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『魔女の夜』【#まどか観劇記録2020 42/60】

配信視聴ながら戦慄した作品です。

舞台はとあるアパートの一室。

STORY
深夜、一人暮らしの女性マネージャー進藤さゆり(鈴木杏)が眠っている。
そこに腕に傷を負った女優の真島友紀(入山杏奈)が現れ、その寝顔を見下ろしている。
目を覚ましたさゆりは、友紀の突然の訪問に驚く。
というのも、友紀はこの家を知らないはずだから……
(公式サイトより)

二人しかいない、二人の会話しかない、これだけシンプルなこの作品にどれだけ振り回されたことか。
なんて脚本だろう。なんて演出だろう。そして、なんて芝居だろう。


女優ふたりがすごすぎる

舞台上のたった二人の会話にどれだけの情報が隠され、どれだけの感情が潜み、どれだけの事実があったのか。結局事実とはなんだったのだろう。

引っ張る鈴木杏

さすが鈴木杏さん。読売演劇大賞・最優秀女優賞も当然のごとくの圧巻の演技でした。入山杏奈さんとの芝居をひっぱりつつ、全てを受け止め揺さぶるような懐の深さを感じました。

彼女のお芝居はとてもリアルで、けれどそれだけではなくて、以下、とても抽象的な表現になりますが、深い森の中の沼を覗いている気持ちになります。覗いても覗いても底の見えない沼のようで、けれどそこは濁ってはおらずとても透明性の高い沼で、透明だから底が見える気がするのに見えている底は本物ではなくて、気づいたらさっきまでと色も違っている。そしてその沼に沈んで意識を失う最後に掴むものはあたたかさだったりする。この作品を観ながら感じた鈴木杏さんのお芝居の空気はこれでした。

うまい表現が見つからないくらいにすごい演技でした。
去年の『殺意 ストリップショウ』を観ることができなかったのをいまだに公開しています。これからずっと見続けたい女優さんです。


攻める入山杏奈

狂気と必死さを込めた視線が印象的でした。
役の性格もあるのですが、心のうちに込めた想いの表現が素晴らしかったと思います。マネージャーと女優とどちらの役も謎だらけで、秘密だらけでお互いがお互いに揺さぶりをかけていくのですが、その時の入山さんの目がすごかった。感情を抑えながらも、漏れ出てくる何かが目を通して見えてきて、配信ならではの視点でカメラがその表情を抜いた時、背筋を冷たいものが走りました。

この二人の気迫は生で見たかったなーーーー!!!


イマーシブ・4K・配信

この作品は、「高度映像配信プラットフォームを活用した多拠点映像配信環境の構築によるwithコロナ時代の新しい鑑賞環境サービスの提供」の効果測定を目的としたというイントロダクションがありました。
ざっくりまとめると、コロナ禍で一つの場所に人を集めにくくなっている現状に対し、高性能の映像配信技術を使い、多拠点に同時に質の高い配信をする試みが行われたということです。

“超”凄腕の映像クリエイターと演出家が(このnoteを書くために再確認したらスタッフ3人だけって本当ですか…?すごすぎる…!)、“超”高度な技術を使って、ライブで実演会場とは違うものを創り出して配信した、ということらしいです。すごすぎて理解がついていかないです。

観劇形態は4つから選べました。

① 劇場での実演観劇
② ライブ配信上映を映画館で
③ スマホ等で観るモートライブ配信
④ アーカイブ配信(2021年3月上演・これから)

おそらくこの4つはどれも違っていたのではないかと想像しています。私はリモートで観ましたが、会場セットの白い壁にもたくさんの映像が映されていました。それらは、二人の女性の心だったり、情景だったりと効果的に映し出し、観客に登場人物の内面と外面を同時に観ているような感覚に惑わせました。会場で見えているものとは違った形のクリエイションとなり、配信の電波に乗ったのだと思います。断定できないのは私がリモートしか見ていないからですが、実演されるものをライブ配信とはいえ、別の場所で見る時に感じる少しの空気の違いのようなものがこの作品においては感じられなかったのです。

それが、イマーシブ(=没入)という言葉が掲げられている理由かもしれません。

演劇を見ているということを忘れるような絶妙なカメラ画角や映像操作でした。始まった時は、切り替えがうまいなあなどとリモートを観ている観客の視点だったのですが、次第に自分が見たかったものをそのタイミングで見られているように錯覚してしまうほど、私と映像がリンクしているのか、私が映像に寄っていったのか、なんだか作り手の思う壺にはまった気がします。

しかし、映像の作り方が優れていたというのは、ドラマや映画のようではなく、あくまで演劇としての映像であったことも印象深かったです。(観客としての存在が許可されているという、同じ映像でも映画と舞台の映像配信とそして映像化、その違いについては今回をきっかけによく考えてみたいと思っています。)

そして、このたくさんの操作がなされた映像がライブで配信されているということで更に驚きを隠せません。
こんな角度でキャストの表情を抜くことができるなんて、と思うようなシーンもあり、実演も行いながら、ライブで同時に、どうやったらできるのだろうと考えさせられます。少なくともリモートで見る舞台にはカメラなんて見つからなかったし、あの映像は一体どこから…。

おそらく来月のアーカイブ上映でもまた一ひねりしてくるのではないかと期待をせずにはいられません。楽しみです。

1時間とは思えぬ、そして二人と三人の作品とは到底思えぬ、濃厚な作品でした。観ているだけで、とても疲れました。素晴らしい作品でした。

そして何度も言いますが、鈴木杏さんと入山杏奈さんの二人の女優はとてもすごかったです。


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2021年3月5~8日、全4回のヒカリエホールでのアーカイブ上映が決まっています。
チケットは下記にて発売中です。

https://www.confetti-web.com/search_result.php?search_text_post=%96%82%8F%97%82%CC%96%E9&btn_submit=


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