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とべ動物園のサルたち④「マントヒヒ」

マントヒヒ
Papio hamadryas
Hamadryas baboon
 「モンキータウン」ではサル舎を大きく3つに分類している。ひとつは「ヒヒ比較舎」、もうひとつは「サル比較舎」、最後が「類人猿舎」である。サルの分類についてもいくつか方法が考えられているのだが、この動物園では「類人猿」「ヒヒ」「それ以外のサル」ということで分けているようだ。なぜヒヒだけを別立てにしたのかについては少し疑問を呈したいと思う。というのも「サル比較舎」に入っているタイワンザルやボンネットモンキーと「ヒヒ比較舎」に入っているヒヒの間には分類上、確かに差異はあるがすべてオナガザル科のサル。それなのに「サル比較舎」の中に1種だけ狭い意味ではサルではないワオキツネザルが並んで展示されている。他のリスザル、クモザル、オマキザルについてはわざわざ別立てにしているのに、キツネザル(原猿の仲間)をそこに混ぜ込むのはどうか。
 動物園の方の説明によれば、要はラクダやバクのいるアジアストリートに展示するよりもわかりやすいからとのこと。(ワオキツネザルはインドネシアのスマトラ島のサル)種類によって地域で分けるか、生物学的な分類で分けるかを個別に判断していて「サル」でくくったほうがわかりやすいとの判断だろう。いつまでも目くじらをたててもしょうがないので話をマントヒヒに戻そう。断っておくと、ここまできちんと分類、展示ができているのは、とべ動物園の優れた施設環境と、スタッフの皆さんのたゆまぬ研鑚のおかげで、もっと大雑把な分類展示しかできない動物園はいくらでもある。
 そうそう、マントヒヒだ。ここでは他のサルたちに比べてかなり広めのケージの中に12頭ほどが生活している。ケージの中では誰の目にも明らかなボスがいて常に目を光らせている。僕が訪ねた時には小さなコドモのヒヒがボスにかまわずやんちゃに振舞っているのが目立った。カメラを持って出かけるとどうしても動きのあるコドモばかりを追ってしまう。
 平成4年10月の愛媛新聞の記事に「アラビア半島南部、ソマリアからエチオピアの草原や岩地に生息し、一頭の雄をリーダーとして群れで暮らします」とあるが、記述には間違いが含まれている。確かに多くのサルは一頭のボスを中心に群れをつくる(もちろんそうでないものもたくさんいる)。ヒヒもそうしたうちのひとつだが、ヒヒの持つ特色としてその群れがさらにいくつも集まって「バンド」と呼ばれる大きな社会集団を作ることが知られているからだ。この「バンド」には決まったリーダーはおらず、ボス同士は適当に距離を取り合って生活している。このような社会形態は人間の持つ「家族」のプロトタイプではないかとして、非常に興味深く研究されている。ただ、より人間に近い類人猿にはそうした形が認められず、謎といえば謎だ。
 食物は主にアカシアなどの乾いた葉、花、マメなどだが、時には昆虫やネズミ、小型のサルなども食べる。気候の影響か、決まった発情期、出産期は無い。
 ちなみに、今ここで生活しているサルたちの中で一番長生きしているのは、このマントヒヒの中の「ばーさん」と呼ばれているメスで20歳を越えているそうだ。人間で言えば80歳くらいになるんだろうか。あと数年も元気でいれば飼育下での最長寿ものだそうで、いつまでも元気な姿を見せて欲しい。



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