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きっかけなんてどうだっていい

「なにそれ、告白してるの?」

調子に乗って、熱燗をたのんだ。笑いながら震える手で、あつくて持ちにくいおちょこをこぼさないようにゆっくり置く。

「そしたら告白するよ。付き合おう。」

「ごめん、今日会うの厳しそう」
友達との予定がなくなり、おとなしく大学から家路につこうとする。するとしばらく見ていなかった顔と偶然出くわす。久しぶり、なんて談笑をしていると相手もこのあと暇だという。

大学から数駅先の街へ。バッティングセンターで体を動かしたと思えばミスドでドーナツをむさぼる。ゲームセンターで散財する。たのしい放課後。

そとで目一杯あそんでいるときには話せなかった今日までのお互いの近況報告がはじまる。おぼえたての日本酒ですぐに顔が赤く染まりつつ口を開く。

「相変わらず講義とバイトだし、いつものみんながいる大学生活はたのしいね。あぁ、あと彼氏と別れた。」

「おれも相変わらずバンド活動。さいきんやっと面接に受かった居酒屋のばいとしてる。あとおれも別れたわ。」

友達になったあの日から2年間。初めてお互いが「特別な存在のいない友達」という括りになった。

「でもよく考えれば、おれたち付き合ったら相性良さそうじゃない?」

付き合う前によくある恋の駆け引きなんかをしてるときだったら、こんなセリフ笑いながら返せるはずがない。ましてやそれは告白をしているのか、なんて確認をわざわざ言葉にすることなんてナンセンス。

そのくらい想像なんてしてなかった。
でも、そうですよ告白ですよ、という次の発言で決定打が打たれる。告白をしてくれているのだと。

いままでの2年間をとっさに振り返る。
みんなでドライブしに行った日、テスト前に朝まで勉強した日、留学先での思い出。
断る理由がまるっきり思いつかなかった。


「特別な存在のいない友達」から「特別な存在」に変わったあの日。

友達に報告をする度に驚愕をされる出来事が起きたあの日。

あれからもうすぐ6年半が経つ。

きっかけなんか、どうだっていい。そう証明できるのかもしれない。

.。oO(おこづかい