風の奏でる音に耳をふさいで

春の嵐と呼ばれる、ひどい雨風が吹き荒ぶ。

それでなくても、私の住まう場所は海風の影響を受けて春先は強い風が吹く。

この場所に引っ越してきてもう七年が過ぎようとしているけれど、なかなか馴染めないことがある。それは風が奏でるメロディーだ。

丘の上に大きな鉄塔が立っている。強い風が吹いたとき、その鉄塔のあいだを風が通り音が響くのだ。

それはとても不気味な音色で、初めて耳にしたときザワリと心が波立った。ピュー、ともゴウッとも違う、言葉にしにくい音色。一匹だけ取り残された恐竜が、仲間を探し求めて鳴きわめいているようにも感じられる。

夏や秋に訪れる台風だと、その音色はあまり聞こえない。春先の強い風の夜にばかり聞こえてくる。

音が聞こえないように、がばりと布団にくるまって耳をふさぐ。側では猫が不安そうな表情で、「あの音はなあに? こわいよ」と身体を寄せてくる。

大丈夫、大丈夫。
恐竜は、ここまではこられないよ。

猫を落ちつかせるためか、はたまた自分自身に言い聞かせているのか。猫のやわらかな毛を撫でながら、私は猫に身体をぎゅっと寄せた。

柔らかな猫の温もりを感じながら、耳をふさいで夜をやり過ごす。

#ポエム
#詩

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間詰ちひろ

つれづれなる日々のこと

コメント3件

私の塾の裏が空き家になっていて、そこによく猫が来ます。ときどき窓をあけて話をします。自分の怖いけど寄り添う、という。大丈夫、大丈夫、恐竜はここまではこられないよ
↑書きかけで投稿されてしまいました。寄り添う、その光景が、せつなくて、それでもそれしかそのときはなくて。そんなことを想いました。
藍澤誠さん、コメントありがとうございます。大丈夫だよって言いながら、猫の身体を撫でてあげても、ずっと怖がっているんです。時々私の顔を見る眼には、はっきりと不安の色が漂っていて。どうしてあげることもできなくて、ただ寄り添うしかないんですよね。猫って本当に不思議な生き物だなと思います。私の不安は吸い取ってくれるのに、猫の不安を、私は拭ってあげられないんですよねぇ。
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