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ベランダから雲を眺めていたらなんとなく先がないなあと思えてきたので首を吊ってみるとあっけなく意識がなくなった。死んだのかなと思ったら遊園地のベンチに座っていた。陽が落ちかかる海、はしゃぎ疲れて父親の腕で眠る子供、恋人の肩にもたれる娘などを見ていると、さっきまで感じていたことのすべてからリアリティが失われていって、あれは夢だったのかななんて思った。遊園地に来るのは久しぶりだった。子供の頃は未知の王国のお祭りに招待されたようで楽しく感じたけれど、いまは人間の顔がたくさんあって不愉快なだけだった。とはいえ、このままこうしていても仕方がない。わざわざ長い列に加わって馬鹿の仲間入りをしたら、散々待たされたけれどなんとかジェットコースターに乗ることができた。出発前に係りの人が確認したにも関わらず安全バーは簡単に上がった。コース上の一番高いところでサッと飛び降りた。次に気がついたときには海岸にいた。辺りにはゴミが散乱していた。海水も濁っていて汚い。それが人間の結果だと思うと妙に納得できた。日差しが強くて無性に暑い。やることはひとつだ。一直線に泳いでいって、体力がなくなったらそこで終わりにしよう。そう決意して泳ぎ始めると、身体だけが先に行ってしまった。ぼくはその後方やや上のあたりからその姿を眺めていた。

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