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【電験過去問題 解説資料集vol.1】変圧器の無効電力調整の意味を知る

「電験の過去問の解説をして欲しい」

過去問解説の依頼をTwitter経由で頂いた。今までは実際に起こった事象に関する内容を基に、電験に紐づけて電気知識集に書いてきた。この度は電験の問題を解くという依頼であったから嬉しい。「電験を教えている立場を認めてもらえた」という感情が大きいからだ。
また、「実際に起こった事象の説明が分かり易い」という感想を先日頂くことができたこともあって、嬉しさはより大きかった。
一方で、自分は「電験の問題をどのように解説するのか」「分かり易い説明の工夫をしてくれるのか」といった目でも見られているはずだ。
このように冒頭に敢えて記載することで、自分にプレッシャーをかけ、この記事を頑張って、いいものにしようと思っている。

気を引き締めて、本題の電験解説に入る。今回依頼を受けたのは「電験3種 変圧器問題 追加負荷に関する問題」だ。

この問題で問われている本質は「変圧器の負荷を決める際に、無効電力を考慮しなくては定格容量を超えてしまい、過負荷になるということ」にある。問題を解く中で気付いて欲しい。そこに至るまで解説したいと思う。

変圧器問題 追加負荷に関する問題

電験3種の2012年の電力問題だ。

【問題文】
定格容量750(kV・A)の三相変圧器に遅れ力率0.9の三相負荷500(kW)が接続されている。この三相変圧器に新たに遅れ力率0.8の三相負荷200(kW)を接続する場合、次の(a)(b)の問に答えよ。


(a)負荷を追加した後の無効電力(kvar)の値として、最も近いものを選べ

(b)この変圧器の過負荷運転を回避するために、変圧器の二次側に必要な最小の電力用コンデンサ容量(kvar)の値として、最も近いものを選べ


この問題から学ぶこと

この問題から学べることは多い。
・変圧器に負荷を持たせるという意味
・遅れ力率0.9の三相負荷500kWの意味
・追加する遅れ力率0.8の三相負荷200kWを元の負荷と足し合わせる理屈
・電力用コンデンサを投入したときの効果

逆に多くのことを知らなくては解けない問題である。電験3種の挑戦者で躓く方が圧倒的に多い問題だ。電験2種の挑戦者ですら、理解していない方も多い。

問題解説の前に

「まず問題の意味がわからない」という方もいる。自分も分からなかった。実際に物も見たこともないし、分かる訳がない。本資料では順を追って、基本から説明していくので安心して欲しい。

まず、いきなり問題を解き始める前に、必須知識を理解しておこう。下記の二項目だ。

①皮相電力、有効電力、無効電力
②遅れ力率、進み力率の意味


①皮相電力、有効電力、無効電力

以前、書いた記事が役に立つ。無料部分に記載している基本知識を理解しよう。

皮相電力が、有効電力と無効電力のそれぞれの二乗の和をし、√ としてものであることを理解して欲しい。


②遅れ力率、進み力率の意味
位相の話になる。
電圧を基準とした時、電流の方が遅れている状態を「遅れ力率」としている。
電圧を基準とした時、電流の方が進んでいる状態を「進み力率」としている。

問題解説

それでは、問題文の一文一文の意味を解説していく。この変圧器問題の鍵は、「問題文の理解」にある。

【問題文】
定格容量750(kV・A)の三相変圧器に遅れ力率0.9の三相負荷500(kW)が接続されている。この三相変圧器に新たに遅れ力率0.8の三相負荷200(kW)を接続する場合、次の(a)(b)の問に答えよ。


①「定格容量750(kV・A)の三相変圧器」の意味
定格容量750(kV・A)とは、皮相電力のことを示している。この変圧器は、有効電力と無効電力を合わせて(※)750(kV・A)までの負荷しか持つことができないことを示している。
(※)単純な足し算ではなく、ベクトル和であることに注意

②「遅れ力率0.9の三相負荷500(kW)」の意味
正直、わかりにくい。しかし、ここをきちんと見分けるコツがあることをお伝えする。

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