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日記:20231220〜安部公房『密会』〜

 むかし読んでよく分かんなかった本を読み直そうシリーズ。
 安部公房『密会』を再読。


 最後に読んだのはまだ実家にいた頃だった気がする。もう30年くらい経つのだろうか。こわい。
 当時読んだ安部公房作品の中では面白かった印象が残っているけど、どんな内容だったかまるで覚えていないので読み直してみた。

 やっぱり分からない。

 以前読んだ時よりも再読した時の方がよけい分からなくなったのは初めて。盗聴や窃視がはびこる監視社会化した「病院」を舞台にしながら、インターネットも携帯電話もICレコーダーもない時代背景との隔たりが、あの頃より大きくなったせいもあるのかもしれない。

 次第に人としての形を失っていく溶骨症の少女を抱え、病院の地下の闇に迷い込んだ主人公が、助けを求め「自分が病気であることを認め、申し分のない患者になることを、あらん限りの声で訴えつづけ」る場面がこの作品のテーマを象徴しているのだろう。
 誰もが性に捕われた患者である社会で活きていくための場所を得るためには、自らが病気であることを認め、社会に要求される通りの患者にならなければいけない。
 現代社会と重ね合わせてみようとしたけど、やっぱり難しい。
 


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