数年ぶりの「カルテット」

TBSドラマの「カルテット」がとても好き。過去形じゃなくずっとたいせつに好き。放送していたその頃久しぶりに日本のドラマのために次週を待ち遠しく感じていたし、リアルタイム鑑賞もしていた。友人たちと一気見の会を主催したり、最終回はまた別の友人の家でから揚げを用意してもらって全裸待機した。(嘘です服は着てました)

当時の私は私生活が順風満帆とは行かず、表向きは幸せな状況であるはずが精神が非常に荒んでおり、ひとを好きになるってなんだろうとか結婚ってなんだろうとか色々に迷っていたこともあり、「カルテット」の見せてくれた多様な人間関係は心にとてもよく刺さった。毎回よく泣いていた。つらい涙も安堵の涙も幸せの涙も。

それから数年が経過して、今の私はありがたいことにとても幸せで、ひとを好きになるってなんだろうという悩みからは解放されている。その、私の私生活と精神を潤いのある豊かなものにしてくれているひとが「カルテット」を見たことがないと言うので、Blu-ray BOXを引っ張り出してきて少しずついっしょに見た。
相変わらずよく泣いた。相変わらずとても素晴らしいドラマだった。
やはりあの頃と感じ方はちがう気がするけれど。昔のことを思ってつらくなったり今のことを思って安心したりした。

このドラマのキャッチコピーは「大人の恋は、やっかいだ」だったけれど、ただのラブストーリーではないし、サスペンス要素はあるけど救いようのない苦しさはない。人間関係にはいろいろな形があって他人がとやかく言うことではない、そんな包容力を感じさせるドラマだ。誰が悪いとか悪くないとかいうことではなく、これが正しい形だと思っていた関係性が変わっていくことはある。ひとってなかなか変わらない。ひとって変わっていくもんだ。どちらも真理。終わりの瞬間だけで過程を全否定できないように、決別、別離という形を取ったり失恋という形を取ったりしても、必ずしもぜんぶが悲しい関係だったというわけじゃない。傷ついてもさみしくなっても、その過程に楽しい日々があったら、幸せだったと言ってもいいんじゃない。
片思いだって恋でしょ、というのは私の好きな漫画でゲイに恋した女の子が放つかっこいいせりふ。

もちろん最後まで幸せいっぱいの日々で添い遂げられた関係はすてきだ。カルテットを観ていると、わかりやすく「結ばれました」というカップルは出てこないかもしれないけど、みんなそれぞれ幸せだ。恋じゃなくたって友情だって家族愛だって趣味愛だって仕事愛だって、幸せになる道はいくらでもあるし、ひとつだってたくさんだってかまわないのだ。


美味しいごはんを食べているときに「もっと食べたいけど、食べたらなくなっちゃう」などと当然のことを思って切なくなるけど、おもしろいドラマを見ているときも同じ気持ち。もっと見たいけど、見たら終わっちゃう。
そのうちまた、たいせつに好きと思える作品に出会いたいな。


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