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日記:20230702〜甲斐庄楠音展→丸尾末広博覧会→RAY・ゆるめるモ!〜

 東京ステーションギャラリーで甲斐庄楠音展を見る。

 岩井志摩子の「ぼっけえ、きょうてえ」の表紙に使われた作品で知られる画家。歌舞伎の女形に魅せられ、異性装したり女形として舞台に立ったこともあり、晩年は時代劇映画の風俗考証として衣装デザインなどをしていたそう。本展では絵画作品だけでなく、楠音の舞台写真や、映画で使用された衣装なども展示され、幅広い表現活動や生き方を余さず押さえた内容。
 とても興味深かったけれど、その分、絵画作品がやや少なく感じてしまったかな。もともと作品数がそれほど多くないのかもしれないけど。

 展示作品の中では「幻覚(踊る女)」と題された作品が圧倒的に素晴らしい。微笑を浮かべて舞う女がやけにあどけなく見えるのが、より不気味で恐ろしい。全体に朦朧とした雰囲気が漂っていて、炎に包まれているようにも、高熱に浮かされて悪夢を見ているようにも感じられる。ひと目見ただけで忘れがたい凄みがある。

 「毛抜」と題された作品も、華奢な裸体を晒した異性装の少年?の不安そうで、いたいけな表情と、毛抜きで髭をあたっている露悪的で生々しい構図が、見る者の心を落ち着かせない。自らも異性装墨趣味があり、女性美への憧れを持っていたと思われる楠音自身の内面が表れている絵なのかもしれない。

 未完に終わった「畜生塚」は、完成していなくてもなお迫力が伝わってくる大作だった。この絵で描かれる悶え苦しむ女たちと同じポーズをとった楠音のポートレートも展示されていた。これは単純に絵のために自らがモデルになったのだろうか、それとも描かれる女たちと一体化したいという思いから撮られた写真なのだろうか。

 楠音にとっては、絵画は唯一の表現手段ではなく、己の内にあるビジョンを具現化するための手段の一つに過ぎなかったのかもしれない。絵画作品はもちろん、本人の生い立ちについても興味が惹かれる。

 記念にポストカードなどを一通り購入。

 
 続いて先日は休廊日だったので出直しで、同じ東京駅付近のスパンアートギャラリーに行き、「丸尾末広博覧会」を見る。日曜ということもあって、なかなかの賑わい。いかにもなゴスロリ系の女の子から、よくしゃべる中年女性の一群まで、なかなか幅広い客層。「嗤う吸血鬼」読み返したくなったな。
 額装付きで売られていた少女画の下絵は、何かの作品集に収録されているんだろうか。見たことのない作品だった気がする。

みどりちゃん、だいぶ雰囲気変わったよね

 

 大塚に移動。少し中途半端な時間が余っていて小腹も減っていたので、フレッシュネスかバーガーキングあたりで時間潰そうかと思ったけど、駅を降りたら大戸屋があったので吸い込まれるように入店。

 大戸屋で早めの夕食をとり、大塚Hearts+に移動。RAYとゆるめるモ!のツーマンを見る。
 整理番号がよかったので最前列で見られた。自分の真後ろの人に、斜め後ろの人が「よかったら場所変わりましょうか?こっちのほうが見やすいと思うんで」とか話しかけていて申し訳ない気持ちになった。

 先攻のゆるめるモ!、何度か見たことあるけど、今まで見た中でいちばんよかった。長い歴史のあるグループが築いてきた文化を、たとえオリジナルのメンバーがみんな卒業したとしても、意志を持って受け継ぐメンバーがいるのは讃えるべきこと。
 自己肯定するためのメッセージをひたすら直接的に投げかけてくる歌詞は、決して自分の好みではないけれど、こういう歌詞を必要としている人がいて、その人たちの救いや希望になっているからこそ、10年も続いてきたのだろう。そのことがなんかとても眩しくて泣ける。最後の曲のサビで隣のメンバーの頭を撫でる振り付け、すごいかわいい。
 メンバー全員キャラが立ってて魅力的だけど、へそさんのパフォーマンスが特に好き。かわいい。
 あと、まつりさんの整ったお顔立ちと大粒の汗が本当に綺麗だった。

 後攻のRAY、ひたすら楽しかった!甲斐庄楠音、丸尾末広と耽美的な作品に触れた後だったけど、RAYの美しさは一歩も引けをとっていなかった。特に愛海さん……絵画……。
 フロンティアで愛海さんと紬実詩さんが顔を合わせて笑い合っていた場面が、#あみみこちはマブダチ でめちゃくちゃ良かった。愛海さんがステージ上であんなに自然な弾けた笑顔を見せるのも珍しい気がする。みこちがムードメーカーとして、今のRAYの明るさ、楽しさを引っ張っていってるんだろうな。ありがとうありがとう。

 それから新曲の「Show Me the Season」がとんでもなく素晴らしかった。なんだあれは。最高じゃないか。やばい思想を持った団体の演説集会を見ているのかと思った。大好き。
 イントロから完全にどうかしていてワクワクする。こんなに初聴きからテンションの上がるイントロはダンス・ファウンダー以来かも。しかも本当にどうかしているのはアウトロだった。 

 どちらのグループも相手へのリスペクトを込めた気合いの感じられるセトリとパフォーマンスで、ひさしぶりに無条件で楽しかった。良いものを見させていただいた。

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