送電系統における遅れ・進み無効電力とは【電気知識集vol.1】

2021年3月17日 改良作業開始

この記事では「無効電力と有効電力」の話をする。

これらは「電気主任技術者試験に役立つ知識」でもある。無料部分も十分役立つ知識となっている。この記事に出会ったことも何かの運命だと思うので、知識を仕入れて帰って欲しい。

今後、この電気知識集は実際に発生した系統事故等のニュースを分かりやすくする解説を付けていこうと考えている。何より自分が欲しかったものであり、多くの方に役立つことを願っている。

特にメーカー、電力会社、電力系統に関わる業務に従事する方の役に立てる記事だと思う。業務で困った時に見て頂ければ非常に嬉しい。

【過去の改定履歴】
①2019年1月23日 記事破損のため復旧
②2019年2月10日 記事の充実化
③2019年4月18日 電験との関係を整理して欲しいとの声を頂き、さらに500字程度追記。読みやすいようにリライトも実施。
④2019年7月5日 海外の分かりやすい記事を追記(希望がありましたので、今後、ポイントを絞って和訳していきます。)
④2019年11月23日 発電機の容量特性曲線の解説追加
⑤2020年7月2日 無効電力をより理解しやすい記事を追加

はじめに

「電力」には、3種類あることはご存じだろうか。

「有効電力」と「無効電力」、その大元となる「皮相電力」がある。正しく説明することは、実は難易度が高い。送電系統を例に説明することとなると、技術者であっても、説明できない人が多い。

・無効電力を供給する??どうやって供給するのか??

なぜ供給しなくてはいけないのか

・送電系統における容量性負荷、誘導性負荷とは何か

・フェランチ効果との関係性は??


・発電機の力率調整との関係性は??

インターネットや問題集を探しても良い記事がなかったので、わかりやすい説明を本記事でまとめた。送電系統の話になるので、正しく説明するためには多くの知識が必要となる。

また、有効電力、無効電力、皮相電力を理解することで、昨今の事故事象である「発電機の並列失敗」「発電機の逆電力による停止」についても論理立てて説明できる基礎が身に付く。


興味がある方のために、上記の事故事象のポイントを説明しておく。

①なぜ、発電機を送電系統に並列する際には発電機電圧を送電系統電圧より大きくしなくてはいけないのか。もし低い場合に有効電力と無効電力はどのような挙動を示すのか。

②逆電力継電器の動作で発電機が停止するというのは位相が原因なのか、電圧が原因なのか。有効電力と無効電力はどのような挙動を示すのか。


本記事では、こういった事象を説明する際に必要となる「基礎」を身に付けることができる。

一見、「無効電力や有効電力の知識は系統事故といった実際の事象と関係があまりないのでは?」
と思うかもしれないが、突き詰めてみると基礎の部分の話の議論になることが多い。


勉強が無駄だなぁと感じることもあるかもしれないが、必ず役に立つので安心して欲しい。

基礎が疎かだと、色々な場面でボロが出る。しっかり準備したつもりでも、一つの質問から全てを失った経験を自分はしたことがある。

上記の事故事象は運転操作の知識も含まれるので、いずれ記事にして解説していきたいと思う。電験1、2種の二次試験では運転操作についても記載する必要がある。加点対象であることから役に立つはずだ。


2019年7月5日追記
実際に起こった系統事故を解説しました。発電機が並列できない事象を「電圧」「周波数」「位相差」の視点から説明しています。深い内容を学習したい方はこちらの記事がオススメです。


それでは、本題に入っていく。

まず、電力の定義から説明する。

3種類ある電力とは何か

まずは、定義から紹介するのできっちりと頭に入れておこう。

・皮相電力(単位:VA(ボルトアンペア))
 S=EI

・有効電力(単位:W(ワット))
 P=EIcosθ

・無効電力(単位:var(バール))
 Q=EIsinθ

(※Eは電圧、Iは電流を示す。)

画像1


このままだと、よくわからないという方も実際にいた。
そこで、下記のような具体例を挙げて説明したところ、理解して頂くことができたので紹介する。

ある回転機器を動かしたいとしよう。

電源を繋いで、電圧E電流Iで、機器を回転させたとき、皮相電力分のエネルギーがそのまま回転エネルギーになるかというと、

実は「違う」のである。

機器を動かすエネルギーとしては、有効電力分のP=EIcosθしか伝わらない。
その理由としては挙がるのが「無効電力の存在」である。(細かい機器の損失を除く)

まずは、理解しやすい「機器を動かす有効電力」から学習しよう。

有効電力とは何か

引き続き、ある回転機器を動かしたい場合で考える。
回転機器はコイルで構成されているので、抵抗成分とインダクタンス成分を持つため、下記のような回路図になる。

画像2

回転させるためのエネルギーになるのは有効電力だが、その理由としては、下図のグラフで説明できる。

画像3

グラフの横軸は実数領域、縦軸は虚数領域を示している。

この実数成分が、回転させるためのエネルギーと定義されているのだ。
電圧と電流の積が皮相電力となっており、その実数分が有効電力となる。
これが有効電力の定義である。

ここの知識もっと細かく知りたい人は、交流波形と無効電力の知識が必要になる。


無効電力とは何か

ここからを有料記事とさせて頂きます。調べると時間がかかったり、系統の学習を深くしなくては理解できない部分についてまとめております。

電験1種合格者でも答えに困る部分であったので、お役に立てると思います。時間がない方、もっと学習したい方、業務で困っている方に読んで頂きたいです。


【有料記事の掲載内容】

①無効電力とは
・なぜ無効電力が生じるのか。機器を動作させるためのエネルギーになり得ないのは何故か。
・コイル(コンデンサ)を接続した場合、有効電力が0となる理論的説明。(グラフによる説明を含む)

②有効電力と無効電力の実際の計算
・負荷が抵抗のみの場合
・抵抗ではなく、コイル(インピーダンス10[Ω]の純インダクタンス)を接続した場合

③送電系統の詳細説明
・なぜ、発電機は遅れ無効電力を供給しなくてはいけないのか・送電系統における無効電力の役割・深夜帯はなぜ、進み無効電力を供給しなくてはいけないのか・なぜ、発電機は遅れ無効電力を供給しなくてはいけないのか
・深夜帯はなぜ、進み無効電力を供給しなくてはいけないのか

【お知らせ】
いつも支援して下さる方、本当にありがとうございます。
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お蔭さまで活動することができています。
今後もブログ等で、時間短縮になる資料便利な勉強まとめ資料を無料配信したり、調べものを承ったりして、自分の価値でお返ししていきます。

【電験学習者の本資料メリット】
無効電力の本質を理解できることで、発電、送電、変電の問題に強くなる。
少なくとも、下記の問題を解く際には役に立つ知識だ。
よく出題される問題なので、頭の中で解法がイメージできるか確認しておいた方がいい。

①発電所で行う力率調整に関する問題

②発電機の運転曲線に関する問題

③フェランチ効果に関する問題

④変圧器の負荷追加による無効電力調整の計算問題

⑤送電系統における力率調整に関する問題

⑥発電機並列条件に関する問題
(並列時、発電機電圧が系統電圧より低い場合、モータリングしてしまうのだが、無効電力が大きく原因している。)

有効電力・無効電力の知識について、本記事で学習しないとしても、どこかで必ず理解する勉強をしておくこと。暗記ではなく、本質を理解しておかないと、試験本番で失敗する可能性があるからだ。

最近の電験は難易度が上がっていて、過去問通りにはほぼ出題されない上に、微妙に言葉を変えてくる。試験本番での応用力が求められる時代になった。
重要なキーワードは「本質を理解しておく」という癖をつけておいた方がいい。

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