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雑誌の取材で安彦良和さんを訪ねた時の話

 「Ministry」の創刊早々、「ハタから見たキリスト教」の連載でどうしてもお会いしたい“巨匠”がいた。「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザインを手がけ、後に福音書をベースに独自の解釈によるイエス像を描いた漫画家・安彦良和さんだ。

 ダメ元でアタックした取材依頼に対し、どこの馬のホネともわからない弱小媒体にもかかわらず、手書きのFAXで丁寧な返事が来たときの衝撃は忘れられない。

 取材は安彦さんの自宅で行われた。さすがに一人でうかがうのは気が引けたので、すでに業界内ではイラストレーターとして活躍されていた友人の高田ゲンキさんもお誘いし、緊張に手を震わせながらインターホンを鳴らした。

 アニメ界であれだけの成功を収めたレジェンドにもかかわらず、まったく偉ぶることもなく、こちらが恐縮してしまうほど低姿勢で、愛犬と戯れながら気さくに話してくださった姿に、心底感銘を受けた。以下、当時のブログ記事を転載する。

安彦_高田_松谷

(2009年8月17日 ブログ「松ちゃんの教室」より)

 またまた「週刊金曜日」(2009年8月21日)763号 中山千夏の名文から。

「今の日本漫画やアニメのブームは、完全にアンポンタン国の仕掛けだよ。……『漫画オタク』を自認する麻生総理が、自分の趣味だか思いつきだかを国家権力で押し通し、そのまわりに業者やら芸能者やらがわっと群がり、世界へ進軍する図柄がまざまざと浮かび上がるではないか」
「国家権力に後押しされてメインになっちゃったら、それはもうサブでもポップでもないじゃん。そんなとこに群がるなよ。周縁でまったりオタクやろうよ」

 おそらく、いわくつきのハコモノ「マンガの殿堂」も念頭に置いたなかなか鋭いご指摘。

 先日、念願かなって夢のインタビューを実現できた、かの安彦良和氏もまったく同じことを言っていた。「当時、ガンダム(を含めたアニメなどのサブカル)なんてゴミでしたよ

 自らがキャラクターデザインを手がけ、今なお『ガンダムORIGIN』を執筆中の氏自身が断言する。そう。あくまでサブであることにこそ価値があるのであって、それに国家やら役人やらが介入してメインになった途端、その魅力は損なわれてしまうのかもしれない。

 ともあれ、一部マニアからは神のようにあがめられ、数々の名作を世に残した巨匠とは微塵も感じさせない腰の低さと謙虚さには、つくづく感心させられた。「僕は絵が下手だから、上手いヤツ見ると嫉妬しちゃうんだよねぇ」と苦笑いしながら、実に丁寧に、一つひとつ質問に答えてくださった。感謝!

 ちなみに僕と安彦ワールドとの出会いは、大の安彦ファンだった中学時代の友人A君の描く絵。A君も羨ましいほど絵が上手かった。そして、マイナーではあるが、『異次元騎士カズマ』シリーズ(王領寺静=藤本ひとみ著)の挿絵。その肉感的なタッチは、中学生だった僕にはかなり刺激的だった…(恥)。

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