一攫千金を夢見る夫と、職務質問におびえる妻。

「この本買ってくれない?」夫はLINEで、一冊の本のURLを送ってきた。

その本のタイトルは「地下生菌識別図鑑」というもの。ああ、夫よ。どこまで本気なんだ。

それというのも、一ヶ月ほど前のことだろうか。夫はあるテレビ番組を見ていた。その内容は「日本産のトリュフを見つける」という内容だった。私はその番組をあまり真剣に見ておらず「ふーん」といって途中でお風呂に入ってしまった。

夫はその番組をかなり真剣に見ていて、ある条件のもとに日本でもトリュフが生えていることがあるというのだ。アカマツのそばに松茸が生えるみたいなもので、トリュフが生息する条件があるらしい。

夫は「うちの近所でも、条件がそろえばトリュフが生えているかもしれない」と言い出した。そうして、その条件が揃っていそうな家から駅までの間に生えている街路樹のまわりや、公園などを探し歩くようになってしまった。街路樹の木の根元、少しだけ見えている土の部分をじっくりと見てまわるのだという。

……あやしい。見るからに不審者そのものじゃない?

「ねえ、それあやしくない?」夫にそのまま伝えてみたら、夫も「うん、あやしいよね」と笑っている。……自覚はあるらしい。

「木の根元とかグルグルジロジロ見てるなんて、怪しい人がいます、とかって通報されたらやばいよな」と自覚があるはずなのに笑っている。トリュフみたいなキノコも見つけたけど、ちょっと違うかもしれないなどと、どうも楽しそうだ。

そうして、夫は「地下生菌識別図鑑」の本を購入したいと言ってきた。サブタイトルは「日本のトリュフ。地下で進化したキノコの仲間たち」とある。わたしも若干の興味本位で本を購入した。

ちらりと本を見てみると、かなりクレイジーな内容だった。どうやら、日本でも本当にトリュフは生息しているようだ。トリュフは「イボセイヨウショウロ」という和名。夫が見つけた、トリュフに似ているというキノコは「ツチダンゴ」に属する地下生菌の一種だったようで、夫のトリュフ探索はまだまだ続きそうだ。

見つけてもトリュフを採取するわけはなく、とりあえず生育環境を調べてみたいらしい。

夫がトリュフを見つけるのが先か、それとも職務質問にあうのが先か。どちらにせよ、私はちょっと心配である。


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間詰ちひろ

つれづれなる日々のこと

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