本作の魅力
「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」をまだ読んでいないにも関わらず、本記事に辿り着いた方がいらっしゃるかもしれません。
そんな方の為に本作の魅力を語らせてください。
本作はポケットモンスター世界に強いリスペクトを持ち、真摯に向き合って執筆されており、実際にポケモンがいて、ポケモンリーグという機構があったら、人々の生活はこういう側面を持つんだろう。という強い納得感があります。
主人公の立ち位置は、カントー・ジョウト地方のリーグトレーナー兼エッセイストです。ゲーム的な強さで言うと「ポケモン剣盾本編のクリア後に挑戦できるトーナメント」に時々出場しているモブトレーナーのようなイメージで大体合っていると思います。
剣盾が発売されるより4年程前(2015年)から本作は発表されているのですが、ポケモンリーグを興行として考えた本作の設定は、かなり剣盾に近いものとなっており、本作の設定が練り込まれていることが分かります。
赤緑から始まり現代に至るまでの対戦環境で流行ったパーティーや戦術に対してのエピソードなどもあり、リーグトレーナーである主人公が「あめふらしをした後にだいばくはつして退場するマルマイン」を使用することを当然とする戦術の流行に激怒するなど、この世界を生きるリーグトレーナーの視点で描かれる本作は必見です。
絵を描くついでにこんな記事を描いちゃうくらいには本当に大好きな作品です。
※注意※
本記事には、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」についてのネタバレ、及び本文の引用が多分に含まれています。もし、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」をまだ読んでいないにも関わらず、本記事に辿り着いた方は、ここから先を読む前に、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」を読んでください。
私が最も好きなポケモン二次創作小説です。ぜひ、初見での感動を皆様にも味わっていただきたいです。
作者:rairaibou(風)
本記事の作成の意図
大好きなこの作品を読み進める中で、朧気ながら主人公モモナリの姿が脳裏に浮かび、それを形にしたいと思いました。その際に作成したメモの量が思ったより多くなったので、次回のファンアート作成時にも読み返せるように記事にしました(ついでに製作過程も付けて)。
私は文学作品に明るい訳ではないですが、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」の作者rairaibou(風)氏は登場人物の外見の描写をほとんど行わず、言語によってのみ表現できることに情熱を注いでいるように思います(私ごときが内心を推し量るような真似をして大変おこがましいですが…)。そんな信念のある作品のイラストを勝手に描いちゃう訳なので、私の抱いている誠意が欠片でも多く伝われば幸いです。
イラスト制作準備
①きっかけ
以前に1枚だけモモナリのファンアートを描いたことがあります。
このときの私の画力では私の脳内にいたモモナリを描くことはできなかったため、モモナリのパーティーと、モモナリの右腕だけを描写しています。
※右腕の傷はガブリアスがそれを乗り越えた事に意味があると思い敢えて描写していました。
このイラストから3年ちょっと経ってそろそろ画力もマシになってきたかという所で、rairaibou(風)氏のこんなツイートを目にしました。
こういうのが大好きな私の脳みそにビビっと電流が走り、まずはザックリと頭の中のモモナリのイメージを出力するようにラフを作成しました。
(見せられないレベルの落書きラフをいくつか作成しましたが、最終的に採用した構図はこちらです。)
②作中での描写まとめ(ネタバレ・引用を過分に含みます)
思うままにラフを作成した後、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」を全編読み返し、作成したラフとのイメージに齟齬がないか確認しました。
そのついでに中年期のモモナリの印象を形成しているであろう描写をメモしていました。そのメモの一部を以下にまとめます。
■描きたいモモナリの時期
この年表でいう所のモモナリ30歳以降をターゲットに絞ってイラストを描きます。Aに昇格してから暫く経っているようなイメージです。
その前提で、下記に描写の引用をしていきます。
■モモナリの外見に関する描写
ダサすぎず、カッコよすぎず、奇抜すぎず、平凡な服装で描く必要がある。
傷跡を見せない為に長袖を着用しているが、ガブリアスの為に是が非でも隠すという感じではなく、主に大衆向けの様に思う。
こういう服やアクセサリーも持っているということで、イラスト化の際に解釈、表現の幅が広がる要素
仕事柄メモを常備していそうなので、胸ポケットなり、収納箇所がある服にしたい。
どんな服装でもバトルするのだろうが、作中の描写を通して、戦いづらそうな服装はそもそもモモナリ自信が選ばないように思う。
右手で届く位置にボールがあること、おそらくモモナリが右利きであることが分かる描写。
「セキエイに続く日常 88-家庭教師」にて、相手が次に繰り出すポケモンの予想の仕方を話す場面があるが、この話と組み合わせると、モモナリのボールの配置は右腰(右手の届く範囲)に6個全部を配置しているんじゃないかと想像しました。
※右腰に3,左腰に3のような配置だと、付き合いの長いゴルダック、ジバコイル、アーボック(手持ちに加えていれば)や、エースのガブリアスを右腰に付けて、それ以外を左腰に配置するといった、ある程度対戦相手に次に繰り出すポケモンを推測されやすい配置になってしまいそう。
■大衆から見たモモナリの印象の描写
■知人から見たモモナリの印象の描写
■ガブリアスについての描写
③イラストで表現したいこと
誇張無しにモモナリを2,3周読んでいた事もあってか、ラフを描いてからの追加の1周でもモモナリの見た目自体にイメージの齟齬はあまりなかったです。
描きたいイメージがより鮮明になったので、少し整理しました。
「②作中での描写まとめ(ネタバレ・引用を過分に含みます)」で引用した要素に矛盾しておらず、そして、モモナリを知らない人間が受ける印象と、内面を知る人が受ける印象のその両方をイラストで表現するのが今回の一番の目標になります。
■イラストでモモナリを知った人に与えたい印象
作中でのライトなリーグ視聴者層や、モモナリの立場を知らない一般人が抱くであろう印象と同じものを表現したい、
一言で表すなら「なんとなく平凡そうなイメージ」。
■本作の読者に与えたい印象
作中でモモナリを知る人(ある程度見る目がある人)が彼に感じるであろう、彼の異様さ(バトルの最中もしくはバトルの直前、直後でありながら、ほとんどの場合、常に自然体であること)を表現したい。
■イラスト的な妥協
イラスト作成時のコンセプトとして、バトル場に身を置きながら自然体である様子を描きたいと同時に、イラストとしてモモナリを主役にするにあたり、どうしてもガブリアスより前にモモナリを立たせたかった。
rairaibou(風)氏のポストが着想なので、イラストに台詞を付けるなら「もう終わりかな」としたいのですが、それはモモナリの中でバトルが確実に決着したと確信を持っていない事を示しているように思います。
ガブリアスより前にモモナリが居たとしても、モモナリがそうしても良いと判断した程度のトレーナーの実力であれば、不意を打とうとしてもガブリアスが間に合うだろうし、そうでなくてもボールの中の相棒が黙って見過ごさないとは思いますが、違和感が少し残ります。
また、野試合であるならそれでもいいんですが、公式試合での一幕を切り取ったものだとするなら、本作での下記描写と矛盾が生じてしまいます。
少し気になる要素は残りますが、SNSにアップする前提でモモナリの宣伝の側面も持ったイラストであることを考えると、1枚のイラストとして映えるものにしたいため、今回の構図に落ち着きました。
(単純に私の力不足でもあると思います。)
■イラスト化するにあたって押さえておきたい要素
髪型:作中での描写からセットなどはしておらず、またモモナリの視界を邪魔しない長さであること。リアル思考に寄りすぎかもしれないが、平凡さを出すために黒髪
顔の造形と体格:若すぎない(30代前半でも通用するか、アスリートなので若々しく感じる分には違和感にならないと思う)、平凡(かっこよすぎない)、たくましい感じ
服装:平凡、いつも着てそうなジャケットかどうか、腰のモンスターボール(右手側に必ず配置)
目線、表情:日常の延長、まだバトルが続くんじゃないかという少しの期待、バトルが弱い者を見る柔和な目(「もう終わりかな」という台詞に会う感じ&ガブリアスより前に立っている状況)
ガブリアスのサイズ感:図鑑だと1.9mなんですが、特にポケモンレジェンズアルセウス以降、サイズ感に自由度が出たと思います。具体的なサイズは明記しませんが、強大なイメージに素直に従って大きめに描きます!!!
イラスト制作過程
①ラフのブラッシュアップ、構図、色の仮決め
複数回に分けてラフをブラッシュアップしていきます。
三分割構図を目安にキャラクターの配置を微調整、視線誘導も意識しつつ、イラストの構図を修正、色も仮置きして様子を見ます。
引き続いて細部を描き込み、それに合わせて色も調整します。
イラストをパッと見た時に、モモナリとガブリアスが目立つように、背景(終わり際の砂嵐)の色、ガブリアスの色を中心に配色を考え、それぞれを引き立てるようにモモナリの服装の配色も調整していきます。
「いつも着ていそうなジャケット」というキーワードで進めていたため、グレーの配色で進めていたが、それだと典型的ななろう主人公感が出てしまいそうだったので、「メイン配色のガブリアスの紺色&画面全体を支配している砂嵐の色」と調和の取れる「オリーブグリーン」にジャケットの色を変更しました。
モモナリを印象通り&平凡な人物に描けているか、イラスト全体として映える配色や構図になっているかなどをチェックします。
②線画、色塗り、仕上げ
線画を作成しつつ細部を詰めていきました。ボタン付きの胸ポケットが欲しかったことと、ジャケットの色をオリーブグリーンに決定したので、この時点でミリタリー風のジャケットにすることにしました。視線誘導として(モモナリを見た後は、ガブリアスに視線が行くようにしたかった)ジャケットの前を開いて、風の流れを分かり易くしたかったのですが、モモナリの性格的にジャケットを開けっ放しでバトルに挑むことはあんまり無さそうだったので前を閉めました。また目線に慈愛を気持ち多めに足しました。
色を塗ってゴチャゴチャになってしまう前に、白黒で全体の構図を再チェックします。パッとイラストを見た時に、目について欲しい箇所の明度を高く(モモナリの顔や、ガブの目、鼻先など)すること。1枚のイラストだけで、鑑賞者の視線が何度もぐるぐる回る(飽きないイラストになる)ように砂嵐の位置を上手く調整する。
白黒版が完成。
色を塗っている最中にごちゃごちゃ迷子になってしまったらこれを確認して軌道修正します。
線画を修正しつつ色を配置して雰囲気の確認&全体の色味を調整をします。
全体的に加筆しつつ、モモナリの左上半身と、ガブリアスの頭部が前面にくるように、空気感を調整
砂嵐感を意識しつつ更に細部を加筆、モモナリ&ガブリアスの顔以外の部分はボカしつつ、砂嵐と馴染ませることで、モモナリとガブリアスが更に目を惹くようにします。
折角描いたガブリアスが更に隠れてしまいましたが、特性の砂隠れ感と、イラストとしての前後感がより出たと思います。
集中して描いていたため、一度脳をリセットして、ニュートラルな視点でイラストを再確認するために、数日置きます。
塗り&仕上げの段階で、モモナリやガブリアスの頭部が大きい印象になってしまったため、バランスを調整して完成です。
あとがき
ここまで記事を読んで頂きありがとうございます。
今回FAを作成させて頂きましたが、作者のrairaibou(風)氏や、読者の皆様が想い描くモモナリとは当然違ったものかと思います。私自身も、また次回モモナリのFAを描く際は、更に解釈が進んで見た目に変化があるかもしれないです。
次回は若いころの尖ったモモナリを描きたく思っています。そう遠くないうちにまたFAを描けると思うので、次回もよろしくお願いいたします。