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知らないものは、やっぱり怖い。

「ちょ、ちょっときて! 見たことない虫が網戸にとまってる」

数日前の朝のこと。仕事に出かけようかと思って外に出たら、見たことのない虫がいた。少し距離があったので、正確なサイズを測定したわけじゃないけれど、八センチくらいの大きさはあった。

半透明の羽が大きい。でも、羽の形は長ぼそくって、チョウやガとは、形が違っている。なんだろう? 鱗粉を振りまくタイプの虫だったら、毒があるかもしれない。わたしはあまり虫が好きじゃないので、ちょっと気味が悪かった。

夫がそばにいたので、思わず呼びつけると「ヘビトンボのなかま」とだけ言って、たいして興味もなさそうだった。

「え? あの虫、メジャーなやつ? わたし見たことないんやけど?」恐る恐る聞いてみるけれど、「普通にいるでしょ、あれは」と、わたしのことをバカにしたような口調だ。

ヘビトンボ。聞いたこともない虫の名前だ。

虫は苦手だけれど、「普通にいる」といわれたら、気になって仕方ない。通勤の電車の中で「ヘビトンボ」とググってみる。

虫が嫌いな人もいるだろうから、詳しくは表記しないし、リンクも張らない。カゲロウに似た昆虫だということだけ、記しておく。

ただ、幼虫は昔から「孫太郎虫」とよばれて、民間療法の薬として使われていたり、長野県の一部では幼虫は「ざざむし」とよばれ食用されているらしい。ざざむしは聞いたことある。ざざむしの成虫がヘビトンボ。ふーん。

知ってしまえば「なーんだ、全然怖くないじゃないか」と、遠巻きに見る分には怖くない。

子どものころには、「オオスカシバ」という虫が怖かった。「オオスカシバ」という名前を知ったのは、割と最近のことだ。(これも、リンクしませんので、気になる方はお調べください)

子どものころは、庭にとんできた、ハチのような、ガのような、変な飛び方をする奇妙な虫が来たと家の中に逃げ帰っていた。変な飛び方、というのは、このオオスカシバという虫は「ホバリング」しながら蜜を吸うという特徴があるという。

それが、子どものころには気味が悪かった。一定の箇所に、ずうっと止まっているのが、ほかの虫にはないし、見た目はハチっぽいけど、もふもふした感じで「ぜったいに毒をまき散らしている」と思っていた。大人になってからググってみれば、毒は持っていないらしい。ふーん。そうなんだ。でも、やっぱり知らなければ、ちょっと怖い。

わたしの場合は、知らない、見たことのない昆虫とであったとき「やばい、毒を持っているかも」と考えることが多い。

けれど、これは昆虫に限ったことじゃない。知らないこと、見たことないもの、未体験の出来事。これまで、自分の身近には見当たらなかったものにふれるとき、「これは、ちょっと遠ざけたほうがいいかも」と、感じてしまうことが多い。

単純に、怖いのだ。自分の知らないことのほうが、世の中にはたくさんある。けれど、目の前に現れたものを、すぐさま受け入れていいのかどうかが分からない。疑う、というよりは、怖い。

外からは見えない閉ざされた箱のなかに、手だけを入れて「箱の中身はなんだろな?」と当てるようなゲームをしているようなものだ。見えていない、その正体が何か分からないから「怖い」と感じてしまうのだろう。

知ってしまえば、なんてことないのだろう。けれど、初めて出会ったときはやっぱり怖いと感じるのは、しかたのないことだろう。




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