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【マチマチ対談】執着心と自分だけが知っている大切な真実(後編) -有安伸宏(エンジェル投資家)

「投資家から『この領域はナシじゃない?』といわれたら、起業家にとってはチャンスかも──」そう語るのはエンジェル投資家の有安伸宏氏(写真左)。

先日公開された前編に続き、後編にあたる本記事では、マチマチのユニークネスや、サービスへの期待について語っていただきました。

有安 伸宏 起業家/エンジェル投資家
ユニリーバ・ジャパンを経て、2007年にコーチ・ユナイテッドを創業。2013年に同社の全株式をクックパッドへ売却。2015年にTokyo Founders Fundを共同設立。米国シリコンバレーのスタートアップへの出資等、エンジェル投資も行う。投資先はマネーフォワード、キャディ、Kanmu、MaterialWorld、レンティオ、WAmazing等、日米約70社。2018年に国内初のスカウトスキームを採用したJapan Angel Fundを共同設立。慶應義塾高校・慶應義塾大学SFC卒。

時間がかかること、みんな失敗していること。だから面白い

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ーー有安さんの目線で地域活性化をテーマに「マチマチ」を創業した六人部さんはどのように映りましたか?

有安:第一印象としては「そこいくんだ!」と思いました。六人部って商売として手堅いところだったり、お金になりそうなことをやる印象でした。

インターネットによるユーザーコミュニティ領域が成熟期にある中で、あえてローカルにフォーカスした「マチマチ」は時間がかかるし、成功事例もそう多くない領域です。過去に様々なサービスが失敗していて難易度が高い領域だから、そこに飛び込んでいくのは面白いなー、気概あるやん、と。素直に意外だったけど。

六人部:それ、みんなに言われますね(笑)。

マチマチを始めるときには、二度目の起業だからこそ、より社会に大きなインパクトや価値を提供できる領域をさがしていたんです。

短期的にわかりやすい成果がでるような領域もあったんですが、あまり心惹かれなかったんですよね。他の人ができるのであれば、その人たちに任せればいい。自分である理由が強い領域が良かった。

ここ数年で社会的な課題解決に取り組むスタートアップも少しずつ増え、機関投資家から資金も流れつつあります。マチマチが取り組んでいる「ローカル」も数兆円単位の大きなマーケットであり、社会にとって絶対に必要なものだから挑戦してみようと思ったんですよね。

始めた当初は半信半疑だったものがやればやるほど確信に変わってきています。毎日楽しいです。

有安:僕は自分を「ユースケース主義者」だと思ってる。ユースケ大好き。別の言い方をすればProduct Market Fit(PMF)を見つけることが好きだし、ありなしを判断する経験が比較的たくさんあったんですよね。

ユースケースって、事業者自身が試行錯誤することは当然必要なんだけど、それ以上にユーザーが独自に意味づけをして、使い方を発見してくれることがすごく多い。マチマチの場合、ユーザーが見つけてくれている使い方ってどんなものがあるだろう?明確な答えは僕もユーザーも持ってないし、事業者側にもない、だから難しい。事業を進めるうちに創発的に見つかっていく、言語化されていくもので、アートに近い思考ですよね。

マチマチは、いい意味で、とてもおもしろい社会実験なんですよね。

クレイグズリスト(編集部注:米国発のクラシファイドサービス。1995年創業。2018年時点で売上10億ドル、従業員50人)が、あの簡素なUIながらもローカルインフラになったのはインターネット黎明期だったあの時代だったからなんですよね。当時とは打って変わって、スマホが普及して、常時ネットに住める感覚がマスユーザーに広まった現代でマチマチがどんな化学反応を引き起こすか、本当に楽しみです。

周りの声に引きずられない、徹底した独自路線

ーー有安さんが今後の「マチマチ」に対して期待する点はどんなところですか?

有安:ユーザー価値を作って欲しい、見つけてほしい。事業として安易な道へ逃げず、今あるパッションを貫いてほしいな。短期的なマネタイズやうわべのユーザー獲得に走る「ご近所サービス」はこれまでもあった。そういう古いサービスに引きずられないでほしいですね。とにかく独自路線で、虎視眈々とやっていくことに期待してます。

六人部:事業をやると多くの人が良かれと思って、多くのアドバイスをくれます。また、他社の情報も耳に入ってきます。しかし、それって、安易な責任のない意見が多かったり、信念のない単純な模倣になってしまうことも多い。

自社の事業領域の一次情報に触れているのは当事者である起業家だし、24時間の自分の事業のことを考えています。その事実を踏まえた上で、アドバイスや他社の情報を解釈すべきですね。

有安:六人部は、意外と空気を読まない力あるよね。KY力。

六人部:まあ、リスクとって自分で起業しているのに人の意見に振り回されているのは勿体ないですよね。

マチマチのケースでいうと、「子育て中の女性に特化しろ」ということは投資家や知人に言われることが多かった。たしかにセグメントを一部のユーザーに絞ればマネタイズはしやすくなるし、ユーザーも囲いやすくなる。でも僕が「やりたいこと」はそうではないし、マチマチにしかできないことではなかった。

あくまで解決したいのは「地域の課題」なんです。だからこそ今のマチマチはママに絞らずに、地域の課題を解決するために何ができるかという視点で事業を作っています。

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有安:そうそう、短期的なビジネスは簡単だしいろんな意味で「お手軽」だけど決して面白くはない。起業家は現実主義者であると同時に魂のこもった理想主義者でもあるべきなんですよね。

自分が決めた領域をブレずにやりこむこと。そこに人は惹かれるし、事業としての意義が肉付いてより強固なものとなる。「マチマチ」が成功する先は前人未到だからこそ、そのスタンスで突っ走ってほしいなと。

GoogleMapでも得られない新しい地域のつながり

有安:今、Google mapが半端ないんですよね。食べログなどがけっこうピンチという記事が少し前に出ていました。カーナビ業界などもそうGoogleMapが全てを飲み込んでいくような勢いがあります。人がどこかに「行く」ときに、必ず地図が必要になるからなんですよね。

「ご近所の情報を得る」という観点でこのGoogleMapの牙城にいかに切り込めるかが鍵になる。じゃあ何が鍵になるのかというと「地域の人間的つながり」、ソーシャルグラフのDBなんじゃないかなと。

事業数値みたいに目に見えるものと、目に見えないものがある。マチマチの場合、本質的には目に見えない「地域のつながり」といったエモーショナルかつ実名のソーシャルグラフが鍵になる。

PVや売上を伸ばすだけなら簡単だけど、マチマチという居場所を愛してくれるユーザーをどう伸ばすか、そのコアアクションは?どう伝播させるか?Googleも持ってない優れたソーシャルグラフDBはどうすれば構築されるか?こういった議論を考え抜くことが大事。

六人部:これはすごくわかります。集まるデータの量でみれば、今この瞬間Googleには勝てない。でもGoogleでも解決できていないことがあって、それが地域のコミュニケーション。つまるところ「地域のつながり」だと思います。

実際のユーザーにインタビューをしても「他にはない私が知りたい近所の情報がある」「近所の知り合いができた」というポジティブな声が多いです。

有安:マチマチが浸透する以前にはなかった「新しい地域の交流」をもっと生んでいくことが戦略、無消費者セグメントの開拓だと思っています。そこから発生する「愛着」みたいなものって、見えづらいからこそ奥深くて面白いんですよね。

KPIがシンプルな事業、例えばECとはケタが違う。その複雑性に対峙し、見えないけど大事なものを追いかける姿勢を応援したい。

六人部:マチマチが新しい地域の交流を生んでいくことは我々の戦略であると同時に、社会からの要請なんですよね。それはどういうことかというと、次の地域コミュニティの形が、今ちょうど模索されている時期なんです。

農村社会に代表されるようなしがらみの強い地域の付き合いがあり、それを嫌がった世代が都市に出てきて、希薄化した地域の付き合いが増えました。
しかし、防犯、防災や子育て、高齢化など「地域のつながり」が必要とされる場面はまだまだ多く、今後もなくならない。その中で、今の人達にあった新しい地域の交流がいろいろと模索されているのだと思います。

マチマチ自体は、あくまで「近所の情報を得ることができる」「近所に自分と合う知り合いができる」といった体験を提供していきたい。「地域のつながり」の形の一つの解を提供するのではなく、多様なものが生まれてくると良いなと。

サービスをスケールさせるだけでなく、その先にある「ひらかれたつながりのある地域社会をつくる」ことを目指して行きたいです。

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