しつけ

発達心理学から考えるしつけのタイミングについて

子育てにおける
親の主要課題として、子の社会性の獲得の支援
が挙げられる。

いわゆる、しつけというものだが

しつけには、
それを行うタイミングの見極めが重要だ

なぜなら、
早すぎるしつけは、
心の発達において、害悪になりうるからだ。

今日は、
1.心の健全な発達とは何か
2.社会慣習を学び始めるタイミングとその見極め方

について述べる。

■1.心の健全な発達とは何か

心の発達とは、端的に述べると
・自己中心性の減少
・意識の拡大
である。

数ある発達心理学の理論を統合的にまとめている
インテグラル理論には、自己中心的→自集団中心的→世界中心的→宇宙中心的という、以下のイラストの様に発達の旅が紹介されている。

ここで重要な特徴は、
心の発達は、創発的であり、含んで超えるものという事だ。

つまり、発達するためには発達前の要素の習熟が不可欠であるという事である。

今いる自分のステージ(例えば、自己中心的な段階)を味わい尽くしていると、やがて、自身が認識している世界環境との不適合や課題が生まれてくる。

それは、
内面的に葛藤として現れる。

内面的な葛藤とは、
今いる自分のステージのニーズと
新たに必要とされている自分のステージのニーズが
統合されずに摩擦しあっている状況である。

しかし、今の自分と新たな自分を包括する新しい視点を獲得することによって内面的な葛藤にもいずれ新たな秩序が生まれる。

水素原子と酸素原子が統合して
水分子になる様に、過去の要素を含みながら、
これまでとは全く異なる形式を持つパラダイムを持つようになり、
またその新しいパラダイムから毎日を生きるのである。

しかし、水分子が生まれるためには、
水素原子と酸素分子が不可欠である。

つまり、心の発達には、
・今の自分を十二分に体験しつくすこと(前の要素の習熟が必要)
・内的な葛藤が生まれたときに、適切に内省を行い、統合が行われることで新たな視座を獲得していく事

この2点が重要である。

上記を考慮に入れて、
現状日本で行われている子育てについて考えたときに、

「自己中心性を体験しつくすことなしに、早期に社会慣習に適応させている」傾向が強いように感じられる。

日本の文化的な価値観としても、
世間様の目や、一般常識など、所属する環境を重視する傾向があるので、
「親がしっかりと子供にしつけをするべきだ」という考えが浸透しているように思う。

これは、大人になった時に、
・自分の気持ちや欲求に気づけない大人
・求められた事や期待されている事には応えられるが、自分はない大人
として現れてしまう。

自己中心的な段階に居るときには、
思いっきり、自分の欲求、快楽、満足、自己中心的な視点の追求

つまり我儘をさせてあげて、
(大人も忙しいのでなかなか難しいという環境課題もあるのが障壁)

自集団中心的に移行していくタイミング
たっぷりと、その社会の慣習やルール、期待事項などを共有していくとよいのだ思われる。

■2.社会慣習を学び始めるタイミングとその見極め方

では、自集団中心主義に移行するタイミング、
つまり、しつけのタイミングはいつがいいのか?

そのタイミングの目安と、見極め方について紹介する

社会慣習を学び始めるために必要な事は、
他者視点の獲得だ。

そもそも4,5歳以前の子供は、
親の立場に身を置いて、親の視点から物事を見ることができない。

他者の視点を獲得していないのに、
自分が所属している大人たちが作る慣習を理解することができるだろうか?

PremackとWoodruffによる
心の理論によると、 他者の考えを察することができているかを
調べる標準誤信念課題という実験方法があり、

一般的には4歳後半から5歳程度のタイミングで、
他者の視点を獲得する事ができているようだ。

ここでは、代表的かつ、
家でもできるようなやり方として
サリー・アン課題を引用して紹介する。


この課題は、紙芝居形式で呈示されることが多いが、目の前で実験者が登場人物を演じる場合もある[9]。登場人物は二人おり、状況設定は、ある部屋の中にバスケットと箱(あるいは色の異なる箱や形や色が異なる家具や入れ物)が置かれているというものである。なお、登場人物の名前はサリーとアンに限らず、課題を実施する国に合わせるなど、変更されることもある。
「脳科学辞典 心の理論より引用」
 サリーとアンは最初、同じ部屋にいる。部屋にはサリーのバスケットとアンの箱が置かれている。サリーがビー玉をバスケットに入れる。そしてサリーは部屋の外に出ていき、その間にアンがビー玉を自分の箱に移動する。最後にサリーが部屋に戻ってきて、ビー玉を取り出そうとする。そして、子どもに「サリーがどこを探すと思うか(信念質問)」、「ビー玉は今どこにあるか(現実質問)」および「最初にビー玉はどこにあったか(記憶質問)」を聞く。3歳児の多くは前者の問に箱と答えるが、4~5歳児はバスケットと答える。これは3歳児にとっては、自分が見て知った現実(ビー玉は今、アンの箱にあるという現実)と、サリーの信念(ビー玉はバスケットに入れておいたというサリーにとっての現実)が異なることを理解するのが難しいために起こる。また、3歳児は現実質問と記憶質問には正しく答えられる。
「脳科学辞典 心の理論より引用」

他にも
もっと単純な方法として、
表に赤、裏に黄色の紙を子供に見せて

親子の間に置き、
親には何色が見えるかな?

と聞いたときに、正答できるかといった方法もある

1つ、子供の状態をよく観察して、
これらの実験に正当できるような行動やふるまいが
でてきたら、自集団中心的段階として、

家庭のルールや学校のルールなどをどんどん共有していくといいかもしれない。
*インテグラル理論では、ボーイスカウト、ガールスカウトなども自集団中心的段階のコミュニティとして紹介されていた。

自分の子供は、今一歳半。
親の心の余裕の範囲内になってしまうが、
今はなるべく、わがままを一緒に体験しようと思う。

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