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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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ファンアート製作過程【モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。】

本作の魅力

 「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」をまだ読んでいないにも関わらず、本記事に辿り着いた方がいらっしゃるかもしれません。
 そんな方の為に本作の魅力を語らせてください。
 本作はポケットモンスター世界に強いリスペクトを持ち、真摯に向き合って執筆されており、実際にポケモンがいて、ポケモンリーグという機構があったら、人々の生活はこういう側面を持つんだろう。という強い納得感があります。
 主人公の立ち位置は、カントー・ジョウト地方のリーグトレーナー兼エッセイストです。ゲーム的な強さで言うと「ポケモン剣盾本編のクリア後に挑戦できるトーナメント」に時々出場しているモブトレーナーのようなイメージで大体合っていると思います。
 剣盾が発売されるより4年程前(2015年)から本作は発表されているのですが、ポケモンリーグを興行として考えた本作の設定は、かなり剣盾に近いものとなっており、本作の設定が練り込まれていることが分かります。
 赤緑から始まり現代に至るまでの対戦環境で流行ったパーティーや戦術に対してのエピソードなどもあり、リーグトレーナーである主人公が「あめふらしをした後にだいばくはつして退場するマルマイン」を使用することを当然とする戦術の流行に激怒するなど、この世界を生きるリーグトレーナーの視点で描かれる本作は必見です。
 絵を描くついでにこんな記事を描いちゃうくらいには本当に大好きな作品です。

※注意※

 本記事には、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」についてのネタバレ、及び本文の引用が多分に含まれています。もし、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」をまだ読んでいないにも関わらず、本記事に辿り着いた方は、ここから先を読む前に、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」を読んでください。
 私が最も好きなポケモン二次創作小説です。ぜひ、初見での感動を皆様にも味わっていただきたいです。

作者:rairaibou(風)



本記事の作成の意図

 大好きなこの作品を読み進める中で、朧気ながら主人公モモナリの姿が脳裏に浮かび、それを形にしたいと思いました。その際に作成したメモの量が思ったより多くなったので、次回のファンアート作成時にも読み返せるように記事にしました(ついでに製作過程も付けて)。
 私は文学作品に明るい訳ではないですが、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」の作者rairaibou(風)氏は登場人物の外見の描写をほとんど行わず、言語によってのみ表現できることに情熱を注いでいるように思います(私ごときが内心を推し量るような真似をして大変おこがましいですが…)。そんな信念のある作品のイラストを勝手に描いちゃう訳なので、私の抱いている誠意が欠片でも多く伝われば幸いです。

イラスト制作準備

①きっかけ

 以前に1枚だけモモナリのファンアートを描いたことがあります。

2020年12月16日作成のファンアート

このときの私の画力では私の脳内にいたモモナリを描くことはできなかったため、モモナリのパーティーと、モモナリの右腕だけを描写しています。
※右腕の傷はガブリアスがそれを乗り越えた事に意味があると思い敢えて描写していました。
 このイラストから3年ちょっと経ってそろそろ画力もマシになってきたかという所で、rairaibou(風)氏のこんなツイートを目にしました。

こういうのが大好きな私の脳みそにビビっと電流が走り、まずはザックリと頭の中のモモナリのイメージを出力するようにラフを作成しました。
(見せられないレベルの落書きラフをいくつか作成しましたが、最終的に採用した構図はこちらです。)

2024年2月19日作成のラフ

②作中での描写まとめ(ネタバレ・引用を過分に含みます)

 思うままにラフを作成した後、「モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。」を全編読み返し、作成したラフとのイメージに齟齬がないか確認しました。
 そのついでに中年期のモモナリの印象を形成しているであろう描写をメモしていました。そのメモの一部を以下にまとめます。

■描きたいモモナリの時期

この年表でいう所のモモナリ30歳以降をターゲットに絞ってイラストを描きます。Aに昇格してから暫く経っているようなイメージです。
その前提で、下記に描写の引用をしていきます。

■モモナリの外見に関する描写

さて、自分で言うのも何だが僕はおしゃれとは結構遠い位置にいる。あのシバさんに「君はいつも似たような服を着ているな」と言われたのはカントー広しといえど僕くらいのもんだろう。

3-カロスに鬼を見に行った話

未来のコンテストマスターを目指している若いコーディネーター達は、モモナリの存在を気に留めなかった。
 勿論、彼の存在が確認できていないわけではない。ミナモシティのコンテスト会場に現れるにしては、いかんせん服装が地味で、とても外見に気を使っているようには見えない、位のことは思っていただろう。

セキエイに続く日常 143-おめかし

「それに」と、彼は手早く着れるからと言う理由だけで長年愛用しているブランドに袖を通しながら続ける。

セキエイに続く日常 200-彼は自分こそが中心なのだとガラルで叫ぶ ⑧

ダサすぎず、カッコよすぎず、奇抜すぎず、平凡な服装で描く必要がある。


 最近、僕は外では半袖を着ないようにしている。今年の夏は地獄だった。
 理由は右腕の傷跡だ、僕がフカマルに噛まれた時結構縫ったのだが、その後が割とくっきり残ってしまっているのである。あまり見せても気持ちのいいものではないし、逆にやたらに興味を持たれても困る。仕方なしにやっているのであるが、ファッションセンスが上がったとよくからかわれる。

38-好きなポケモン

僕はその右腕でガブリアスの頭をなでてやると、ベッドを下りてその夜は彼女と共に眠りについた。その日以来、ガブリアスが僕の傷を見て落ち込むことはなかった。

38-好きなポケモン

「あっついなあ」
 オープニングの撮影終了後、手渡されたペットボトルの蓋を捻りながらモモナリがつぶやいた。右腕の傷を映さないように長袖を着ているから余計にだ。

セキエイに続く日常 153-第四回ガブリアスナンバーワン決定戦 ①

傷跡を見せない為に長袖を着用しているが、ガブリアスの為に是が非でも隠すという感じではなく、主に大衆向けの様に思う。


例えば服装がバーにふさわしくないから今日は引き返そう、とかである。ところがこういう日に限って落ち着いたバーに文句なしの服を着ていたりするんだ。

48-モモナリですから、ノーてんきにいきましょう。

イッシュリーグトレーナー、ギーマは、何の疑いもなくアロハシャツを着こなすモモナリを鼻で笑った。

セキエイに続く日常 182-外来種

その先にあったのは、確かに、否、勿論彼にとってその男は初対面であるはずだから確信はない。だが、たとえ安っぽいプラスチックフレームのメガネを掛けていたとしても、少なくとも、リーグトレーナーを志していたのならば、一度は目にしているであろう顔があった。

セキエイに続く日常 191-バトルコート ②

「最近は、体のケアにも気を使っているんです」
 やたらに安っぽい眼鏡を指さしながら、彼は言った。
「特に目を大事にしろと言われましてね。こうやって眼鏡を買いました。なんでもブルーライトをカットしてくれるらしくてね」

月刊誌『文藝ラプラス』 一日密着『ベテラントレーナー・モモナリ編』

別にセンスが悪いわけではない。
 タキシード、とまでは行かないが、特別ラフすぎるわけでもない。シンプルなジャケットはよそ行きの普段着と言ったところだろう。
 ところが、そんな普段着な男がゴテゴテメタルのジュラルミンケースなんて持っているのだからチグハグだ、アンバランスだ。
 とはいえ、元々チリはそのようなジュラルミンに合う服のコマンドがいくつもあるわけではない。そんなものが似合うのは上から下までブラックで統一したコーディネートか、ボロボロでススまみれの戦闘服だ。

セキエイに続く日常 232-ジュラルミンケース ①

こういう服やアクセサリーも持っているということで、イラスト化の際に解釈、表現の幅が広がる要素


そうメモに走らせたモモナリは、それをコートの胸ポケットにしまい「キシくん」と彼に声をかける。

セキエイに続く日常 107-キッサキは決意の地

仕事柄メモを常備していそうなので、胸ポケットなり、収納箇所がある服にしたい。


おろしたてだと言っていたジャケットは泥まみれになり、所々引き裂かれている。シャツのボタンはほとんど取れており、その役目をほとんどなしていない。傷だらけの顔には血が滲んでいる箇所があり、頭から流れた血をふき取ったような跡もあった。

セキエイに続く日常 182-外来種

どんな服装でもバトルするのだろうが、作中の描写を通して、戦いづらそうな服装はそもそもモモナリ自信が選ばないように思う。


しばらく沈黙をもった後に、モモナリの右手が、無意識のうちに腰元のボールに伸びる。

セキエイに続く日常 214-責任

右手で届く位置にボールがあること、おそらくモモナリが右利きであることが分かる描写。
「セキエイに続く日常 88-家庭教師」にて、相手が次に繰り出すポケモンの予想の仕方を話す場面があるが、この話と組み合わせると、モモナリのボールの配置は右腰(右手の届く範囲)に6個全部を配置しているんじゃないかと想像しました。
※右腰に3,左腰に3のような配置だと、付き合いの長いゴルダック、ジバコイル、アーボック(手持ちに加えていれば)や、エースのガブリアスを右腰に付けて、それ以外を左腰に配置するといった、ある程度対戦相手に次に繰り出すポケモンを推測されやすい配置になってしまいそう。



■大衆から見たモモナリの印象の描写

ところが、今年の僕のコピーは『ハナダのノーてんきエッセイ野郎』である。僕をよく表しているという点では良く出来ていると思うけども、こーゆーのどうかと思う。
 あと僕のプロモーションビデオちょっとギャグっぽかったぞ、扱いひどいぞ。僕が優勝したらどうするつもりだったの。

25-夏の終わりに振り返る

僕とクシノと言えば良く言えば通好み、悪く言えば華が無いと言った部類のトレーナーだったと思うのだが、まさかガブリアスのおじちゃん、きのみのおじちゃんのコンビとして教育番組に出演することになるとは思わなかった。

あとがき+○△□社・好評既刊

モモナリの素直で毒のない純なエッセイは、モモナリを「馬鹿を演じて好き勝手モノを言ういけ好かないやつ」と思っていたリーグトレーナー達が「バトルがしたいだけの馬鹿」だと気づくに十分だった。特に若手のトレーナーなどはモモナリに気楽に接するようになっていた。

セキエイに続く日常 100-節目

そして、そのような完勝をしておきながら、特に何かをアピールするわけでもなく、マイペースにポケモンを撫で続けるモモナリに、イッシュのファン達も少しずつ気づき始めていた。
この男は、少しおかしい、と。

セキエイに続く日常 126-ドル箱スター誕生 ②

『第四回ガブリアスナンバーワン決定戦優勝者』

セキエイに続く日常 153-第四回ガブリアスナンバーワン決定戦 ②

だが、ホップが追うことの出来る言葉でどれだけその名を検索しようと、出てくるのは彼の経歴と手持ちのポケモンくらいだ。彼の人となりや『戦った後のことは戦った後に考えればいい』という勝負哲学を本当に持っているのかどうかということはわからない。

セキエイに続く日常 208-彼等の時間 ③

不躾に現れすぎたその男は、ここがガラルメジャージムリーダーのまさに本拠地であることを知ってか知らずか、自らがここの長であるように振る舞っている。それでありながら、その男は周りを威圧するような強烈な個性を持っているわけではない。その気になりさえすれば、今すぐにでも『なんでもない男』としてガラルの喧騒に紛れることができるだろう。その傲慢さに反比例するように、その風貌が凡庸すぎるのだ。
 そして、ボーケはそれを『得も言われぬ事』と判断していた。その男の行動と、その男の風体との調和が取れていない。ということは、これこそがその男の素であるのだ。

セキエイに続く日常 208-彼等の時間 ④

その様子が、まさか翌日にサントアンヌ杯決勝を、不可能と思われていた殿堂入りをかけた戦いを控えている男には見えない。
 だが、あまりにも無防備なモモナリに声をかけるような若者や酔っぱらいはいなかった。
 モモナリを知るものはその実力と評判から、そして、モモナリを知らぬものは、ニコニコしながらカクテルを待つその普通の中年男性に、見た目以上の魅力を感じなかったからだ。バトルを知らぬ人間からすれば、モモナリはあまりにも普通の人間であった。

セキエイに続く日常 193-憧れの人 ④

すれ違うハナダの住民たちは、モモナリに対してそれなりに好意的な反応を返してくる。すでに傍若無人であった彼のことは記憶の遠くにあるかもしくは存在せず、今では地元を代表する強豪トレーナーである。

超外伝 もしもモモナリのポケモンが擬人化してしまったら ②

テヅカは目を丸くした。彼はこれまでモモナリのことを謙遜がちな男だと思っていたのだ。

セキエイに続く日常 120~-生傷

■知人から見たモモナリの印象の描写

自らの対面に立っているモモナリと呼ばれた少年の、そのあまりにも自然体な姿に、カルネは少しばかり動揺していた。
 自らを奮い立たせているようにも見えない、かと言って必要以上に落ち着き払って居るようにも見えない、明らかに調子に乗っているようにも見えなければ、怖気づいているようにも見えない。
 周りを見渡せば、社交界にも顔が利くであろう数多くの観客が自らに注目しているだろう、もしかすれば、彼のような少年ですらその存在を知っているほどの有名人も居る。そしてこの地は彼の国とは何もかもが違い、様々なものに目移りしてしまいそうなのに、彼はそんな様子は微塵にも見せなかった。

セキエイに続く日常 4-ミアレの休日

とは言え、別にそれが苦痛なわけではなかった、モモナリは群衆の中の一人として考えれば迷惑極まりない男だったが、個人として考えればこれ以上に面白い男もそう居ない、自分がこうして責任を取る立場でなければ、むしろファンだったのかもしれない。

セキエイに続く日常 126-ドル箱スター誕生 ①

戦うことを日常と捕らえておきながら、それを社会性にまで持ち込むことはない、無神経、ノーてんきではあるが、よく言えば豪胆で器が大きいといえるのではないだろうか。

セキエイに続く日常 135-彼が神を信じた日①

 目を細めるモモナリを、ミクリとオーノは観察した。あの頃に比べれば、随分と柔らかくなっているように思えるが、それでもその瞳の奥底には、あの日の強烈な傲慢さが、見え隠れしているように思えた。そもそも、人はその本質をそう簡単には変えることができないのだ。むしろあれだけの傲慢さ、戦いへの渇望を、この笑みの中に押し込めることができていることのほうが、不思議に思える。

セキエイに続く日常 143-おめかし

厄介なトレーナーだ。
 現れたドリュウズの動きに警戒しながら、ダンデはモモナリの瞳を眺めようとした。
 緊張感がないわけではないが、それでもすました顔だ。見ようによっては笑顔のようにも見えるかもしれない。
 まるで、朝方ふらりと入ったレストランでモーニングメニューを眺めているような、そんな感じ。自然体、この戦いを特別なものだとはきっと思っていない。
 だが、だからといって勝利を捨てているわけではない。確かに緊張感にあふれているわけではないが、試合を捨てて諦めているわけではない。

セキエイに続く日常 200-彼は自分こそが中心なのだとガラルで叫ぶ ⑧

だが、モモナリという男がこうも社会に受け入れられることを、一体誰が予想しただろうか。あの男に近ければ近いほど信じられないはずだ。社会というものを腕力でねじ伏せようとする奴の姿を、私達はあまりにも見すぎている。

モモナリマナブのおてんき質問室 あとがき 元リーグトレーナー・クロサワ

モモナリは私の逆だ、あいつは才能のないトレーナーを慈愛の目で眺めている、奴が才能のない人間に引退を勧めるのは優しいからだ。「こんなところにいては危険だよ。さあ、ドアを開けてあげるからお帰りな」と、本気で思っている。そして「弱いのにあんなに頑張っているなんてかわいそうだ」と憐れむ、私達なんかよりもよっぽどたちが悪い。

モモナリマナブのおてんき質問室 あとがき 元リーグトレーナー・クロサワ

セカンドキャリア、セカンドキャリアとは何だ。
 いやもちろんその概念は知っている。だが、目の前の破綻した青年の口から、そのような言葉が出てきたことが信じられない。
 そもそも、彼がジムリーダー代理の資格を取ったところから少しおかしいのだ。
 溺れるように酒を飲み、サーフィンを始めたかと思えばボードを無くし、バイクを買ったかと思えばその日にスクラップにし、ギターを習い始めたかと思えばそれも無くす。そんな男が、何故急に。

セキエイに続く日常 70-おてんば代理 ①

タナカがこの世の終わりのような表情をして助けを求めてきた掃除婦に連れられて玄関に来てみれば、そこにいたのは、このへんでは有名な問題児、モモナリだった。

セキエイに続く日常 70-おてんば代理 ②

 リーグトレーナーとしての彼しか知らない読者の方には信じられないだろうが、彼はトレーナーであることを考えなければ、なんてことのない一般人にしか見えない。
 勿論、未だにフィールドワークを欠かさないことの証明となっている少し締まった肉体は持っているだろうが、それも長袖を着てしまえばほぼわからない。
 私だって、彼が優れたリーグトレーナーであるという強烈すぎる前情報を持っているからこそ、彼をそういう目で見ることができるが、それを持っていなければ、ただの一般人としてなんの興味も示さないだろう。
 地元であるハナダシティを闊歩するときですら、顔なじみ以外は彼に気づかない。ブルーライトをカットするらしい安っぽい眼鏡をかけていれば、それはさらに顕著となる。
 悪い言い方をすれば、勝負師としての凄みを感じることができないのだ。ポケモンバトルという、最も原始的な闘争に身を置いているのにも関わらず、彼は自らを大げさに鼓舞する熱量を表現することもなく、突き抜けるような悲壮感もない。ただ淡々と、なんでもないことのようにその日を生きている、あのエッセイと同じように。
 彼は変わり者のリーグトレーナーなのだろう。

月刊誌『文藝ラプラス』 一日密着『ベテラントレーナー・モモナリ編』

「悪い人じゃ、あ、いや、悪い人ではあるんだけど。なんというか、根本的な部分が悪人ではないところがあって、いや、悪い人なんだけど」

セキエイに続く日常 171-てらす池 ①

■ガブリアスについての描写

モモナリを知っているならば、当然彼女の存在を知っているだろう。
 曰く『孤高の女王』
 曰く『ノイズに潜む悪魔』
 曰く『天才のラストピース』
 曰く『お高く止まったあの子は甘い木の実が好き』
 曰く『第四回ガブリアスナンバーワン決定戦優勝』
 砂嵐の中で何体もの相手を葬ってきたそのポケモンは、モモナリの手持ちの中でも特に人気が高い。
 その人気たるや、きのみチップスのおまけとしてついてくる彼女のリーグトレーナーカードの価値が、なんとあの『なんでもなおし』と同等の価値である。
 彼女のカードを手に入れるにはモモナリのカードが十枚必要であるし、彼女のカードを十枚集めれば、なんとあのワタルのカイリューのカードと交換できるのだ。

セキエイに続く日常 193-憧れの人 ②

モモ嬢はつい最近モモナリの群れに加入したドラゴンであった。吾輩と違って光沢のあるウロコと、大きく肉質のある体格、瞳は吸い込まれそうになるほど美しく、長すぎず、短すぎない尾、砂嵐の中から不意に現れ攻撃してくる時の凛とした表情と、砂嵐に消える際の得意げな表情、それでいて普段の仕草は可愛らしく、何よりその声はそれ以外のすべての音が聞こえなくなってもいいとすら思える。とにかく、モモ嬢はその造形全てがガブリアスとして完璧なのである。それこそ異種族であるギャラドスやシャンデラすらそれを理解することができ「彼女はすごい」とか「あのチンピラ軍団にはあまりにも不釣り合い」とか「誘拐したのでは?」と話題になるほどだ。
 そして、これは吾輩が特別彼女に心酔しているわけではないことをはっきりとさせておきたい。ここ最近、他の群れのドラゴンと戯れる際には必ずと言っていいほどその話題が出てくるほどなのだ。メスのドラゴンですら、彼女に興味津々だ。

セキエイに続く日常 番外編-吾輩はガブである。

③イラストで表現したいこと

 誇張無しにモモナリを2,3周読んでいた事もあってか、ラフを描いてからの追加の1周でもモモナリの見た目自体にイメージの齟齬はあまりなかったです。
描きたいイメージがより鮮明になったので、少し整理しました。
 「②作中での描写まとめ(ネタバレ・引用を過分に含みます)」で引用した要素に矛盾しておらず、そして、モモナリを知らない人間が受ける印象と、内面を知る人が受ける印象のその両方をイラストで表現するのが今回の一番の目標になります。

■イラストでモモナリを知った人に与えたい印象
 作中でのライトなリーグ視聴者層や、モモナリの立場を知らない一般人が抱くであろう印象と同じものを表現したい、
一言で表すなら「なんとなく平凡そうなイメージ」。

■本作の読者に与えたい印象
 作中でモモナリを知る人(ある程度見る目がある人)が彼に感じるであろう、彼の異様さ(バトルの最中もしくはバトルの直前、直後でありながら、ほとんどの場合、常に自然体であること)を表現したい。

■イラスト的な妥協
 イラスト作成時のコンセプトとして、バトル場に身を置きながら自然体である様子を描きたいと同時に、イラストとしてモモナリを主役にするにあたり、どうしてもガブリアスより前にモモナリを立たせたかった。
 rairaibou(風)氏のポストが着想なので、イラストに台詞を付けるなら「もう終わりかな」としたいのですが、それはモモナリの中でバトルが確実に決着したと確信を持っていない事を示しているように思います。
ガブリアスより前にモモナリが居たとしても、モモナリがそうしても良いと判断した程度のトレーナーの実力であれば、不意を打とうとしてもガブリアスが間に合うだろうし、そうでなくてもボールの中の相棒が黙って見過ごさないとは思いますが、違和感が少し残ります。

また、野試合であるならそれでもいいんですが、公式試合での一幕を切り取ったものだとするなら、本作での下記描写と矛盾が生じてしまいます。

審判員が戦闘不能を告げるよりも先に、カンナがトレーナーがいるべきパーソナルエリアを飛び出し、フリーザーのもとに駆け寄っていた。チャンピオン決定戦において、トレーナーがパーソナルエリアから出ることは重大な反則だが、審判員はカンナがパーソナルエリアを飛び出すより前に勝負は決していたとして、反則を適用せず、カンナの全てのポケモンの戦闘不能により勝者がワタルであることを宣言した。

セキエイに続く日常 7-氷の女

その後は語るまでもないだろうが、オグラは自らラインを割って彼の戦闘不能を審判に宣言した。

月刊誌スタジアム『我が追想のポケモン達』②

少し気になる要素は残りますが、SNSにアップする前提でモモナリの宣伝の側面も持ったイラストであることを考えると、1枚のイラストとして映えるものにしたいため、今回の構図に落ち着きました。
(単純に私の力不足でもあると思います。)

■イラスト化するにあたって押さえておきたい要素

  • 髪型:作中での描写からセットなどはしておらず、またモモナリの視界を邪魔しない長さであること。リアル思考に寄りすぎかもしれないが、平凡さを出すために黒髪

  • 顔の造形と体格:若すぎない(30代前半でも通用するか、アスリートなので若々しく感じる分には違和感にならないと思う)、平凡(かっこよすぎない)、たくましい感じ

  • 服装:平凡、いつも着てそうなジャケットかどうか、腰のモンスターボール(右手側に必ず配置)

  • 目線、表情:日常の延長、まだバトルが続くんじゃないかという少しの期待、バトルが弱い者を見る柔和な目(「もう終わりかな」という台詞に会う感じ&ガブリアスより前に立っている状況)

  • ガブリアスのサイズ感:図鑑だと1.9mなんですが、特にポケモンレジェンズアルセウス以降、サイズ感に自由度が出たと思います。具体的なサイズは明記しませんが、強大なイメージに素直に従って大きめに描きます!!!

イラスト制作過程

①ラフのブラッシュアップ、構図、色の仮決め

複数回に分けてラフをブラッシュアップしていきます。

ラフ2号

三分割構図を目安にキャラクターの配置を微調整、視線誘導も意識しつつ、イラストの構図を修正、色も仮置きして様子を見ます。

ラフ3号

引き続いて細部を描き込み、それに合わせて色も調整します。
イラストをパッと見た時に、モモナリとガブリアスが目立つように、背景(終わり際の砂嵐)の色、ガブリアスの色を中心に配色を考え、それぞれを引き立てるようにモモナリの服装の配色も調整していきます。

配色の話

「いつも着ていそうなジャケット」というキーワードで進めていたため、グレーの配色で進めていたが、それだと典型的ななろう主人公感が出てしまいそうだったので、「メイン配色のガブリアスの紺色&画面全体を支配している砂嵐の色」と調和の取れる「オリーブグリーン」にジャケットの色を変更しました。
モモナリを印象通り&平凡な人物に描けているか、イラスト全体として映える配色や構図になっているかなどをチェックします。

②線画、色塗り、仕上げ

線画

線画を作成しつつ細部を詰めていきました。ボタン付きの胸ポケットが欲しかったことと、ジャケットの色をオリーブグリーンに決定したので、この時点でミリタリー風のジャケットにすることにしました。視線誘導として(モモナリを見た後は、ガブリアスに視線が行くようにしたかった)ジャケットの前を開いて、風の流れを分かり易くしたかったのですが、モモナリの性格的にジャケットを開けっ放しでバトルに挑むことはあんまり無さそうだったので前を閉めました。また目線に慈愛を気持ち多めに足しました。

白黒で塗って構図チェック

色を塗ってゴチャゴチャになってしまう前に、白黒で全体の構図を再チェックします。パッとイラストを見た時に、目について欲しい箇所の明度を高く(モモナリの顔や、ガブの目、鼻先など)すること。1枚のイラストだけで、鑑賞者の視線が何度もぐるぐる回る(飽きないイラストになる)ように砂嵐の位置を上手く調整する。

白黒版(暫定完成)

白黒版が完成。
色を塗っている最中にごちゃごちゃ迷子になってしまったらこれを確認して軌道修正します。

ザックリ色置き

線画を修正しつつ色を配置して雰囲気の確認&全体の色味を調整をします。

仕上げその1

全体的に加筆しつつ、モモナリの左上半身と、ガブリアスの頭部が前面にくるように、空気感を調整

仕上げその2

砂嵐感を意識しつつ更に細部を加筆、モモナリ&ガブリアスの顔以外の部分はボカしつつ、砂嵐と馴染ませることで、モモナリとガブリアスが更に目を惹くようにします。
折角描いたガブリアスが更に隠れてしまいましたが、特性の砂隠れ感と、イラストとしての前後感がより出たと思います。
集中して描いていたため、一度脳をリセットして、ニュートラルな視点でイラストを再確認するために、数日置きます。

完成

塗り&仕上げの段階で、モモナリやガブリアスの頭部が大きい印象になってしまったため、バランスを調整して完成です。

あとがき

 ここまで記事を読んで頂きありがとうございます。
 今回FAを作成させて頂きましたが、作者のrairaibou(風)氏や、読者の皆様が想い描くモモナリとは当然違ったものかと思います。私自身も、また次回モモナリのFAを描く際は、更に解釈が進んで見た目に変化があるかもしれないです。
 次回は若いころの尖ったモモナリを描きたく思っています。そう遠くないうちにまたFAを描けると思うので、次回もよろしくお願いいたします。


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