①レアルマドリードvsセビージャ レビュー

はじめまして。
モドリッチに感銘を受けてレビューしてみました。

セビージャは5-3-2 マドリーは4-3-3。
 マドリーはブラヒムをトップ下に置いた4-3-1-2で来ると思いきや4-3-3だった。選手でいうと、今節からリュディガーが復帰。しかしカルバハルとカマヴィンガがサスペンション、ホセルが直前に怪我で欠場となっている。
セビージャはラモスを中央に据えた5バック。ラモスのフィジカル面のカバーなのかもしれない。選手でいうと、アクーニャやラメラがいない。あと我らがマリアーノさんもいない。
ピスファンで勝ち点2を落としたあの時のセビージャとは監督も変わってもはや別チームになっている。そんなセビージャに対してマドリーはどう戦ったのだろうか。


 マドリーはいつも通りの戦い方をチョイスしてきた。クロースとチュアメニが左右の配球係でここからボールが出てくる。ヴィニシウスとバスケスは大外でロドリゴとブラヒムはライン間、メンディとバルベルデは絞った位置。マドリーの大きな狙いはヴィニシウスにたくさん仕掛けさせること。ナバス対ヴィニシウスならヴィニシウスが有利と踏んで、左からこじ開けようという作戦。ロドリゴを近くに置いておけばヴィニシウスとの化学反応で何か起きるかもしれないということで左寄りに配置。こんな感じの設定だと思う。あくまで本命は左サイドで右サイドはほぼ囮。ブラヒム・バルベルデ・バスケスの三角形でお茶を濁しながらいけたらいく。
 これに対してセビージャがどのように守ってきたか。


 セビージャは「マドリーの攻撃回数を減らす」のではなく「マドリーの攻撃に迎え撃つ」戦い方を選択した。いわば真っ向からヴィニシウスと勝負する形。具体的には、ヴィニシウスに対してオリベルトーレスとナバスの2人体制、バデorラモスも入れると3人体制で対応することでヴィニシウスの優位性をかき消した。これでナバスは縦突破されないことに集中し、カットインにはオリベルトーレスが対応するという形が取れた。ヴィニシウス・ロドリゴ・メンディの連携にはスマレを含めた4人体制でライン間をコンパクトにすることで対処した。ロドリゴやメンディがボールを受けても狭い空間なら対処可能。ニアゾーンランにはバデがついていけば良い。こうした形でマドリーの左サイドを封じ込めた。
封じ込められたマドリーはヴィニシウスがより仕掛けやすい状況づくりとして、素早いサイドチェンジからオリベルトーレスを間に合わせないようにしようとした。しかし、そこに対してもセビージャは対策していた。配球係のクロースに対してエンネシリがしっかりとプレスをかけていた。これによってクロースの時間を奪うことができ、ロングパスを封じた。エンネシリが間に合わない時はオリベルトーレスがプレスをかけていたので、クロースに対する意識は相当高かったように感じる。またイサークロメロは逆サイドの配球係であるチュアメニをマークし、配球係間の直接的なサイドチェンジだけはなんとしてでも封じようとしてきた。

 コンパクトな守備とヴィニシウス対策を徹底してきたセビージャに対し、前半はほとんど何もさせてもらえなかった。個人的には、セビージャが切り捨てている部分、今回でいうとメンディや2CBのナチョとリュディガーが違いを生み出せるといいのになぁと思う。得点取り消しとなったシーンやバスケスの裏抜けを考慮すると左サイドの守備は怪しい。後半は何とかしてセビージャの堅守を崩したい。


 後半、マドリーは選手交代はなかったが戦い方を少しだけ変えてきた。一番大きい変更点はメンディが内側に絞るのをやめて外にいるようになった。狙いはオリベルトーレスを釣りだすこと。オリベルトーレスを引っ張り出せるといいことが2つある。1つはヴィニシウスとの距離が遠くなり、サポートが遅れること。もう1つはコンパクトだったスペースが広くなるのでロドリゴを生かせるようになること。これらを狙ったものだと思う。
 他の変更点でいうと、右サイドも少しいじった。左サイドにボールがあるとき、ブラヒムが積極的に関わろうとしていた。前半もライン間で受けようとはしていたが、後半には裏抜けの動きが多くなっていた。バルベルデがバイタルエリアまで上がっていることが多かったので、ブラヒムで相手を押し込んでバルベルデのミドルを狙いたいという意図だと感じた。また、バスケスが大外まで上がらなくなった。バルベルデが上がった分の穴埋めだと思う。

 後半が進むにつれてセビージャの選手は足が止まってきて、プレスが遅れはじめた。特にオリベルトーレスはヴィニシウスのところまで戻り切れなくなってきて、ヴィニシウスのカットインからのチャンスが増え始めた。狭かったスペースもどんどん広がっていって、ロドリゴがライン間でボールを引き出して前を向いて仕掛けるみたいなチャンスも増え始めてきた。しかし、得点するには至らない。何かが足りない。あの男が出てきたのはそんな状況だった。


 74分、両チーム同時に選手交代。まずはセビージャから。オリベルトーレス、ナバス、イサークロメロをスソ、フアンルサンチェス、ベリスに。ヴィニシウスを抑える右サイド2枚とチュアメニ番を新しくして、守り切る姿勢を強めた。次にマドリーはナチョに代えてモドリッチ。順番的にはマドリーから交代していたが、アンチェロッティはおそらくセビージャの交代に合わせて交代したと思う。これは完全に推測。
 マドリーがモドリッチを投入して手に入れたのは配球部の優位性。セビージャの2トップに対して配球係を3人用意することでプレスをいなせるようになった。サイドに近いモドリッチとチュアメニはもちろん、サイドから遠いクロースもほったらかすと精度の高いロングボールが飛んでくるので制限をかけないわけにはいかない。その優位性プラスエンネシリの疲労もあって、配球部ではかなり好き勝手できるようになった。

 それで困ったのは入ってきたばかりのスソ。モドリッチがフリーでボール持っているけどエンネシリは間に合ってないから自分が出ていくべきか。でも出ていくとメンディがフリーになるし、ロドリゴのスペースも広くなるし、ヴィニシウスまでの距離も遠くなる。

 しかし、モドリッチは配球だけでなく侵入もしてくるので意識しないわけにはいかなかった。それもあってスソは若干モドリッチ意識の前がかりなポジションをとる。だが、クロースの配球力はすさまじくてモドリッチに食いつく素振りを見せると長い球でヴィニシウスに出されて戻りが間に合わない。どうしようか。何とかしないといけない。

 そんなことを考えているとまさかのモドリッチのゴラッソ炸裂。出てきて5分の38歳に仕事をさせてしまった。

 失点してからセビージャは5-3-2から4-4-2に。オカンポスを一列あげて4バックにした。また、ハイプレスをかけるときにはスマレがクロースまで出てくる4-3-1-2の形にしてきた。そんなセビージャに対してマドリーは、無理してボールをつながず、ボールを持たせて撤退守備でやり過ごすようにシフトチェンジしていった。そしてそのまま試合終了。1-0でマドリーがベルナベウで勝利を飾ることができた。

 試合の分岐点はやはりモドリッチ投入のタイミング。相手の交代を読んでさらに先手を打つ。たまたまかもしれないがたまたまじゃないような気がする。アンチェロッティはそういうことをする人だと思う。そしてアンチェロッティの持ち込んだ形からではなかったがモドリッチが活躍して勝利した。采配ズバリ的中である。今期のアンチェロッティはこういった選手のやりくりが過去一で上手い。

 次はアウェーのバレンシア戦。昨シーズンにメスタージャではいろんな意味で苦い思いをしたので、その借りを返したい。次はベリンガムも復帰しそうなので、またアンチェロッティの魔法に期待したい。

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