは重要なアセットだよね」と言われて、「たしかに」と思ったんですよね。それまで実家の免許をアセットとして見たことなかったんです。
実家の免許は売れる自分でやらなくていい、売ればいいんだと、発想が広がって視野が変わりました。

実家を売るのは精神的・気持ち的に葛藤はあったんですが、会計士をやっていた自分はある種ドライに見れて、箱が変わるだけだと納得できるところもありました。
それに、うちの免許が日本酒業界の未来に繋がるということもあって売りましたね。

気持ち的な葛藤はあるんですが、それで「自分がやらねば」となると視野狭窄になっちゃうから、ちゃんと実家をDDして、どれがアセットなのかを明確にすれば違う選択肢も見えるかなと思いました。

島袋
すごい、会計士になったことが生きましたね。
どうもありがとうございます。では、今回はここまでです!
次回はさらに、売却に至るまでの手続きについて伺いたいと思います。


出演者

■川口 達也:株式会社Loco Partners-経営管理部 ゼネラルマネージャー(現:部長)/公認会計士

小売酒屋の長男として生まれる。新卒でディー・エヌ・エーの経理部に配属され、同年に公認会計士の論文式試験に合格。2017年、株式会社Loco Partnersへの転職を契機に実家の小売酒屋の再建に着手し、2018年に株式会社Clearに株式と旧酒販免許を譲渡。NPO法人3keysの支援も行う。

【有限会社 川勇商店のM&A概要】

川口達也氏が3代目となる、創業50年超の小売酒屋。通信販売でも事実上制約がない酒販免許の旧免許を保有していた。2018年に、日本酒専門WEBメディアSAKETIMESを運営するClearが発行済み株式の全てを取得し、同社を完全子会社化した。

■島袋直樹:IdeaLink株式会社-代表取締役

シリアルアントレプレナー。26歳でインターネット広告代理店を創業、年商20億円規模に成長させる。2016年に同社を分社化し、インターネットメディア運営を主体とするIdeaLink株式会社を創業。2017年12月、自社メディア5媒体を上場企業に事業譲渡。「事業は創って売る」をモットーとする。「会社は伸びてるときに売りなさい。」の著者。