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博士号は必要か

 少し前に学生から「臨床の医学物理士で博士の学位までとる意味ありますかね~?」と聞かれた。まぁ確かに大学教員や研究職を目指すつもりがなければ、追加で3~4年という短くない修行期間と高額な学費を投資して博士を取得する必要性は考えるところだろう。病院の医学物理士職で博士号必須のポストなんて聞いたことないですし。

 しかしながら、博士号持ち臨床でずっと働いている筆者おっさんの経験上、臨床の医学物理士といえども学位のご利益はそれなりにあるかと思う。そんな博士号を取得するメリットを挙げていきたい。

1. 箔が付く
 この業界だと医学物理士に限らず放射線技師や看護師でも修士号まで取得している方はざらにいる。学部が6年間ある医者はデフォルトで学士が修士相当である。修士の学位も立派なことは間違いないが、博士の学位こそより専門性を極めている証の1つになる。

2. 給料上がる(かも)
 箔が付くのは何も自己満足だけではない。筆者がこれまで働いてきた施設では、同世代でも博士の有無で給与や役職に差があった。学位取得の苦労に見合ったものかどうかと言われると微々たる差かもしれないが、少なくとも学位を評価してくれる病院はあるということ。

3. 医学物理士スキル向上できる
 一般病院の臨床業務でも、その中ではデータを測定して解析して考察して論文調べて・・・と、そもそも医学物理士には研究者のようなスキルが要求される。このあたり博士課程で深く研究に取り組んできた医学物理士の方が得意であるように思う。

4. 大学コネクションが作り易い
 学部生や修士の学生と比べて、博士学生ともなると大学教授や他の教員との交流も濃くなるもの。いかんせん狭い業界なので一般病院で働くにしても大学や教授と良好なコネクションを作っておくことは、就職面も含めて将来自分のキャリアアップに有利になり得る。

5. 将来の選択肢が広がる
 もし病院勤務が合わなくなったときなど、博士の学位があれば研究職や教員職への転職も候補に入れることができる。転職までいかなくとも、例えば大学の非常勤教員や客員職の話が回ってくるチャンスもあるかもしれない。こういったポストは基本的に博士学位が必要。 

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 そういうわけで、冒頭のような学生には無責任にも進学を勧めるのだが、例外として研究に興味がない学生だけには辞めておけと言う。博士が学術の称号であるように、その課程は研究者ないし研究能力を養成するところで、決して臨床の医学物理士を養成するところではない。残念ながら過去数人、そこを勘違いしていると思われる学生が研究に苦しんでいる姿を見たことがある。大前提として大学院は研究するところというのを忘れてはいけない。

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