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労働トラブルを実情に即して迅速、適正、実効的に解決する労働審判

今回から数回にわたって、労働審判という制度について説明したいと思います。

裁判所のサイトによれば、労働審判手続(労働審判)とは「解雇や給料の不払など、事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブルを、その実情に即し、迅速、適正かつ実効的に解決することを目的」とするものです。労働審判法で規定され、平成18年から施行された制度です。

労働審判は、裁判所がはいる点、紛争を解決する点などにおいて、一見すると「民事訴訟の労働事件版」とも思えます。しかし、労働審判は民事訴訟とは根本的に異なります。

民事訴訟は、民事訴訟法でその手続きが定められていて、証拠に基づいていわば白黒をはっきりさせるものです。

対して、労働審判の「実情に即し、迅速、適正かつ実効的に解決する」というフレーズを読み解いてみましょう。労働審判は、白黒をはっきりさせなくても、労働にかかわる紛争を解決すること自体に重きを置いています。その時、その紛争解決は、事件の実情に即しながら、法的に適正で、実際に効果が発揮される実効的なものでなければなりません。そして、そのプロセスは迅速である必要があるのです。

特に、「迅速」という点は重要です。民事訴訟なら未払い残業代問題を解決するのに1年を超える期間を要する可能性があるのに比べて、労働審判は原則として3回以内の期日で審理が終わります。期間にして3ヶ月程度。白黒はっきりさせないかわりに、互いに譲歩して痛み分けで早期解決ということです。

労働審判で取り扱う事件は、「事業主と個々の労働者との間の労働関係に関するトラブル」に限定されます。ですので、労働組合や不当労働行為に関係する事件は、「事業主と個々の労働者」との間に生じる労働トラブルではありませんから、労働審判の対象外となります。上司、同僚、部下との労働に関係しない個人的なもめ事(例:お金の貸し借りなど)も対象から外れます。

次回から、労働審判と民事訴訟の相違点・類似点を交えながら、具体的に説明していきたいと思います。第7回へ続く。

街中利公

本noteは、『実録 落ちこぼれビジネスマンのしろうと労働裁判 労働審判編: 訴訟は自分でできる』(街中利公 著、Kindle版、2018年10月)にそって執筆するものです。

免責事項: noteの内容は、私の実体験や実体験からの知識や個人的見解を読者の皆さまが本人訴訟を提起する際に役立つように提供させていただくものです。内容には誤りがないように注意を払っていますが、法律の専門家ではない私の実体験にもとづく限り、誤った情報は一切含まれていない、私の知識はすべて正しい、私の見解はすべて適切である、とまでは言い切ることができません。ゆえに、本noteで知り得た情報を使用した方がいかなる損害を被ったとしても、私には一切の責任はなく、その責任は使用者にあるものとさせていただきます。ご了承願います。

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