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労働審判or民事訴訟、どちらを選択?

前回は労働審判のメリットとリスクについて解説しました。では、労働者が会社と未払い残業代などの紛争を抱えてしまって、それを本人訴訟で解決しようとする場合、民事訴訟と労働審判のどちらを選択すべきなのでしょうか?

証拠にもとづいて事実を一つ一つ認定し、法的な勝ち負け、白黒をはっきりさせるのが民事訴訟。そのかわり、判決がでるまでに相当の時間がかかります。対して、労働審判は事件の解決自体を重視し、3ヶ月程度で終わります。申立て費用もリーズナブル。しかし、早期解決が優先されるために、申立人たる労働者が請求した未払い残業代の金額はそれなりの譲歩を迫られるでしょう。

労働者が事件の解決を目的とするのは当然ですが、先に説明した労働審判のメリットとリスクをふまえながら、その次に何を目的とするかによって、民事訴訟か労働審判かは変わってきます。

例えば、証拠(書証)が十分に揃っていて、労働者にとって「勝ち筋」事件である自信があるなら、時間をかけてでも徹底的に法的な白黒をつけて、できる限り請求通りの高額を会社に支払わせたいでしょう。であれば、民事訴訟が適切です。一方で、労働者はある意味お金に困って未払い残業代を取り戻したい、費用のかかる弁護士を付けることなく本人訴訟を選択するわけですから、できる限り早期にコストをあまりかけることなく解決したい、減額されてでもできるだけ早くキャッシュをもらいたいという思いが強いでしょう。とすると、労働審判が適切です。要は何を重視するかです。

少なくとも、労働の紛争だから労働審判、あるいはお手軽だから労働審判といった発想は必ずしも適切ではありません。もし読者の皆さまが本人訴訟を起こして未払い残業代を会社に請求するなら、事件の解決の他には何を目的とするか、それをよく考えてください。お金なのか、時間なのか。そして、証拠(書証)の揃い具合を慎重に分析し、事実関係や法的評価についての主張のやり取りをある程度想定しながら、どのような戦略や方法論をとるのかを決めておく必要もあります(戦略の立て方などについては、おいおい述べていく予定です)。そのうえで、民事訴訟か労働審判かを選択すべきなのです。

次回は、労働審判もしくは民事訴訟で解決に至らない場合はどうなるか、について書いていきます。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。


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