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第3章 あらためて考えるまちづくり人の心構え

 「これまではうまくいっていた」が通用しなくなり、まちづくり活動においてもこれからどのように進めるべきか悩む方も多いでしょう。新たなやり方を模索するとき、先進事例はもちろんヒントになりますが、悩んだときは根本に立ち戻ることが大切。当たり前だったことを見直してみたり別な視点で捉えてみると、身近なところに解決の糸口があったりします。第3章では、これからにも活かせるまちづくり人の基本的な心構えを再確認します。

第1章では全6話(No.1〜6まで)は¥200で、
第2章で全3話(No.7〜9まで)が¥100でお読みいただけます。


10.今までの延長でまちづくりを考えない

 総務省統計局によると、2011年(平成23年)が継続して人口が減少する社会の始まりの年、つまり人口減少社会「元年」だと言われています。そして、令和3年度高齢社会白書によると、高齢化率(総人口において65歳以上が占める割合)は、2020年時点でなんと28.8%。この数値、世界の中でもダントツトップの値です。

 人口が減少局面となり、著しく(しかも急激に)高齢化が進展しているこの状況、実は世界のどの国も直面したことはありません。つまり前例が無い状態なのです。時々、「前例が無いからできない…」なんて台詞を耳にしますが、もうこんな言い訳は一切通用しません。だって、世界中どこにも「前例は無い」訳ですから・・・。嬉しくありませんが、日本の社会・地域の状況は世界の最先端を走っているのです。

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 これまでとこれからは違う。まちづくりにおいても、これを根幹に据えて物事を考えていくことが不可欠です。今までの当たり前が、これからも当たり前ではなくなります。前提としている地域・社会の状況が大きく変わる訳ですから、まちづくりの考え方・やり方も変えていく必要があります。右肩上がりの時代ではうまく機能していたやり方・方法も、これからは通用しなくなります。過去の成功体験に囚われたまま、「○○はこうやるものだ!」という思考停止の状態は、これからの時代、非常に危険です。気がついたら、茹でガエル状態になってしまいます。

 それゆえ、これからのまちづくりは、今までの延長線上で物事を考えるのではなく、冷静に現状と将来の見通し(それがどんなに厳しいものであっても)を直視し、より良い方向に向かうためには何が必要で、何をしていくべきかを根本から考えるようにしましょう。前例が無い、つまり何が正解かがわからない時代を、私たちは前に進んでいかなくてはなりません。確かに、先が見えない不安感は多分にありますが、私たちは未開の地を切り開いていく開拓者でもあるのです。


11.変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから

 まちづくり学校の初代教頭(=副代表理事)であった清水義晴さんが、2003年に執筆された著書のタイトルは「変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから」。大きな転換期を迎えている今の社会において、このフレーズどおりの現象が加速してきています。

 人口減少・少子高齢化が急激に進展する状況下で、いち早く衰退しはじめるのが中山間地域の小さな集落です。中心部から遠く離れた外縁部の末端から、ジワジワと進行していくこの現象。ただ、こうした状況下のところから、革新的な取り組みは生まれたりします。

 中心部から離れており、利便性も高くはなく、住んでいる人も少ない。現状では、官からの支援はあまり期待できない。ならば、弱さを絆にしてつながり、社会的な仕組みが無ければ、自分たちでつくりあげよう。

「自分たちの地域は自分たちでつくる。」

 覚悟を決めた住民たちが、前例に囚われずに考え、知恵と工夫、そして小さな実践の積み重ね、道なき道を切り開いていく。地道な実践の蓄積が徐々に変革となって具現化し、周囲から注目されるようになって徐々に社会に広まっていく。事例という形で紹介されている取り組みの大半は、こうしたプロセスだったりします。

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