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夜をもてあます

そもそも夜が大好きな人間で、すぐに昼夜逆転してしまう人間だ。
ひとり暮らしの気楽さで、好きなことをしていたら朝になってしまったことなど数えきれないほど、ある。

最近の私は、なんと、夜をもてあましている。
ひきこもりんが続いていて、大体皆さん事情はお察しだろうが、現在絶賛不眠中である。それも中途覚醒と早朝覚醒のコンボだ。
もちろん主治医からは薬を処方されてはいる、それも結構強力な部類のものだ。しかし、薬の威力<私の不眠で、目を覚まして恐る恐る時間を確認すると「まだ1時間半しか経ってないやんかーっ!」
の繰り返しだ。要するに細切れに何度も睡眠を取って、どうにかこうにかしのいでいる状態である。

しかしこの細切れ睡眠、合間に睡眠休みとでも言おうか、起き出してお茶を飲んでみたりする時間も必要で、仮に6時間睡眠を目論むと8時間程度の時間を見ておかないとダメなわけだ。

まあ、それはいい。もう慣れたし、眠れないんだもーんで開き直ったから。

問題は夜をもてあましてしまうことだ。
こんな状態なので集中力がなく、本が読めない。映画も観られない、音楽も聴けない。テレビは持ってないからスルーして、文章を書くにもなかなか苦労する。要するに私の好きなことがぜんぜんできないので、ベッドに入るまでの夜の時間帯をどう使えばいいのかわからないのだ。

10代の頃から夜は一番の友だちだったような気がするほど、私にとっては重要な時間帯だった。本を読む。音楽を聴く。試験があればとりあえずラジをを聴きながら勉強の真似事をする。一番熱心だったのは音楽を聴きながらの妄想だ。あんなふうになりたい、こんなことが起きればいいなと今から考えると甘っちょろいことこの上ない妄想を繰り広げていた。10代は10代でとても苦しい。その中でのささやかな楽しみだったのだ。

今の私には10代の頃のような妄想をするパワーもない。時間が経過してある程度現実的に物事を見るようになってしまったからだ。これを世間では大人になるというらしいが、大人になんぞならなくていいから、10代の妄想パワーが欲しい。10代の時のように新しい音楽を聴いて雷に打たれたようになりたい。10代の頃のように小説にノックアウトされて、全文を原稿用紙に模写したような熱意が欲しい。

もうそれができないと知っている私は、闇が降りてくる時間になるとどうしていいのかわからず、仕方なく夜をもてあましながら虚しく過ごす。



©madokajee

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