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フクロウとの生活 2021年9月

 今年の夏はとっても特別だった。オナガフクロウのふぐと過ごす初めての夏だからだ。オナガフクロウは、北欧、北米というかなり寒い場所に生息する種類だ。−30度〜15度の世界に住んでおり、日本の高温多湿の環境が苦手であろう。ふぐは既に5回日本の夏を過ごしていた。ただ、フクロウカフェのようなビルの中、湿度も温度も安定している場所ではなく、日本の特徴的な木造の家である我が家の環境はかなり厳しいものだろう。気をつけた点としては、除湿機やエアコンのドライ機能を使って部屋の中は40−60%に収まるように調整。温度はそこまで下げず、23度〜27度くらいで調整していた。
 ふぐにとってこの3ヶ月は変化の時でもあった。まずは換羽による羽根の生え替わりの季節。もともと羽根が所々短く飛ぶことができなかったふぐの羽根も、どんどん生え変わり、6月末には一生懸命羽根を動かして5mほど飛ぶことができた。飛翔能力をあげたいと思ったので、少しずつご飯の時に、飛翔訓練を行った。食いしん坊のふぐにご飯を見せると飛んでくるのだ。距離を伸ばし、高さをつけたり、障害物を使ったりとレベルを上げていった。飛翔訓練をやり始めてから、食欲が一気に上がった。換羽期はエネルギーもよく使うため、多めのご飯をあげていった。体重の方もどんどん重くなり、空腹時体重が268gまでになることもあった。
 ある日、ふぐの足元に大きな肉の塊が落ちていた。ペリットのように丸まって出てきた肉片。消化しきれずに肉を吐き戻したようだ。以前も同様なことがあった。過去2回は、吐き戻した後少量ずつ食事を与え、大体3日目にはいつもの量を食べるようになっていた。しかしこの時は(8月上旬)食事量を上げては4日目にはまた吐き戻すということを数回繰り返してしまった。これはまずいと思い、お世話になっている方に相談した。
繰り返しの吐き戻しは、食事量過多、食上げ方法の失敗が原因だった。換羽期は終盤で、そこまでエネルギーを必要としなくなっていた。ついつい飛翔訓練が面白くて、よく食べるからと、食事量も増やしていったことが原因。完全に調子に乗っていた・・・。8月13日を最後に、吐き戻すことはなくなった。本当に良かった。2度と繰り返さないように今後も腹八分目の量を目標に食事量を調整していくことにする。

 羽根の生え変わりでふぐが飛べるようになったことで、あもにも変化が訪れた。いままでふぐは飛べなかったので、あもはふぐのことを特に気にすることがなかったが、ふぐが高い場所へも飛べるようになり、我が家の一番高い見晴らしの良いコーナーまでも占拠するようになった。あもは細く擬態しながらふぐをキッと睨みつける時間が増えた。いつも、台所でふぐを睨んでいた。あもちゃんも、窓際などに移動することもあるが、急にふぐが隣に飛んできたり、襲いかかるようにあもに降りかかったりすることがあったので、私もやばいなと思った。あものためにリビング隣の部屋にいくつか止まり木を置き、リビングと部屋の仕切りを半分閉めることにした。夜は22時以降ふぐを繋留し、あもだけの放鳥時間を確保した。こうすることで、あもの視界にふぐが入らない状態にすることができ、あもは寛げるようになった。
 フクロウは基本的にテリトリー意識が高い。つがいならともかく、他のフクロウが同じテリトリー内で共存することは珍しい。ふぐは飛べるようになりあものテリトリーを奪おうと必死なのかも知れない。ふぐは7月からテリトリーコールのような素敵な鳴き声を聞かせてくれるようになった。オナガフクロウ特有のウルルルルルという響く鳴き声だ。
 ふぐはどんどん我が家に慣れてきているようだ。休日の昼間は、さすが昼行性、移動したり、人形やグローブで遊んだり、水を飲んだり、窓の外を眺めたり一生懸命何かしている。あもの方は相変わらず眠そうな目で座敷童のように窓際でぼーっとしている。
 8月上旬までは、あもはよくふぐを睨んでいたが、最近は慣れてきた様子だ。逆に夜中にあもがふぐを蹴りにいくこともある。2羽の仲は縮まらないものの、どんどん我が家の環境に慣れてきているようだ。お互いがのびのび生活できる環境を作れるように今後も努めていこうと思う。
 さてさて今度は冬が来る。ふぐにとっては大好きな季節。あもにとってはぬくぬくしたい季節。どんな3ヶ月になるだろうか。

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