第3話 朝、コーヒーショップ
次第に駅構内は人混みを増しはじめる。ここのコーヒーショップも店内はやや余裕があるものの、さっきからひっきりなしにテイクアウト客が訪れる。
まだリラックスしているのか、時折ケイが見せる表情はあどけなさもうかがえる。
「みんな、大変ね。こんな朝早くから、こんな混雑の中仕事行くのね・・・。
キミもそうなんでしょ?」
頬杖ついて外の様子を眺めながらケイは言った。
「まあ、似たようなもんかな」
「ある意味、尊敬しちゃう。私は無理」
「生きて行くためにはそうするしかないだろ?それに、守りたいものだってあるだろ?」
「ふーん。キミの守りたいものって、何?」
「家族かな、やっぱり」
真っ先に出た言葉だが本心だろうか?もっと他にあるかもしれない。そもそも、その家族はどうなった?
「ケイさんは?」
「ケイでいいよ。私?私はそうだなあ・・・“自由”」
意外な言葉。
「大袈裟って思ったでしょ。でもそのために、今こうして戦ってる」
自由を守るために戦ってる?どういうことだ?
少し離れた場所に警官数名の姿が見える。何かを、誰かを探している。
「朝から物騒だな」
「ほんと・・・。いや違う!!もう来た・・・」
警察から逃げている?僕らは何か重大事件に関わっているのか?
「警察に事情を話せば助けてくれるよ・・・」
「行くわよ!」
そそくさと店を出るケイの後を追った。
時々、逃げながらケイは携帯電話の画面を確認している。
“正面出て左。ナンバー3824、鍵は左後輪の上”
『インフィニティウォー』なら、直にサムやナターシャ、キャプテン・ロジャースが助けに来てくれるのに・・・。
「警察は頼れない。それにアイツらは本物の警官じゃない」
どう見ても警官にしか見えないが。
「アイツらは警官にもなるし、ここの駅員にだってなる。よく見たらキミにも偽物だって分かる」
「偽物・・・」
「急いで。走ったら目立つから少し早足で」
いや、これだけ人多かったら走れないだろ、とは思いつつ。
左に出て少しの場所に停車している車があった。グレーのNote、そこを目指す。人は乗っていないようだ。
「私がナビゲートするから」
そう言われ鍵を渡されたが、
「免許ないんだ・・・」
「ハッ、マジ?もう最悪!!」
まだ少し余裕を見せていたケイが途端に慌て出した。
「私、運転できないよ。どうすんのよ!!」
どうするって僕に聞かれても。聞きたいのはこっちだよ・・・。
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