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起業家必見!!VCとは異なるCVCならではの事情とCVCとの付き合い方

皆さんこんにちは。経営企画本部の藤原です。前回、デーティング投資についての記事を書きました。

上記記事の中で、"デーティング投資はCVCの理想的な形"として4つの事例を紹介いたしましたが、全て投資側の視点で語られており、スタートアップ起業家側の視点がありませんでした。

そこで今回は、そもそもCVCとはどいうものであり、CVCから出資を受けるスタートアップ起業家にとってはどのような点に留意すると良いかについて書いてみたいと思います。しばしお付き合いくだされば幸いです。

なお、本題に入る前に僕の立場を明確化しておくと、僕はかつてCVCで働いていたことがあるために、そんなつもりはなくても自然と"CVC寄りな"論調になってしまうことが時々あります。独立系VCで働く友人・知人も大変多いですので、そこは温かい突っ込みをいただけたら幸いです。それでは本題に行ってみましょう。


I. CVCの定義は特にない

CVCとは何か?について話すときに、条件Aを満たすならばCVCであり、条件Bを満たすならば独立系VCである、というような業界のコンセンサスが取れたVC分類定理のようなものはそもそも存在していないと思っています。

当事者がCVCを名乗っていればそれはCVCであり、独立系VCを名乗っていればそれは独立系VCであるので、それ以上でもそれ以下でもありません。

どうしても分類したい場面があるときは(いつそのような場面があるかは分かりませんが)、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)のWebサイトが参考になると思います。同協会にはVC会員とCVC会員との会員種別があり、どちらに所属しているかが公開されております。

II. 活動目的の違い

独立系VCであれば活動目的は1つで、それはLP出資された資金を期限内になるべく多く増やして、LP出資者になるべく多くの分配金をお返しすることです。ですから当然のこととして独立系VCは出資先スタートアップにはIPOによって大きなリターンを返すように期待します。

時にはLP出資者に対してスタートアップ起業家との人的ネットワークを提供することや、LP出資者によるオープンイノベーションの文脈においてパートナー探しの代役のような役割を期待されることもありますが、それは副次的な役割であって、独立系VCの本分はおカネを増やすことです。

それに対してCVCは活動目的の策定において様々な力学が働くことがあります。これがCVCに関わる皆様に対して話を分かりにくくしている側面がありますので、その辺りを記載してみたいと思います。

ファイナンシャルリターンかストラテジックリターンか問題

これはCVCの事業目的を語る際の永遠の課題だったりします。同じCVCでも親会社側の事情(その年の業績やそのときの経営者のマインドなど)によって、例えば立ち上げ当初はストラテジックリターンだったのに、急にファイナンシャルリターンが必要だと言い出したり、やっぱりやめたりと、色々とブレることがありますので、未来永劫同じ目的で走っている訳でもない点に注意が必要です。

何故このようなことが起こるかというと、事業会社独特の事情としてストラテジックな思惑による出資があり得るからです。独立系VCであれば基本的におカネを出資して経営助言をするところまでが大方のスコープになりますので、その出資が儲かるのか儲からないのかというファイナンシャルな思惑くらいしか検討の余地はありません。

しかし、事業会社やCVCの場合は出資元のリソースを使って出資先の事業をもっと大きくしたり、逆に出資先のリソースを利活用することで出資元の事業成長に寄与したりするプレイができる可能性があります。これはCVCならではの価値であり、またこれを人はシナジーと言ったりするのですが、これがあるがために、例えば出資行為そのものが儲かる見込がない場合でも、シナジーによって儲かる可能性があるとなれば、投資を検討することが可能になってしまうという事情があります。

CVCによっては、自社の掲げる事業目的がストラテジックリターンなのかファイナンシャルリターンなのかをWebサイトなどで謳っているケースもあれば、秘匿されているケースもあります。あるいはどちらか一方には決めずに「両方大事である」と言っていたり、「活動費くらいはファイナンシャルリターンで手当てしたい」というケースもあったりします。

スタートアップ起業家側においては、これから関わるCVCがどのような目的でスタートアップ投資活動をしているのかについて、予めチェックしておかれると良いと思います。

ファンドを作る作らない問題

CVCとして活動をする際にポイントとなるもう1つの問題がこれかと思います。LP投資家として広く薄く独立系VCにLP出資するに留めるケースもあれば、独立系VCと2人組合を作って投資ファンドを組成し、がっつりと業界内に入り込んでいくケースもあります。

中間的なケースとしては、ファンドは組成せず、良い出資先があればその都度B/Sから出資する、所謂プリンシパル投資で対応するケースもあります。また、これらを複数組み合わせて幅広く活動されるケースもあります。

活動の方法は各社でまちまちで、ファンドを作る場合と作らずにプリンシパル投資でいく場合とで、それぞれプロコンがあります。2人組合を組成するにしても、どこまで事業会社側が権限を持つかや、どういう意思決定スキームにするかという点などにおいても、それぞれプロコンがあります。

例えば、ファンドを組成していない場合は期限の制約がないことから無理に投資しなくてもよいので、「良い案件があったら出すよ」くらいな割とのんびりした態度でいることが論理的には可能です。従って、なかなか投資に対するモチベーションが湧かずに今期1件も投資せずに終わった、というようなことが起こりえます。良くないことのようですが、裏を返せばファンド期限の制約がないので、出資先にとっては慌ててExitを目指す必要がなく、じっくりとバリューアップ活動に専念することができるというメリットも考えられます。

このように、どの方式を採るかでそれぞれプロコンがありますので、スタートアップ起業家側の動きとして、これから関わるCVCがどような投資ビークルやスキームで活動しているのかを理解し、自社の思惑がそれにフィットしそうかを検討されると良いと思います。

リードを取る取らない問題

スタートアップ起業家の皆さんがCVCに対して資金調達活動をする中で、こんなことを言われたことはないでしょうか。

「とても良いビジネスだと思いますので、リードが決まったらもう一度来てください。」

実は資金調達ラウンドでリードを取れるCVCはかなり少数派です。これを知らずにリードが決まらないうちからCVCばかりをせっせと回ってしまった、という失敗談をあるスタートアップ起業家から聞いたことがあります。

CVCがリードを取らないのはケイパビリティーやノウハウの問題というよりも、人事制度によるものです。CVCで働く人材は親会社(グループ本体)から出向してきているケースが多く、この出向人材はいつか親会社にローテーション人事によって帰ってしまいます。

日本企業独特のこのローテーション人事の是非は置いておくとして、リードで入って長年一緒にやってきたキャピタリストが急に人事異動でいなくなってしまったスタートアップ側にしてみれば、後任の担当キャピタリストに事業状況をこれまでの経緯も含めて説明し直さなければならないですし、これまで築き上げた人間関係もまたゼロから構築し直さなければなりません。

スタートアップ投資において担当キャピタリストと起業家とはとても長期的なお付き合いになります。少なくとも5〜7年は一緒に働くことを前提に考えると、この間、会社による強制的な人事異動がないことを確約できない限り、スタートアップ側に多大なご迷惑をかけてしまわないように、CVCはリードを取らない事で対応しています。

念のため補足すると、独立系VCだってキャピタリストが辞めることがあるじゃないかとおっしゃる方もいるかもしれませんが、どこの会社にも従業員が辞めてしまうリスクが等しくあるのは当然で、ここで話題にしたいのは、会社による強制的な人事異動のリスクがCVCの場合のみアドオンされていて、そのヘッジ策としてリードを取らないでいるということです。

もちろん世の中にはリードを取る方針のCVCも探せばあると思います。その場合は、グループ出向社員ではなく独自採用した(人事異動で本社に帰らない)人材でCVCを運営しているケースが多いと思いますので、スタートアップ起業家の皆さんはその点も合わせて確認されると良いと思います。

デーティング投資の可能性

CVCの場合、前述した活動目的が100%ファイナンシャルリターンでない限り、将来的には投資先スタートアップをM&Aによって自社グループに取り込むことも可能性としては考えられます。

今回の投資が、将来のM&Aを見越したデーティング投資なのかどうかは、スタートアップ起業家にとっては重要なポイントだと思います。デーティング投資を歓迎するしないに関わらず先方の思惑はしっかり確認されると良いと思います。

なお、デーティング投資については事例も含めて以下の記事をご参照いただけると幸いです。(再掲)

III. ソーシング方法の違い

投資先候補やM&A候補を探す活動を"ソーシング"と呼びます。CVCがしばしば実施してるソーシング手法については、独立系VCには見られない独特の方法がありますので、ここではその辺りを含めて述べたいと思います。

独立系VCへのLP出資

4,5年ほど前からオープンイノベーションの文脈で事業会社がスタートアップに関わる事例が増えていますが、これまでスタートアップと何の接点もなかった事業会社が、「流行っているから」といきなりスタートアップ界隈に進出しても、良質なスタートアップへのアクセスを獲得することが難しいケースが多々あります。

"餅は餅屋"ということで、いったん業界のプロフェッショナルである独立系VCにLP出資することで、彼らのネットワークを活用したり、プロである独立系VCのベンチャーキャピタリスト達の立ち居振る舞い方を端で見て学習し、今後の活動に活かそうという意図で、この方法が採られることがあります。

もちろん中には純粋におカネを増やしたいから資産運用先の1つとして出資しているというピュアなケースもあるかもしれませんが、オープンイノベーションに関わる日本の事業会社においては少数派ではないでしょうか。

スタートアップ起業家にとって、この点をどう考えれば良いかと言えば、あまり深く考えなくて良いと思います。2人組合でない限り、LP出資者である事業会社側の意向が独立系VC側の意思決定に影響することは基本的にはありませんし、2人組合であっても、もしかしたら拒否権くらいは事業会社側が持っているケースがあるかもしれませんが、基本的に投資の意思決定はGP側に委ねられているはずです。

スタートアップ起業家としては、目の前のベンチャーキャピタリストを納得させることに全力を注がれるのが良いと思います。

アクセラレータープログラムの開催

これも一気にスタートアップとの接点を広げる手法として有効な手段だと思います。キャンペーンに応募してくれるスタートアップ起業家とは全て接点を持つことができますし、審査員などの名目でプロのベンチャーキャピタリストや業界の著名人を招聘することができれば、そこからまた界隈へのネットワークが広がっていきます。

初めてのことで運営ノウハウがないという場合でも、ゼロワンブースターのようなアクセラレータープログラムをまるっと請け負ってくれる会社もありますので、慣れないうちはそういった所も活用しながら業界に参入することができます。

スタートアップ起業家側にとっても大手企業のリソースを使って、自社の事業をまさに"加速"させることができるので、うまく活用したいところです。

しかし、アクセラレータープログラムの中には、本気でオープンイノベーションを志向しているのか怪しい活動もあるようです。伝統的大企業における硬直化した組織の中で若手人材のガス抜きイベントとして利用されていたり、あるいは若手社員の研修プログラムのような位置づけをされているケースもあるとの噂を聞きます。まさに人生を賭けて時間と資金をオールインして頑張っているスタートアップ起業家が、そのようなものに巻き込まれてしまっては大変ですから、応募するアクセラレータープログラムはしっかりと見極める必要があります。

まともなアクセラレータープログラムか否かを簡単に見極める方法は2つあります。1つは、ちゃんと出資までしてくれるのかどうかと、もう1つは、大企業側と連名でプレスリリースを打たせてもらっているかです。スタートアップが大企業と組むメリットは、初期的にはおカネと名前による信用補完くらいしかありませんから、その両方が閉ざされているようなアクセラレータープログラムに関わることにスタートアップ側が意義を見出すのはなかなか難しいのではないかと思います。

もちろん販売チャネルの獲得や製造能力の確保など、スタートアップ側で明確な思惑があって、それが利用できそうだとなればまた話は変わってくると思います。いずれにしてもスタートアップ起業家には、アクセラレータープログラムはしっかりと見極めていただければと思います。

M&Aクラウドなど外部サービスの活用

ソーシングチャネルを多様化させるという意味で、弊社M&Aクラウドのようなサービスを活用することも手だと思います。サービス名にM&Aとありますが、M&Aクラウドのプラットフォームでは出資先も探すことができます。

自社のサービスだから言っているのだろうと思われるので、あまり長々と書くことは避けますが、日本の事業会社側には投資先やM&A候補を探す機能としてのソーシングチームが米国のように組成されていることは希だと思っています。

よくあるケースとしては、個別案件が外部から持ち込まれて簡易的な検討がなされ、社内が俄に盛り上がってきたタイミングで経営企画部門が中心となってDD等を行う専門チームが組成され、終わったらまた解散して通常業務に戻る、というような体制で運営されているケースが結構多いのではないかと拝察します。

ということは、良質な案件を確保するためにソーシングリソースを自社で抱える代わりに、M&Aクラウドのような外部事業者にその部分は委ね、自社は投資戦略やM&A戦略の策定、そしてもっと重要な実行後のPMIに専念するというのも、ひとつの方法だと思います。

スタートアップ起業家側の振る舞い方としては、このようなプラットフォームには日頃からアクセスしておき、情報収集などで活用しておくと良いと思います。そうしておけば、実際に資金調達活動やM&Aを検討するタイミングにおいては既にアカウントがありますし、システム上の操作やプラットフォームの空気感にも慣れている状態でしょうから、スムーズに活動を開始できると思います。

社員が独自に頑張る

実はこの手法が案外多いソーシング手法かもしれません。僕があるCVCで唯一のベンチャーキャピタリストとして働いていたときには、まさにこの方法でソーシングしていました。アクセラレータープログラムは開催していませんでしたし、LP出資は海外本社が1社にだけ行っておりましたが、M&Aクラウドはまだ世の中に存在していませんでした。

飛び道具はなく地道な活動をするしかないのですが、具体的には、まずは日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)にCVC会員として入会し、彼らが開催してくれる勉強会やイベントに行きまくります。そして現地でVCやCVCで働く他のベンチャーキャピタリストと仲良くなって、情報ネットワークを構築していきます。時には案件を紹介し合ったり、焼肉を食べに行って親睦を図ったりします。もちろん、スタートアップ起業家と直接つながれる可能性があるピッチイベントやデモデイなどのイベントにも積極的に参加します。

ただ、今となってつくづく思うのが、CVCにとってソーシングに効く最高の広告宣伝は「実際に投資をすること」だったと思います。投資件数が積み上がるにつれて業界内に評判が勝手に広がっていき、投資していること自体がスタートアップ界隈に認識されていきますので、適切な紹介も入ってきやすくなります。

そういう意味では、 1件目から見極めて見極めてなかなか投資をしないというよりは、初めの数件は失敗もやむなしと覚悟を決めることが、活動を開始したばかりのCVCにとっては重要かもしれません。

そもそもスタートアップ投資はハイリスクハイリターンですから、失敗して当然という面もあります。事業会社として、特に上場企業であれば株主に対する責任もあり、適当なことはできないということも大変理解できますが、投資しない限り現場にノウハウは蓄積しないですし、スタートアップ界隈で投資していることが知れ渡ることもありません。よって良質な案件の紹介も入ってきません。

「実際に投資しないからノウハウも蓄積しないし案件も来ない。ノウハウも蓄積しないし案件も来ないから投資できない。」というこのニワトリタマゴ問題を解決するために有効で且つおカネのかからない方法が「投資意思決定者が覚悟を決めること」である点を考えると、CVCというのはなかなかに希有で面白い業界なのではないかと思います。

IV. その他CVCならではの特殊事情

これまで述べたこと以外にもCVCならではの事情によって、スタートアップ起業家の皆さんにとって一般的な独立系VCとは少し違った場面に出会うことがあるかもしれませんので、その辺りについて最後に述べます。

投資意思決定プロセスや期間

初回コンタクトから始まって最終的に投資委員会で投資が決定されるまでの間に、CVCでは現場キャピタリスト以外にも様々な関係者が登場してくることがあります。将来の協業を見越してキャピタリストではない事業サイドの営業担当者と面談するようなケースや、本社の偉い人と改めて面談するようなケースです。このように投資検討のプロセスが多かったり長かったりするのはCVCあるあるです。

目の前のベンチャーキャピタリストが納得し、GPが納得すれば迅速に投資が決定される独立系VCと違って、他の思惑も絡むCVCならではの意思決定プロセスが各社それぞれにあり、またそれらが外部から見えにくいということもあります。例えば、日本側に最終決定権がなく、海外本社のトップが全案件に口を出してくるような場合や、実際に共同事業を行う事業部側の権限が強いような場合は、スタートアップ側からは検討中に何が起きているのか見えづらく、投資決定までやきもきすることもあるかと思います。

このようなCVCの場合、現場キャピタリストのスタートアップに対する反応は、いまいち煮え切らない態度になってしまいがちです。スタートアップ起業家からよく「CVCは相手の反応から投資OKかNGかが全然分からない」というようなことが聞かれますが、実は仕方のない事でもあります。

なぜなら、このようなCVCは別の力学によって決定が覆されるような状況下に置かれていますから、もし迂闊なことを言って期待を持たせてしまうと、それを当てにして既にアクセルを踏んでしまっていたり資金調達活動を終えてしまっていたりするスタートアップに、後で投資NGとなった場合に多大なるご迷惑をかけてしまうことになるからです。

そういう意味では、このような煮え切らない態度を取ってくれるCVCは実は誠実だと言えます。後続プロセスで覆る可能性があるにもかかわらず、あたかも投資が決定したかのように振る舞われる方が、スタートアップにとっては困ったことになる恐れがあります。

スタートアップ起業家側の防衛手段としては、ビジネス上当然のことではありますが、契約書に判を押すまで、もっと言うと銀行口座にちゃんとおカネが着金するまで、最後の最後まで油断しないことが大切だと思います。

IRRやValuationへの考え方

IRRはその計算式の成り立ちから明らかなように、それを高める方法は、最終的なExitの金額が同じであるならば、なるべく低いValuationで投資をするか、なるべく早くExitするかの2つしかありません。従ってIRRが自社の評価指標として大変重要な意味を持つ独立系VCは、Valuationについては当然こだわりますし、投資後にはのんびり事業をされると困る訳です。

もちろん、メルカリのように最終的に7,000億円になりました、というようなケースでは、そもそも出資したときの細かなValuationの違いはもはやどうでも良いレベルにはなるのですが、そのようなケースはごく希ですから、やはり出資時のValuationはとても気にすることになります。

しかしCVCの場合、スタートアップへの投資活動におけるIRRについては、そこまでシビアでないケースが多いと思います。従って、Valuationにもさほどシビアではないですし、M&A Exitを見据えて種類株式の優先条項についてゴリゴリに交渉してくるというようなケースも希だと思います。ファンドがなければ期限の制約もありません。

CVCにとってはIRRやValuationよりも、予算に関連した投資の規模感や自社事業とのシナジーがより大切であることの方が多いので、スタートアップ起業家の皆様はコミュニケーションの取り方を、それぞれのCVCに合った形に最適化されると良いと思います。

ただ、当然に重要なこととして、IRRを重視するしないに関わらず、そのスタートアップのビジネスが魅力的でないとそもそも投資は行われないという点については、常に頭の片隅に置いておく必要があります。

成功時の報酬体系

一般的にGP取り分は20%で契約されることが多いので、独立系VCであればファンドの儲けの20%がそのGPへ還元されます。しかし、CVCキャピタリストの場合、特殊な報酬体系になっていない限り、本体事業と給与テーブルが同じであるケースが多く、成果が出てもCVCキャピタリスト本人がとてつもなく大金持ちになると言うことはありません。

例えばあるスタートアップに独立系VCとCVCが相乗りで出資し、大型IPOを達成した結果それぞれ100億円の儲けが出たとします。独立系VCのGPには20億円の分配があり、それをVC内の規定に従ってメンバーに配分することになりますから、担当キャピタリストに対しては少なくとも数億円のボーナスがあっても全くおかしくありません。

しかし、CVCキャピタリストが本体から出向してきているサラリーマンである場合、そのような報酬が得られることはまずありません。通常の人事評価で高評価が付いてボーナスがいつもより少し多いというようなことは考えられますが、本体事業と同じ給与テーブルで計算されているので、数億円のボーナスなどというようなことにはならなのです。

スタートアップ起業家側がこれについてどう考えれば良いかと言えば、これについては深く考えなくても良いと思います。目の前の同じように見える2人はそれぞれ全然報酬体系が違うんだな、くらいに思っていただいて、たまにはCVCキャピタリストに優しくしてあげてください。

V. CVCとの付き合い方

これまで色々と書いてきましたが、スタートアップ起業家にとって、相手がCVCだから態度をどうこうするというよりは、そもそも自社ビジネスに磨きをかけて、その魅力や将来性が誰の目にも明らかに映るよう、経営者として尽力し続けるという大前提がまずはあると思います。

その上で、資金調達活動や普段のお付き合いの中で、独立系VCとCVCとではこれまで述べてきたような「違い」というものがあって、それぞれの思惑の中で最適化された動きをしてきているんだという事を、それが良いか悪いかは別にして、それらを理解して適切に対応することで、自社ビジネスをもっと発展させられたら良いのではないかと思います。

スタートアップ起業家の皆様とCVCが良好な関係を築き、オープンイノベーションだけにとどまらず、スタートアップエコシステム全体が盛り上がるようになれば大変嬉しく思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。もし良かったらスキ!やTwitterでのシェアなどをしてくださると嬉しいです。何かご不明な点がある場合、僕で分かることであればお返事したいと思いますので、お気軽にDMをいただければ幸いです。

VI. オススメ書籍

僕がCVCでキャピタリストとして働いていた時、CVCを理解するのに大変役立った書籍をご紹介します。

投資スキームの勉強にはこの書籍が大変役立ちました。まだ手許にあり、時々参照しています。

両方ともアフィリタグは付いていないので安心してご購入いただけます。

VII. M&Aクラウド利用方法

スタートアップ起業家の皆さんがM&Aクラウドを利用してCVCや事業会社に対して資金調達活動やM&A活動を行う際には、以下のフォームから登録していただければ、専門の担当者が直接サポートいたします。

今すぐという温度感でない場合でもお気軽に登録して情報収集しておいていただければ、将来的に活動する際にスムーズに開始できると思いますので、ぜひご活用ください。

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