見出し画像

「都立小石川中等教育学校」学校説明会に行ってきた

2019年度の学校説明会シーズンがスタートし、まずは昨年は見られなかった都立中高一貫校の中のトップ校、「都立小石川中学」の説明会に行ってきた。

今回は塾主催の説明会のため平日開催で、場所も校内ではなく銀座ブロッサムホール。正直、仕事がある平日は避けたいのだけど、昨年の学校主催の説明会は一瞬で定員が埋まってしまったので、行けるときに行っておかねばと。

都立中高一貫校は人気で倍率が高く、かといって私立と併願すると出題傾向が大きく異なるので対策が大変、ということだけは知っていたのだけど、いったいどんな特徴のある学校なのかは未知だった。

説明会では、「小石川教養主義」「理数教育」「国際理解教育」という3本の柱に沿って話が進められた。どの内容も大変興味深く、わたしの持っていた小石川のイメージと異なる点もあったので、感想とあわせて詳しく書いてみる。あくまでいち保護者の感想なのであしからず。


(1)小石川教養主義について

6年間にわたってクラスは文系・理系に分けず、どの教科もバランス良く学ぶ。小石川は理数系の学校というイメージがあるが、週の国・算・理・社の授業時間はほぼ均等。理科の中身をとっても、化学・生物・地学・物理の4分野すべてを学ぶカリキュラムになっており、選択制ではない。
特筆すべきが「小石川フィロソフィー」と呼ばれる課題探究型学習。全員が6年間を通して「課題研究」に取り組むが、1学年ごとに習得をめざすスキルが設定されていて、ひとつひとつ段階的にステップアップしていく様子がよくわかった。また、先生は「小学校で行うような”調べ学習”ではなく、”仮説→検証を繰り返す学習”である」と強調していた。
1・2年は基礎講座として「自分の意見を文章で表現する力」「データや資料を分析する力」「数字の処理の仕方」を学ぶ。3・4年は「テーマ設定の方法」「仮説の立て方と検証の仕方」「情報収集と発信手段」を学び、5年でテーマ設定と課題研究を深め、修学旅行先のシンガポールで英語での発表とディスカッションを行う。最後に6年で5年間の学びを論文にまとめ学内外に発信する、という流れ。

→なんといっても「小石川教養主義」に感銘を受けた。クラスを文系・理系に分けず、すべての科目をまんべんなく学ぶというスタンスは、大学受験のためには効率的ではないけれど、リベラルアーツの極み、学びの意義そのものではないかと。(それでいて大学進学実績も伸びているのだから言うことなし)
課題探究についても、新興の学校が営業トークっぽく連呼する「アクティブラーニング」「ICT教育」などの浮ついた印象がまるでなく、アウトプットを急かさずに、1年ごとに地道に着実に力を付けていく仕組みになっているのがよくわかった。


(2)理数教育について

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)認定校ということで、課題研究の他にもさまざまなプログラムを用意。理科は1年から化学・生物・地学・物理の専門教員がそれぞれ授業を担当。数学は2年間で中学の内容を終わらせる。年3回の「小石川セミナー」では、専門家のハイレベルな講演を聴く機会がある。
また、自由参加形式のプログラムでは、大学や企業と連携しての「サイエンスカフェ(年間10回以上)」でグローバルな人材と触れ合えたり、4・5年は夏休みの海外サイエンスプログラム(18年度は40名の応募に対して14名程度が渡航)のチャンスがあったり、放課後は理科室が開放されていて課題に取り組めたり、とにかく意欲ある生徒には学びのチャンスがたくさんある環境。

→理系の学校というイメージを持っていたが、課題研究は人文系・社会学系のテーマで進めている生徒もいるとのこと。息子は社会科系統のテーマが好きなので、SSHは向いていないかと思ったが、そういうわけでもなさそう。いくら文系テーマが好きでも、やはり論理的思考力というか、理系的なものの考え方の作法は身につけてほしいと思っているので、このプログラムはとても良いなあと。また、考えてみれば、天体や気象、地形や地質や地理など、理科分野で息子が興味を持っているテーマも意外と多いことにも気づいた。


(3)国際理解教育について

全学年で習熟度別の少人数授業。4年までに7割が英検2級を取得。特筆すべきは3年での海外語学研修。オーストラリアで2週間のホームステイで現地校に通うが、1人1家庭のホームステイなので否が応でも英語で話さざるを得ない。他の学校のホームステイでは、2人で1家庭が多いそう。ホームステイの様子のショートムービーもあり、現地での生活がよくわかった。
さらにこの研修では、現地のリアルな生活も体験できる。オーストラリアでは、子どもであっても自分の分は自分で朝ごはんを用意したり、自分の服は自分で洗濯をしたり、日本とは文化が異なる。身のまわりの生活面で、ひと回り大きくなって帰ってきたという保護者の感想も多い。高校受験がない分、一段上がる経験として、この研修がその役割を果たしている。

→都立で、修学旅行として(つまり全員参加で)2週間の海外ホームステイがあることに驚いた。私立によくある夏休みの自由参加型のホームステイだと、「ボクは行かない」とあっさり拒否されかねないが、全員参加でカリキュラムに組み込まれているならばしめたもの。1人1家庭ホームステイのスタイルもかなり魅力的。


最後に、こういう子どもに来てほしいというメッセージが2つ。

・小石川は大学受験のための勉強ではなく、社会に出てから活躍できる子を育てる勉強をしている。大学入試で結果を出すだけなら文理に分けた方が効率的。あえて、そうしていないところが小石川らしさ。(大学進学が目標ならば他の学校へどうぞ的なニュアンス)・自主参加の講座も多く、やってみたいと思えることに、主体的・積極的に手を挙げられる子にはピッタリの学校。(この環境を活かしきれない子にはもったいないよというニュアンス)


ほか、学校生活のことなど、以下にまとめて。

・まずは小石川生としての自覚を持たせるため、中学3年間は制服で、校則もある程度はある。逆に高校3年間は私服になり、「自主・自立」をモットーに、細かい校則もない。これは大学や社会に出たときとのギャップを減らし、自分でどうするか決める自由と責任を身に付けるため。

・都立だが、教員の異動は他の公立中学校よりは頻繁ではない。中には17年間在籍している教員もいる。教員の公募制も行っているので、小石川で教えたい、という志向で入ってくる教員も多い。

・習熟度別の授業になっており、苦手科目は放課後に個別フォローする仕組み。スモールステップで解決していくとのこと。

・実際の生徒の様子、校内の雰囲気はわからず。文化祭に行ってみなくては。

・塾主催の説明会だったため、最後に特別なデータを開示してくれたことも良かった。その塾から何人が受験して何人が入学したか、御三家との併願データについても説明あり。来場者が求めているものをよくわかっていらっしゃる、という印象。例えば、2018年度、SAPIXからの合格者は37名、うち入学者は26名。この26名の併願校は、渋谷幕張(男2・女1)、渋谷渋谷(男8・女4)、広尾学園(男10・女6)などがメイン。御三家との併願では、例えば開成を蹴って小石川を選んだ生徒が4名、桜蔭を蹴って小石川を選んだ生徒が3人ほどいた。

説明会全体を通して、かなり内容が気に入ったので、息子と夫にもプッシュしてみるつもり。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?