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渋谷区令和5年度予算案に対する議論について

2−3月の議会は、新しい年度の予算案を審議し、可否を決定します。
審議した予算については会派を代表し、賛成の討論しました。
どんな観点で、賛成としたのか?以下、まとめましたのでぜひご覧ください。

1:全体を通して

 令和4年度はWithコロナが定着し、だいぶ日常生活が戻り、地域のイベント等も開催されました。また、渋谷へ訪れる海外からの観光客なども増え、まち全体に活気が戻ってきました。一方で、長引くロシアによるウクライナ侵略や円安等の影響で、光熱水費をはじめ物価高騰が進んでおり、一般家庭はもとより区が運営する施設でも大きく影響を受けている状況です。

 さて、令和5年度の一般会計予算案ですが、歳入歳出予算額は1,126億2,800万円と、前年度の予算に対して、63億6,100万円、前年比6.0%の増です。歳入に目を向けますと、一般財源の大宗を占める特別区税は、569億2,631万4千円となり、額にして34億5,539万1千円、率にして6.5%の増収となっています。

主だった歳出の構成を見ますと、物価高騰など喫緊の課題に対する予算の計上はもちろんのこと、「ひとづくり」「まちづくり」など未来への投資も積極的に行っており、シティプライドを持った渋谷民がつながり、共創できる仕組みやまちづくりに予算を割いている点をまず評価したいと思います。

 さらに、未来の学校プロジェクトをはじめとした公共施設の大規模な長寿命化計画も踏まえ、基金に大きく依存することのないバランスの取れた編成になっている点も評価いたします。

複雑化する区民ニーズや不安定な国際情勢、物価高騰等を鑑みた予算案には相当の苦心があったものと拝察いたします。

 以下、基本構想の分野に沿って、シブヤを笑顔にする会の提案で盛り込まれた事業を中心に評価のポイントをまとめます。

2:子育て分野について

 一点目は、特別な支援が必要な児童へのサポートが拡充され、1億3,300万円が予算化されます。子ども発達相談センターに保育所等訪問支援ができることにより、保育園や幼稚園・小学校や放課後クラブなどへ、アウトリーチ型の発達支援事業を拡充できます。また、障害者福祉センター 代々木の杜ピア・キッズが、令和5年10月に待望の児童発達支援センターとなり、給食提供や送迎などが導入され、職員数も増やして、機能をより強化していきます。 全ての子どもたちに取って、インクルーシブな育ちの環境を作る起点になる事業と大いに期待しております。

 二点目は、高校生等の医療費無償化がスタートする点で、約1億1,300万円が予算化されます。待望の18歳までの医療費助成の拡大ですが、既に就職されている方や社会的養護の元にある方々への周知と助成漏れがないよう、丁寧な対応を要望します。

3:教育分野について


 一点目は、未来の学校プロジェクトに約8億7900万円の予算を投じる点です。青山病院跡地での仮設校舎建設が進みますが、未来の学校を具現化できる最先端の学び舎となるよう、計画を進めていくという発信が教育委員会からもありましたが、大いに期待しています。水曜日の午後を教職員の研修にあてるなど、ソフト面の改革も令和5年度は行われます。未来の学校プロジェクトが目指す学びのあり方が建物ありきで実現されるのではなく、やれることは既存の学校でもチャレンジいただくことを期待します。また、建て替え準備委員会が設置された学校においては、委員のみならず、子どもたちや教職員、保護者、地域の方が幅広く参加し、対話を通じて意志をまとめていけるような場を企画していっていただければと思います。

 二点目は、不登校支援などの強化についてです。教育センター運営に約2,800万円予算化しています。令和6年度に文化総合センター大和田に移管されるけやき教室をはじめ、東京大学先端科学技術研究センターとの新たな取り組み、東京都のバーチャルラーニングプラットフォームなど、あらゆる手段をいかして、支援が拡充されること大変評価しております。子どもたち一人ひとりに寄り添った学びのあり方を提案していけるよう取り組んでいくことを要望します。

三点目は、物価高騰による給食費の支援に関してです。小中学校合わせて、約2500万円、食育の観点で実施しているワンダフル給食に関しては、約2900万円を予算化しており、評価しております。学校給食費無償化については、救貧政策 から子育て支援政策に転換するべきとの世論が高まっており、我が会派も主旨には賛同します。しかしながら、まずは国会及び政府が、学校給食費の無償化を国の政策に位置付け、学校給食法の改正と自治体への財政的な支援を行うべきと考えます。
保護者の方々からは、こんな時だからこそ、材料費の負担はそのままでよいので、子どもたちへはさらに安心・安全な食材をいかした給食提供してほしいといった声も多くいただいています。引き続き、子どもたちに安全安心で美味しい給食提供を行っていただくよう、お願いします。

4:福祉分野について

 一点目は、重層的支援体制の整備事業に約7,600万円の予算を投じる点です。令和5年度からはいよいよ本格実施に向けた年になります。福祉なんでも相談窓口の新設、地域福祉コーディネーターに生活支援コーディネーターを兼務させた上での13名体制の増員、文化総合センター大和田に重層的支援体制整備事業に関わるNPOや地域団体等が活動できる場を開設し、連携を強化していきます。これまでの体制では課題が複雑化し、解決が困難だった方々を切れ目なく支援する体制になるということで多いに期待しています。

 二点目は、高齢者デジタルデバイド解消事業に関して、約7億3,000万円を予算化している点です。R5年度の8月には2年間のスマホ無料貸与事業が終了します。実証事業が終わった後も、丁寧な支援を行っていくということでデジタル活用支援員の増員を行い、スマホ講座、なんでもスマホ相談、スマホサロンの実施などを継続的に行っていくことは評価いたします。実証事業の結果、ログなどのデータや利用者アンケートなどを踏まえて、本事業が高齢者のQOL向上に資する活動であったかの分析も丁寧に行い、以後の事業へつなげていくことを要望します。

 三点目は、障がい者のコミュニケーション支援費として、約2,200万円が予算化されている点です。遠隔手話通訳を障がい者福祉課の窓口以外にも地域の出張所や保健所などに配備します。本区では、「手話言語への理解の促進及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関する条例」
が令和3年4月に施行されています。条例に則って、さらにインクルーシブな環境が推進されると評価します。

 四点目は、医療的ケア児を含む放課後等デイサービス支援事業の助成として、600万円予算化されている点です。区内で放課後等デイサービスの数をもっと増やしてほしいと声が多い中、事業者が設置しやすい助成制度は誘致にも大変有効と期待します。

5:健康・スポーツ分野について

 一点目は、感染症予防として、帯状疱疹予防ワクチン助成が新規でスタートすること、子宮頸がん予防ワクチン事業に関しては9価ワクチンに拡大することなどで、約3億2,500万円を投じる点です。帯状疱疹予防のワクチンは、治療の長期化が情緒や身体的機能に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすことがあるため、ワクチンを接種し、発症を抑制することが出来ます。子宮頸がん予防ワクチンは、待望の9価ワクチンが追加されますので、ぜひ未成年者の接種に関しては特に、ワクチンをなぜ打つ必要があるか、ワクチンの種類などを丁寧に説明し、親子で理解促進するための対応強化をお願いします。男性の接種も助成が進むよう、要望します。

二点目は、一般社団法人渋谷ユナイテッドの事業費に約2億800万円の予算を投じる点です。これまでも生徒の新しいニーズを踏まえたフェンシング、ボウリング、ダンス、ボッチャなどの運動部、eスポーツや将棋、料理などの文化部を立ち上げ、区内中学校一体で実施してきました。R5年度は既存部活動を地域移行するために、地域移行モデル校を2校設置、民間クラブとの連携で運営していく「ジョイントクラブ」事業、総合型地域クラブの自主事業の発展に取り組みます。ゆくゆくは、誰もが生涯にわたって、スポーツや文化活動を楽しめる総合型地域クラブへ発展させていく取り組みであり、この動きも未来の学校プロジェクトとも連動する取り組みとして期待します。

6:防災・安全・環境・エネルギー分野について

一点目は、安全安心パトロール警備事業に関する取り組み約1億9,900万円の予算化についてです。本区は、刑法犯認知件数が令和4年度は23区で6位となっています。我が会派でも商店会をはじめ多くの区民から、路上飲酒に起因するゴミの放置や騒音の問題解決の要望をいただいていました。青色防犯灯付きパトロール車や徒歩によるパトロールを強化することで、区民及び来街者の治安向上と安全安心を確保する事業ということで大変期待しています。業務従事者が毅然と現場対応が出来るよう、育成などにも力を入れるよう要望します。

二点目は、省エネ家電買い替えやエネファームの購入等を助成するために、約2,300万円の予算を投じる点です。カーボンニュートラル達成には、 「省エネ製品の選択」「エネルギー調達の選択」「所有から使用への選択」 など、ひとりひとりが意識を変え、環境のための選択を重ねていくことが不可欠です。本政策は「シブヤ若者気候変動会議」で議論されたアイディアで、 早速予算化されたことも大変評価しています。責任ある大人として、未来を担う子どもたちに現役世代の私たちのつけを残さないよう、今後も積極的な環境政策に取り組むことを要望します。

7:空間とコミュニティのデザイン分野について

一点目は、令和2年度から延べ559名の方々に参加いただいた「ササハタハツ会議」や「出張座談会」、仮設ファーム、ササハタハツファームβなど行ってきた、玉川上水旧水路緑道の本格工事や電線地中化の詳細設計がスタートします。幡代小学校前のスペースの利活用で区民からお声が強くあがった子どもたちの遊び場の確保はしっかりと対応し、走り回ったり遊具で遊べる空間を確保するという点を高く評価致します。また、公共トイレの整備に関しては、様々な事情のある方に配慮をしたインクルーシブなトイレの設置を進めてきました。今後は、さらに防犯対策を強化し、専門家にも意見聞くということでしたので、全ての人が安心して利用できる公共トイレ環境作りを期待します。

 二点目は、ふれあい植物センターリニューアル約4億4,100万円の予算を投じる点です。渋谷清掃工場の地域還元施設として平成17年度より運営してきたふれあい植物センターが、農と食の地域拠点として令和5年度夏にオープンします。指定管理予定者は地域で多くの会員によるコミュニティ運営に実績があり、新しい緑の拠点での地域コミュニティ形成に期待が持てます。安定した運営が行える体制を整えてオープンできるよう、区もサポートすることを要望します。地域に日常的なつながりを生み出し、持続可能な街をつくることに寄与すると期待します。

 三点目は、本定例会でも上程された「渋谷区自転車を活用したまちづくり条例」や自転車活用推進計画に基づいて、様々な自転車まちづくり施策が約1億5,000万円の予算を投じて、展開されます。多様な主体による自転車まちづくり推進組織をつくることで、地域ルールを定めることが出来る、本邦初の条例制定で画期的であると評価いたします。歩行者、自転車、自動車がより安全安心に、快適に通行できる環境整備や意識啓発を行っていただくこと、事業者への働きかけや警察との連携も期待しています。今後、我が会派が提案してきたヘルメット購入助成なども前向きに検討いただくことを要望します。

8:文化・エンターテインメント分野について

令和2年度より明治神宮の鎮座100年を契機として首都高高架下施設の整備を行う西参道プロジェクトで進めてきた「駒テラス西参道」ですが、工事も竣工し、令和5年夏へ向けてオープンの準備が進んでおり、約2,000万円の予算を投じています。道路や公園、町会や消防団の施設もきれいになり、近隣住民の方の期待感も高まっています。今後、日本将棋連盟が管理・運営に入り、将棋を通じたまちづくりを推進していきますが、将棋文化の発信はもちろんのこと、地域から要望としてあがっている多世代をつなげるコミュニティ形成にも寄与する施設運営をお願いいたします。また、公園などは夏を待たずに区民への開放を行うよう、合わせて要望いたします。

9:産業振興分野について

一点目は、デジタル地域通貨事業ハチペイに約4億9,000万円、予算化している点です。コロナ禍における様々な事業者支援の課題感から生まれた持続的に産業振興を行っていく新しい取り組みとして立ち上がりましたが、令和5年3月6時点では、ダウンロード数72,219、加盟店舗数2,500店舗と短期間で大きな成果を出しています。コミュニティコイン「ハチポ」と「ハチペイ」の連携も令和5年度は進むということで、コミュニティの活性化や地域活動の促進への効果も期待します。

二点目は、スタートアップ支援事業の更なる進化に、約3億2,000万円の予算を投じる点です。実証・実装での具体的な課題解決型事業が区内で複数立ち上がっていること、世界と比較した際の課題点を解決するため、起業家を育成するアクセラレーター組織やスタートアップ企業が集えるオフィスを設置するなど、これまでの活動を評価します。R5年度は海外起業家へ向けての起業や生活支援のサポート、2月に設立されたシブヤスタートアップス株式会社の設立によって、グローバル化が促進されます。web3や投資に関する規制緩和などにも取り組んでいくということで様々なビジネスが発展しやすい環境や、海外から呼び込んだ高度人材と区内のスタートアップが交流することでイノベーションが起こりやすい環境を構築することで、区民福祉の増進に資することを期待します。

 9:区政運営分野について

スマートシティ推進事業に約1億6000万円の予算を投じる点です。令和3年度に策定された「渋谷区スマートシティ推進基本方針」に則って、令和5年度は「シブヤ・スマートシティ推進機構」を法人化、地域投資モデルの構築や地域データの共同活用も推進されます。予測不可能な時代に突入し、社会課題が複雑化し、区民のニーズも多様化しています。それに応えていくためには、産官学民の連携を強化し、デジタル技術やデータ活用をいかした対応は重要と考えます。このスマートシティ推進事業はその根幹になる重要な事業です。住民1人1人のWellbeingを生み出すため、他部署や事業主体になる企業や団体との連携しながら、具体的なアウトプットが生まれることを期待します。

 以上、述べましたように、令和5年度渋谷区一般会計予算は、喫緊の課題にスピーディーに対応しながらも、未来への投資に多く予算を割いている点、また数々の先進的な取組と共創できる仕組みや人づくり、まちづくりに注力している点を高く評価しております。

 侍ジャパンもWBCで接戦を制して、世界一になり、日本中に元気と勇気をもたらしてくれました。渋谷区も日本を強くリーディングし、元気にしていく自治体であると認識しています。だからこそ、守りはもちろん徹底しながらも、常に攻め続け、高みを目指していくべきと申し述べさせていただきます。


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