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労働審判と民事訴訟の違いとは?

今回は、労働審判と民事訴訟の相違点について述べていきます。

まず、費用面での違いです。訴訟にかかる費用については、【本人訴訟で未払い残業代を請求する(3)】で解説しました。民事訴訟なら「訴訟費用+実費+弁護士費用」となるところ、労働審判では「申立て費用+実費+弁護士費用」となります。そして、労働審判を本人訴訟で申立てる時の費用は「申立て費用+実費」のみ。

とりわけ、民事訴訟の「訴訟費用」と労働審判の「申立て費用」。両方ともに、基本的には収入印紙代+郵便切手代の合計と考えてください。この時、労働審判は民事訴訟のほぼ半額の収入印紙代。また、民事訴訟では6000円分の郵便切手を予納する必要があるのに対して、労働審判は3060円分の郵便切手の予納となります。

例えば、民事訴訟ないし労働審判で相手へ請求する額が300万円としましょう。このとき、民事訴訟の印紙代は2万円、予納郵便切手が6000円なので、民事訴訟にかかる費用は合計2万6000円です。一方で、労働審判の印紙代は1万円、予納郵便切手が3060円なので、労働審判にかかる費用は合計1万3060円となります。

費用面から見る限り、民事訴訟よりも労働審判の方がお得ということになるようです。

次に、審理の体制の違いです。労働審判では、民事訴訟の原告に相当するのが「申立人」、被告に相当するのが「相手方」です。申立人と相手方をあわせて「当事者」と呼びます。当事者はそれぞれ代理人弁護士を同席させることができます。地方裁判所の民事訴訟では1名の裁判官が審理にあたりますが、労働審判では労働審判官1名労働審判員2名の合計3名で構成される労働審判委員会が合議制で審理を行います。

労働審判官は裁判官が務めます。労働審判員は「労働関係に関する専門的な知識と経験を有する」裁判所の非常勤職員です。2名の労働審判員のうち、一名は労働者の立場、一名は使用者(会社)の立場から労働関係についての知識と経験を持つ者として、あらかじめ最高裁判所から任命されています。なお、当事者には、各労働審判員がどちらの立場なのかが開示されることはありません。

民事訴訟は法廷で行われますが、労働審判は会議室。その会議室を「労働審判廷」と呼ぶこともあるようです。訴訟なら基本的には傍聴席から誰でも傍聴できますが、労働審判は非公開。労働審判はまるで打ち合わせを持つかのように当事者と労働審判委員会が会議室のテーブルを囲んで審理が行われるので、ラウンドテーブル方式と呼ばれるようです。

テーブルの着席位置ですが、会議室(労働審判廷)の上座の中心に労働審判官、その左右隣りに各労働審判員が座ります。その対面の労働審判官に向かって左手に申立人の陣営、右手に相手方の陣営が位置します。ちなみに、労働審判での「労働審判官 対 当事者」の位置関係は、民事訴訟での「裁判官 対 当事者」と同じです。

次回は、労働審判の管轄や審理の進行方法について書いていきます。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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