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NO ウィンタースポーツ YES マイライフ(スキー編)

「雪国見学」という名のスキー体験学習があった。小学五年生のころだ。

私が暮らしていた場所から日帰りで行ける「雪国」は滋賀県だった。琵琶湖で有名な滋賀県は、場所によっては雪がたくさん積もっているのだ。豪雪地帯、とまではいえないかもしれないが立派な雪国である。

私はこの「雪国見学」のことが憂鬱で仕方なかった。これまでにスキーを体験したことが一度もなかった。それに、三歳年上の姉が「雪国見学」に行ったときの感想が「最悪だった」と聞かされていたことも一因だ。運動神経の悪い私にとって、生まれて初めて行うスポーツが、難なくクリアできるはずがない。

当日、風邪でもひいて欠席できないものかと考えたけれど、休みたいときに限って、風邪はひかない。元気いっぱいで、雪国見学の当日を迎えたのだった。

「もしかしたら、意外とスキーの才能があって、板をつけたらスススーっと滑れたりして?」なんて、ほんの少しだけ、淡い期待をしていたけれど、その期待も見事に砕け散った。

一度もスキーをしたことがない入門者のグループをくまれ、板の着け方から指導してもらった。同じ入門者グループのメンバーでも、サッとこつをつかんだ子たちもいた。その子たちは早々に入門者は卒業し、小高い丘から滑って、キャッキャと楽しそうだった。(リフトは使用していなかった)

しかし、残念ながら私は入門者グループで、半日くらい半泣きの時間を過ごした。とにかく、スキー板が邪魔だった。板は重く、すでに滑った後の雪の筋に板は勝手にめり込んでしまう。そうこうしているうちに板と板がクロスして、ばったりと転ぶ。この繰り返しだった。永遠に。

はじめて体験してみることが、意外とすんなり上手くできて、「なあんだ、簡単やん」なんて、絶対に有り得ないのだと、悔しくて涙をこらえながら空を見上げた。

ただ、入門者グループのみんなが一向に上達せず、私以外にも、悔しくて目に涙を浮かべていた子も何人もいた。「スキーなんて二度としない」という空気が流れはじめていたため、先生たちも焦ったのか「もうスキー板をはずして、ソリ遊びしよう」と提案しだした。

入門者グループは全く滑れなくて楽しめなかったのだけれど、普通にスキーが上手な子たちにとっても、リフトで山の上までいくこともなく「単なる小高い丘」から滑るのは飽きてしまったらしい。そうして、何人かはすでにソリで遊んでいた。

転んでぶつけたおしりや、足が痛くて、ソリ遊びよりも正直なところ早く帰りたかった。けれど、「もう私は着替えてバスで待機します」ともいえず、しぶしぶソリで遊んだことを覚えている。


ほうほうの体で帰宅したところ、姉に「どうだった?」と聞かれたので「お姉ちゃんから聞いていたとおり、最悪やった」と答えた。すると「明日も、辛いねん!」と、姉はにやりと意味深に笑って去っていった。「ぶつけたところが、青くアザになるんかな?」と軽く考えていたのだけれど、翌朝、これまで経験したことのない筋肉痛に襲われ「スキーには二度と行かないぞ」とかたく心に誓ったのだった。

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